土曜のランチの様子。
まずは生ビール
田中屋に来るのは一年ちょっとぶりということになる。


店は改装のため10月1日から閉めており、前の月曜から営業を再開したばかり。前回訪店は昨年の9月中旬。相次いで台風が上陸して全国的に被害が頻発している時期だった。当時の状況は以下のリンクを辿れば分かるのだが、ちょうど千葉県では台風15号の通過によって広範囲でブラックアウト(停電)が発生し、なかなか復旧しないという事態に陥っていた。その後、暫くして停電は復旧したが、追い打ちをかけるように台風19号が襲来し千葉県やその周辺地域では再び甚大な被害に見舞われた。それから一年ちょっと経った。武漢発のあの感染症が、まさかここまで大流行するなんて当時は露程も思っていなかった。
肴三品
久し振りの田中屋で定番の蕎麦前を三品いただくことに。








写真の順に、イカの丸干し、枡豆富、鴨の網焼き。烏賊は一杯丸ごとを天日干しで小さく縮むまで干した本物で、機械の熱風干しとは一線を画する美味しさだ。これで既にビールが枯渇しそう。枡豆富は苦汁を投入してから固まって間もないものでほんのり温かい。これをスプーンで掬って付け合わせの鰹節の厚削り、葱、おろし生姜を纏わせてピンク塩でいただく。

塩でいただく出来立ての豆腐からは大豆の香りがダイレクトに伝わる。むろん得も言われぬ幸福感に包まれる。そして醤油をたちっと滴下、これまた絶品なのである。ここで二人とも生ビールが尽きる。まだ烏賊も残っているし、ということで日本酒を。この店は昔から私の郷里である富山の酒を置いているので迷わずこれをオーダー。銀盤酒造の別製の吟醸酒、剣岳。

烏賊の丸干しは前述の通り加工せずに天日干しで乾燥させる手法で作られたため身の中には凝縮された
わたが入ったまま。ペースト状になった黒いわたは苦味、えぐみもあるが烏賊墨も丸ごと含まれるため滋味深く、なおかつ磯臭くて美味なのだ。銀盤の剣岳は吟醸らしい僅かな甘みがあるものの、基本はきりっとした端麗辛口でこの烏賊に合わないはずがないのだ。

暫くすると厚めに切った合鴨の身をじっくり直火で焼いたこの逸品が到着。私たちが決まって頼むこの定番は従前どおりのクォリティで素晴らしいのひとことだ。脂は癖がないし水鳥特有の軽量なものなので抵抗なく受け入れられる。卓上の香り高い自家製七味をぱらり。そして銀盤の吟醸酒とともにいただくと、まさに昇天寸前となるのは必定、罪作りな美味しさなのだ。
鴨せいろ
鴨焼きを食べた家内は火が付いたらしく、もっと鴨を食べるという。ということで頼んだのはこちら。なお以下の一枚目は全景。






これがまた家内のストライク・ゾーンをぶち抜いたようで、美味しいの連発。詳細は割愛するが、厚手の合鴨肉は出汁で煮出してあり甘味が強く、そして丸太切りの長葱は直火で炙ってあって香りが凄く立つ。そこに新蕎麦の抜き実を挽きぐるみにして打った蕎麦をざっくり浸けていただけば想像通りの味。すなわち極めて美味、かつ風味のマリアージュが超絶的なのだ。
天せいろ
私はやはり、以前からよく頼んでいた定番のこちら。









これまた言うことはない安定と信頼の出来栄え。ご飯も頼む腹積もりだったのだが、蕎麦前でかなり腹は満たされていたのでカロリーオーバーを危惧し自粛。天ぷら種はざっくり切った茄子、もちろん大振りの赤海老は外せない。そして熟れた甘い南瓜、獅子唐など。大根おろしと山葵を合わせ、新蕎麦を汁に浸してずずっと啜れば、これはまさに天にも昇る旨さ。
お店データ

田中屋
横浜市西区平沼1-5-21 田中屋ビル
電話:045-322-0863、050-5869-2954(予約)
営業:月~土:11:00~15:00、17:00~21:30
祝祭日:11:00~21:30、17:00~21:00
定休:日曜・第3月曜 ※12月および祝日の第3月曜は営業
最寄:市営BL 高島町3分、各社線 横浜10分、
京急 戸部5分、相鉄 平沼橋6分
今日の一曲

ONDINEレーベルから、ハヴリジ・ハトルグリームソンという現代作家のVcコン2題。ソロVcは名手トルルス・モルク。解釈の難しい現代音楽だが新ウィーン楽派のような12音技法やトーンクラスタではなく、ある程度の調和を辛うじて保っている。ハヴリジ・ハトルグリームソンは元々はアイスランドに生まれチェリストとして音楽キャリアをスタートしたが、その後拠点を英国エジンバラに移しスコティッシュ室内オーケストラのチェリストとして活動。
(MusicArena 2009/7/6)