Piazzolla: Tangos y Canciones@Munich P-Trio, Ofelia Sala |
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ピアソラ:タンゴと歌曲集
望郷(*)
バチンの少年
私はマリア(*)
鮫
リベルタンゴ
もしかして、まだ(*)
アディオス・ノニーノ
天使へのイントロダクション
天使の死
失われた鳥たち(*)
ロコへのバラード(*)
四季
ミュンヘン・ピアノ三重奏団
オフェリア・サラ(s)(*)
かなり異色のピアソラだ。ラテン・アメリカの噎ぶような熱気と頽廃した緩い曲風が持ち味、そしてどことなくインモラルな風情が漂う「一般的な」ピアソラ解釈は微塵もない曲集である。いわゆる正攻法的には成功とは言えないピアソラであって、これは賛否が分かれるであろう。
しかし、物は考えようで、ドイツの正統的なピアノトリオが正統クラシックのアプローチでピアソラをやるとこうなるという見本の様な演奏だ。即ち無駄や溜めがないリジッドな解釈を基本に、ピアソラの曲が持つ特異なエモーションを譜面上のアゴーギクとデュナーミクだけで表現するという純粋クラシック側からのアプローチによる演奏なのだ。リベルタンゴは重厚で濃密ながら時間軸の揺らぎは大きく乗りの良い演奏、アディオス・ノニーノはソリッドにして清潔な演奏だ。
オフェリア・サラというソプラノはこれまた正統的なクラシック・アプローチの歌手だが、先鋭的で激しい側面も持ち合わせた声であって、クールなミュンヘンPトリオとは対照的な部分も感じられる。ロコへのバラードは多少メランコリックで救いといえば救いかもしれない。
いずれも演奏は非常に巧く、どれもが緻密にして緊迫感の強い演奏となっている。ダルで弛緩したピアソラの雰囲気を楽しみたいという向きには肩透かしかも知れないが、超絶技巧的でハイスピードなピアソラに興味がある人にはお勧めの異色アルバムといえる。
(録音評)
Genuinレーベル、GEN88110、通常CD。録音は2006年7月、2007年6月、ガスタイク(ミュンヘン)とある。音質はちょっと変わっていて、楽器の音色と残響は暖色系、しかし全体に乾燥した風合い。細密なディテールが見えすぎるなどという高解像録音ではないがVnやVcの弦の擦過音は割と克明に入っている。ピアノの響きは極自然で、これは曲によらず一貫している。ソプラノは少々ピーキーに聞こえる箇所もあるがほぼ良好な収録。以上の特徴的な音質は、エアボリュームが存分にあるガスタイクで小規模アンサンブルを録った場合に出る特色なのかも知れない。暫く馴染ませながら継続的に聴いてみたいアルバムだ。
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