Horizon 1 - Premieres 2007: Matthews Etc.@Markus Stenz/RCO |
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ホライゾン1-プレミア2007
・モーリッツ・エッゲルト(b.1965):
ナンバー・ナインⅥ: a bigger splash (2006-07)
・コリン・マシューズ(b.1946):
ターニング・ポイント (2006)
・テオ・ファーベイ(b.1959):
トロンボーンと管弦楽のためのリート (2007)
・デトレフ・グラナート(b.1960):
劇場的動物譜 Theatrum Bestiarum (2004-05 / rev. 2006)
ヨルゲン・ファン・ライエン(トロンボーン)
ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団
マルクス・シュテンツ(指揮)
このアルバム・シリーズの趣旨とこの曲たちの成り立ちについてはHMVなどのサイトを参照するとしても(=要するに現代に息づく同時代性を持った現代作曲家の作品を集めた)、まあ何とも前衛的な録音だろうか。現代音楽だと一言で言えばそれで終わってしまうのであるが、ジャズの要素もありシェーンベルクの12音技法もありと、全編が無調性のおどろおどろしくも躍動的でバイタリティ溢れる作品群だ。いつもながら現代音楽の解釈・演奏の上手下手は良くは分からないが高エネルギーを纏った熱い演奏であることは確かだ。
ナンバーナインは割と静かな瞑想的な作品。炸裂するチューバのモチーフが随所で生きる。ターニングポイントはドラマティックで一歩間違えると狂気に感じられる作品。パーカッションの躍動が素晴らしい。
なんと言っても白眉なのがRCOの主席Tb奏者ライエンが吹くトロンボーンと管弦楽のためのリートだ。リートは歌曲なのだが人間の声は入っておらず、Tbが声を出すのである。まさに超絶技巧のTbで、外園祥一郎のユーフォニアムを彷彿とさせる自由闊達なタンギングが堪能できる。
最後の「劇場的動物譜」は音の乱舞・散乱する世界を無条件に楽しめる作品で、極低音から超高音まで、またありとあらゆる音楽要素が含まれている曲。余り音量を上げて聴いていると隣近所から苦情が来るかもしれない程(それどころか精神疾患を疑われる懸念も・・)の完璧な不協和音と無調性の嵐なのだ。しかし何度も繰り返し聴いているうちに不協和音の中にある種の調和を覚えるのは不思議な現象。
(録音評)
RCO Liveレーベル、RCO08003、SACDハイブリッド。録音時期はそれぞれ2007年6月21,22日、2007年1月18日、2007年9月18,19日、場所は例によってアムステルダムのコンセルトへボウ。
音質はある意味で世界一だ。このRCO Liveと同形態の自主制作レーベルであるLSO Liveの高音質ぶりが目立つ昨今であるが、この盤はそれとはまるで異なったアプローチで超高音質を達成している。制作はいつものPolyhymnia Internationalの担当だが、この盤は88.2kHzのPCMで録音されている(HMVなどにはDSD録音と書いてあるが、実物のジャケットには88.2kHzと明記されている)。
LSO LiveがDSD録音によるオフマイク気味のパースペクティブを重視した手法であるが、この盤はハイサンプリングPCMによるオンマイク気味の実像重視の手法なのである。前者はオフマイクでありながらエネルギー感の減衰が全く見られず、かつディテールがどこまでも見えるという趣向なのだが、後者は高エネルギーを伴ったオンマイク録音にも拘わらず音像の肥大膨張も滲みも一切なく、それでいて広大な空間感も同時に獲得しているという超絶的な収録なのだ。
オーディオ的にはこれの右に出る超優秀録音はそうそうないのではないだろうか。装置の潜在能力や調子が嫌と言うほど試される、なかなかにタフなCDである。装置に自信のある人はチャレンジしてみて欲しい。
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