某月某日、午後某時、渋谷警察署から並木橋方面へ暫く歩いた。城南信金渋谷支店の目の前の横断歩道の途中、明治通りのど真ん中に建てられた異様な建造物の中から地下22メートル地点まで潜った。
ここは、東横線の渋谷から代官山駅間の1.4kmを地下化する工事現場。この建家の床は明治通りそのもので、ここにポッカリと縦坑が開いている。入り口でヘルメットと軍手を渡されていざ地下へ・・。
(以下、写真はクリックで拡大)
縦坑の脇には工事用エレベータ。一度に6~7人しか乗れない。
地下22mの穴の底にはプレハブ事務所が建つ。そこで工事概要とシールド工法、矩形断面を掘れるアポロカッター搭載の最新シールドマシンの原理説明があった。プロジェクトの勇ましい標語が壁に。
工事の各種図面。地質調査の結果、色分けされた地盤の絵が興味深い。
構内は非常にうるさいためインカム・レシーバーを装着してトンネルへ向かう。東急側の工事責任者がインカムを通じてリアルタイムで解説してくれる。
ここが渋谷駅構内の大空洞からシールド・トンネルを掘り始めた地点。
セグメントという特殊コンクリート部材。これを円弧状に組み立ててトンネルの壁とする。
シールドマシンをはじめ物資はこの縦坑からクレーンで降ろす。
下の写真の左は、セグメントを切羽まで運ぶバッテリー・カー(軽便鉄道の機関車に相当)。
シールド・トンネルに入り、完成している横坑を代官山方面へ歩く。
この辺りは城南信金と並木橋のちょうど中間ぐらいの明治通り直下。
先ほどのセグメントがぐるりと組上がってトンネル壁になっている。
(写真左)ここに架線設備が付く予定。
ここがシールド部の切羽(先進部分)で、渋谷川の下あたり。
路盤のセグメントが途切れた先にあるのが掘削中のシールドマシンのお尻の部分。アポロカッターの掘削刃は土に刺さっていて勿論見えない。
説明によれば、アポロカッターの1時間当たりの掘削能力は1.1mという。
約1時間掘った後、上の写真の赤いジャッキがセグメント端を押して自身が前進、出来た1.1mの間隙に新たなセグメントを1時間かけて組む。
このビニールシートで養生された部材(名称失念)は、組上がった矩形のセグメント(上り線用と下り線用の一体型で合計10個のセグメント)の真ん中に縦に差し込んで伸張させて固定するジャッキのような構造体で、いわば「つっかい棒」である。出来上がったトンネルの中央部にはこれが1.1mおきに林立するかっこうとなる。
シールドマシンは足場用材で組まれた巨大な「台車」の先端に取り付けられ、その台車全体がレールに乗っている。台車にはクレーン、泥水を循環させるポンプや水槽、各種の電源部などを搭載したまま掘削につれて全体が出来たトンネル内を徐々に前進していく(レールや配管、配線も徐々に継ぎ足して行くのだと思うが・・)。
これは掘削によって出てきた残土を縦坑まで搬送する長い長いベルトコンベア。
縦坑の下ではこの土を集積していて、ある程度まとまった量になったところでクレーンで引き揚げ、ダンプカーに積載して搬出するという。この時、コンベアはたまたま動いてはいなかった。
およそ一時間の見学行程を終え、再び工事用エレベータに乗って地上に戻る。
いつもと変わらない明治通りの車の往来、喧噪がそこにはあった。
この真下で驚くべき大工事が粛々と行われているとは想像もつかない。渋谷の街にはもう夕闇がそこまで迫っていた。
帰路は16:45 渋谷発 元町・中華街行きの東横特急5067Fであった。
電車は自身の走る高架下の更に地中深くで着実に進行しつつある、文字通り自らの進路をも変えてしまう一大イベントを嘲ざ笑うかのように優美なIGBTサウンドを響かせながら小刻みにノッチを上げる。そして並木橋のカーブを南西に進路を取って山手線跨線橋を渡り、中目黒に向けて滑らかに加速していった。
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