日曜は横浜橋商店街で食材等の買い出し。
まずはビール

今まで気になっていて未訪だった商店街の脇の路地にあるタイ料理店に入ることに。外観を撮影していたら中からタイ人っぽい女性と初老日本人男性のマスターと思しき人がドアの前まで来て、どうぞどうぞ!と手招き。中に入ると人の家の居間のような雑然とした雰囲気で場違い感が漂う。4人掛けテーブルが3基あるが、うち1基はマスターの作業机と化している。

女性もマスターもやたら話好きで、のべつ幕なしに話しかけて来る。その内容からすると以前は別のところで営業していたが、故あってこちらに移転したとか。また、マスターはタイに所縁があり、厨房の奥さんもタイ人っぽく、フロアの女性は娘かもしれない。店内にはタイから引き揚げて来た品々が所狭しと置いてあり、人から頼まれて引き取ったものも多いとか。

一番搾り中生やキリンラガーもあるが、娘のイチ押しはシンハー。で、これを2本頼む。どちらかというとスーパードライ的なすっきりタイプ。同時に後述の肴も一品オーダーする。それはちょっと時間が掛かるかも、という話だった。案の定、シンハーが尽きたので次のお勧めであるチャンを頼む。マスター曰く、これはハイネケンのライセンス生産らしく確かに深い味だ。
肴一品
ビールがシンハーからチャンに変わって、暫く経ってからこれがサーブされた。


これはガイヤーンという串に刺さないタイ風の焼鳥で、鶏もも肉を蒸し焼きにしたもの。店によっては純然たる蒸し鶏だったりするが、ここのガイヤーンは皮に焼き目が付き、油をたっぷり目にひいた高温のフライパンで揚げ焼き風に調理したものだろう。添え付けの甘辛タレに浸すと、これはもう最高で、こんなに美味しく風味の良い鶏肉料理は久し振りだ。
ランチセットのカレー
娘の説明は早口でよく分からず、見かねたマスターがあらためて解説してくれた。



要は、ランチセットのカレーは4種で、一人前はその中から2種をチョイス。つまり二人で4種全てがカバレージできるということ。上の写真が私の側にサーブされたものでその左が(正確にはカレーではないが)ガパオ、右が大根カレー(レッドベース)。その下の写真が家内側で中央がグリンカレー、右がパイナップルカレー。セット一人前は驚愕の600円だ。

付け合わせは種類が多くてぱりっとした新鮮な山盛りのサラダ。ドレッシングがスパイシーで風味が独特だが癖がなく、ちょっとした酸味が効いていて食欲をそそる。スープは掻き卵のチキンブイヨン風だが、これが実に薄味かつ旨味が強いけれども諄くないので自家製の鶏スープなのかもしれない。とにかくこれもとても美味しいのだ。

以下、写真の順に、大根カレー、グリーンカレー、パイナップル、そしてガパオとなる。マスター曰くタイには瑞々しい大根がないのでこれは日本国内向けアレンジだそうだ。確かに水分が多くてある意味日本料理的な風情だが、ペーストはレッドカレーがベースとなるためメインはタイ風、それでも水分が多くてとろとろに煮付けられた大根は懐かしく優しい味。

このグリーンカレーは群を抜いていて、今まで横浜・東京のタイ料理店で数々のグリーンを頂いてきてはいるものの、このグリーンの滋味といい、風味といい、そして具材の吟味、下味のつけ方とどこをとっても非の打ち所がない。家内とシェアしたので量的には少なく、これは是非お代わりしたい美味だ。因みに+200円でお代わりできるのは後から知った次第。

パイナップルはどうなんだろうと身構え、また味的にも甘めだろうから合うのか否か不安はあった。が、結果論的にはこれはとても美味しいカレーに仕上がっていて賞味する価値のあるオリジナリティあふれる一品。深くてボディー感が強い甘みは確かにパイナップル由来。酸味も手伝ってか実にトロピカルな雰囲気。甘さを中和するためか塩分濃度は相応だった。

更に、カレーではないがガパオが皿に乗ってサーブ。ナンプラーかなにか、魚醤に由来すると思われる鮮やかな旨味を吸った鶏挽肉に、青唐辛子や玉葱、筍の細切りなどが合わさったガパオは美味の極致。上に乗る硬目に仕上げた目玉焼きを割ると黄身の中央部は意外なことに半熟で、とろり、まったり。流れ出た粘性が挽肉餡とご飯に沁み、得も言われぬ至福をもたらす。
まとめ
初訪だったので、以下、まとめの項を書いておく。

この店は雑然とした風情で、あまり綺麗ともいえないため万人にはお薦めは出来ない。だが、味は横浜、また東京都内の高級タイ料理店に匹敵、いや凌駕するような一級品であり、ここ10年ほどの中では最高レベルと評価しても大袈裟ではない出来栄えだ。どの料理にも手抜かりはなく、そしてほのぼのとした愛情が籠った実に美味しいタイ料理。
勿論、ここ日本の客層に合わせたアレンジはそこそこ施されているとは思うが、それにしても実に美味なのであった。カレーを食べていると、日本人の男性がタイ人の女性を伴って入って来て隣に座った。この二人は常連らしく、女性の方は娘とは最初からハイテンションでお喋りしているし、旦那の方はマスターと親密に会話していた。知る人ぞ知る店なのかもしれない。いずれにせよ、とりもなおさず味は素晴らしいのひとこと。再訪は必至。
お店データ

カレーの店 ピー
神奈川県横浜市南区真金町1-3
電話:045-251-2644
営業:11:00~18:00
定休:水曜
最寄:市営BL阪東橋5分、京急 黄金町10分
今日の一曲

Steinway Legends: Polliniの2枚目の最終。ドビュッシー:12の練習曲#12
和音のための。オクターブ・ユニゾンが激しく上下動するなか小規模で微細な二度あるいは三度和音が入り混じる煩瑣な前半はスケールや和声の練習というよりは不規則な律動、即ちポリリズムの訓練のための曲。中間部は二度和音による緩徐な全音音階である意味ドビュッシー的。後半は冒頭部が再現し、煩瑣なコーダを迎えるというA-B-A'の三部形式。ポリーニの芸風に実にマッチしたデモーニッシュな曲で閉じるこの演出は憎い。
(MusicArena 2006/9/25)
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