2006年 11月 30日
SL聴き比べ:Schubert D946 |
SL(Steinway Legends)の聴き比べをポチポチ始めた。初日の今日はこれ:
シューベルト: 3つのピアノ小品(即興曲)D946 から第2番Allegretto
ピアノ: ケンプ、ブレンデル


三つのソナタっぽい曲を相関なくカップリングした佳作である。ピアノを習っている頃に教則本と併用で練習したことがある。その中から真ん中のアレグレットを二人の演奏で聴き比べた。尚、ケンプは三曲全部を収録しているがブレンデルは真ん中の一曲のみであった。
このアレグレットはソナタ形式に類似はしているがちょっと違う。
A-B-A-C-Aの形をしていて、A部が穏やかな本来のアレグレットであり長調で、更にa-a'-aの形式をとる。BとCがアレグロもしくはアレグリッシモ程度の速い速度を持った割と激烈で厳しい短調である。B部は更に長調に転調する中間部を挟むb-b'-b形式、C部はcの鏡像展開部を挟んだc-c'-c形式である。
あるBlogにこの曲の所感を巧く書き記した文章があったので以下に引用しておく。ここで言っている「3部に分かれており」とは、正しくは上に書いたように第一主題(A部)の再現(リフレイン)を含む5部形式、「2部はメロディとは言えない断片的なモチーフ」は上でいうところのB部、「突然、言いようもない悲しみが」とはC部を意味している。
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アレグレットは、3部に分かれており、第1部は親密な、小春日和を感じさせる、暖かく美しい旋律が大きな起伏もなくつつましく淡々と進められいきます。しかし私はいつもシューベルトに感じるのですが、なにか不安がいつもつきまとっているよな、喜び、幸福を感じる旋律ではありますが、どこか一抹の寂しさを感じるような美しい旋律です。2部はメロディとは言えない断片的なモチーフで、不吉、不安の予兆、前兆のような不気味な和音、リズムを伴って何度も何度も繰り返されます。2部は1部に戻る前に長調に転調され、1部に戻っていきます。また元の幸福、喜びを取り戻したかにみえるのですが、突然、言いようもない悲しみが襲ってきます。慟哭といったような激しいものではありませんが、出口の見つからない暗い悲しみです。襲ってきた悲しみは、過去の暗い思い出の回想なのでしょうか、明るい、束の間の幸福の第1部に戻って曲を閉じます。
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ケンプはA部を思いっきり叙情的に弾いている。デュナーミク、即ち強弱方向の感情移入が過多であり、ある意味ホロヴィッツ的だ。ブレンデルはデュナーミクを僅かに効かせているものの終始淡々としたレガートを保っている。
B部は二人とも似たような解釈だがブレンデルは比較的抑え気味に弾ききり、ケンプは左手を割と乱暴に叩いているように聞こえるが、そのぶん右手の丁寧さが際立っている。
C部は二人でかなり解釈が違う。ケンプはかなり遅めのテンポをとっているがブレンデルはB部と同じ様な速度をずっと維持しておりスケールにおける鍵盤さばきの正確さ、軽やかさを見せつけている。本来速く弾くべきところを速度を緩めつつ情感を膨らましているのがケンプであり、つまりこれはアゴーギクが強めというケンプの特色が出た解釈だ。
全体を通すと、耳に入って来やすいという親しみの点ではケンプ、禁欲的で求道的だがニュートラルで何度も聴きたくなるという反復性の点ではブレンデルであろう。どちらも好演だが好みは別れるだろう。個人的には端正で奇を衒ったところのないブレンデルに軍配を上げたい。但し、素朴だが心に染み入る弾き方で定評を得ていたケンプのケンプたる所以も明確に現れているのは興味深いところ。
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シューベルト: 3つのピアノ小品(即興曲)D946 から第2番Allegretto
ピアノ: ケンプ、ブレンデル


三つのソナタっぽい曲を相関なくカップリングした佳作である。ピアノを習っている頃に教則本と併用で練習したことがある。その中から真ん中のアレグレットを二人の演奏で聴き比べた。尚、ケンプは三曲全部を収録しているがブレンデルは真ん中の一曲のみであった。
このアレグレットはソナタ形式に類似はしているがちょっと違う。
A-B-A-C-Aの形をしていて、A部が穏やかな本来のアレグレットであり長調で、更にa-a'-aの形式をとる。BとCがアレグロもしくはアレグリッシモ程度の速い速度を持った割と激烈で厳しい短調である。B部は更に長調に転調する中間部を挟むb-b'-b形式、C部はcの鏡像展開部を挟んだc-c'-c形式である。
あるBlogにこの曲の所感を巧く書き記した文章があったので以下に引用しておく。ここで言っている「3部に分かれており」とは、正しくは上に書いたように第一主題(A部)の再現(リフレイン)を含む5部形式、「2部はメロディとは言えない断片的なモチーフ」は上でいうところのB部、「突然、言いようもない悲しみが」とはC部を意味している。
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アレグレットは、3部に分かれており、第1部は親密な、小春日和を感じさせる、暖かく美しい旋律が大きな起伏もなくつつましく淡々と進められいきます。しかし私はいつもシューベルトに感じるのですが、なにか不安がいつもつきまとっているよな、喜び、幸福を感じる旋律ではありますが、どこか一抹の寂しさを感じるような美しい旋律です。2部はメロディとは言えない断片的なモチーフで、不吉、不安の予兆、前兆のような不気味な和音、リズムを伴って何度も何度も繰り返されます。2部は1部に戻る前に長調に転調され、1部に戻っていきます。また元の幸福、喜びを取り戻したかにみえるのですが、突然、言いようもない悲しみが襲ってきます。慟哭といったような激しいものではありませんが、出口の見つからない暗い悲しみです。襲ってきた悲しみは、過去の暗い思い出の回想なのでしょうか、明るい、束の間の幸福の第1部に戻って曲を閉じます。
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ケンプはA部を思いっきり叙情的に弾いている。デュナーミク、即ち強弱方向の感情移入が過多であり、ある意味ホロヴィッツ的だ。ブレンデルはデュナーミクを僅かに効かせているものの終始淡々としたレガートを保っている。
B部は二人とも似たような解釈だがブレンデルは比較的抑え気味に弾ききり、ケンプは左手を割と乱暴に叩いているように聞こえるが、そのぶん右手の丁寧さが際立っている。
C部は二人でかなり解釈が違う。ケンプはかなり遅めのテンポをとっているがブレンデルはB部と同じ様な速度をずっと維持しておりスケールにおける鍵盤さばきの正確さ、軽やかさを見せつけている。本来速く弾くべきところを速度を緩めつつ情感を膨らましているのがケンプであり、つまりこれはアゴーギクが強めというケンプの特色が出た解釈だ。
全体を通すと、耳に入って来やすいという親しみの点ではケンプ、禁欲的で求道的だがニュートラルで何度も聴きたくなるという反復性の点ではブレンデルであろう。どちらも好演だが好みは別れるだろう。個人的には端正で奇を衒ったところのないブレンデルに軍配を上げたい。但し、素朴だが心に染み入る弾き方で定評を得ていたケンプのケンプたる所以も明確に現れているのは興味深いところ。
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by primex64
| 2006-11-30 10:51
| Compilation
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Comments(2)










