Brahms: Sym#1@Skrowaczewski/読響 |
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・ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品69
・J.S.バッハ/スクロヴァチェフスキ編:トッカータとフーガ ニ短調BWV565
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮 読売日本交響楽団
ブラ1はコンサート・プロとしては比較的ポピュラーな曲目で、今まで読響定期でも他の在京オケ定期でも結構聴いた。特に読響はこれを得意中の得意にしているのではないか。
さて、このブラ1、齢も行ったブラームスが産みの苦しみで絞り出した渋い構築美を誇る作品だが、1楽章はシューベルトのザ・グレート、4楽章はベートーヴェンの合唱の歓喜の歌からパクったとされる曲でもある。事実、コンサートのプログラム冊子にもこの類似性に言及しているケースが多々見られる。
しかし、個人的にはこれらの類似性はあくまで表層的なものであって、ブラームス独自の仄暗さと憂鬱さ、そしてそこから希望へ一縷の望みをかけるメンタリティが結晶したものであると思っていて、とりもなおさず名作中の名作だと思うのである。
スクロヴァのブラ1は透徹されたドライな解釈で、ブラームスがこの作品に込めた光と陰を巧く引き出しているし、読響も冷涼でドラマティックな演奏を展開している。前出の2番よりも好感度の高い重厚な好演である。4楽章のたゆたう第一主題は朗々とした弦の歌い込みが見事、美しいユニゾンと、そこから分岐して憂愁を湛える重層的なポリフォニーが得も言われぬ世界を構築している。
カップリングはBWV.565のオーケストレーション版で、スクロヴァ自身の手による編曲。オルガンのパイプとストップの音色・特徴を忠実にシミュレートしたかのダイナミックで直線性の強い編曲で、オルガン独奏と比べて著しい違和感はない。
(録音評)
DENONレーベル、COGQ34、SACDハイブリッド。録音は2007年9月29日、東京芸術劇場(ライヴ)とある。ライナー裏のオケの写真は何故かサントリーなのだが、音は紛れもなく芸劇だ。
前出のブラ2よりもステージの見晴らしは良好、少しオフマイクで残響も豊富に含まれており、これはなかなかに鮮烈で優秀な録音だ。ティンパニとコンバスの低域は克明に捉えられており、空間を伝播する波形は生音に酷似、ブラス隊の出すビームも克明だ。
但し、弦のブリリアンスは相変わらず強めであり、現実の読響とは思われない美音。それ以外の特徴はブラ2と同一系統の音である。左右のマイクが外側へ拡がり気味なせいか中央部のパート定位が少々薄めだ。
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