Mahler: Sym#4@Sinopoli/SKD, Banse |
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GUSTAV MAHLER
Symphony No. 4 in G major
1. Heiter Bedachtig, nicht eilen
2. In gemachlicher Bewegung, ohne Hast
3. Ruhevoll, poco adagio
4. Sehr behaglich
5-18. Sinopoli's Commentary about Mahler 4
Staatskapelle Dresden
Giuseppe Sinopoli(dir)
Juliane Banse (s)
シノーポリがSKD=シュターツカペレ・ドレスデン(ドレスデン国立歌劇場管弦楽団)で振った最後のマラ4のライブ収録がヘンスラー・エディションで出た。シノーポリはこの二年後、ベルリン・ドイツ・オペラでアイーダを振っている最中に心筋梗塞で急死してしまう。
シノーポリには熱狂的なファン層がいた反面、瞑想的で独断的すぎるとの批判もあって賛否両論だったといえる。個人的には「否」の方であってシノーポリの解釈はアゴーギクが強すぎ、ダルで間延びしたところが相容れず、あまり聴いていなかったし、何度かチケットが廻ってきて聴く機会がありつつも来日公演には結局は足を運ばなかった。今考えると残念なことをしたものだ。
このマラ4は素晴らしい出来映えだ。ブーレーズの透徹されて隙のない音、スコアと対峙するような解釈のマラ4も素晴らしいのだが、シノーポリのこの優しく包み込まれるようなふんわりとした解釈はどうだろう。
出だしは例によって歩が遅いし、強烈なアゴーギクが掛けられた間奏部、また再現部では急に歩を速めたりと例によって昔から変わっていないスタイルなのだが、SKDがこのシノーポリズムを完全に飲み込んだ上で紡ぎ出す珠玉の旋律からはマーラーの楽しみ方に別の一つの道筋を付けていると今更ながら気が付かされた思いだ。
4楽章でマーラーではお決まりのユリアーネ・バンゼが登壇し、切々と「角笛」を歌い始めるやいなや、癒しのアトモスフィアは絶頂を迎えることになる。遅すぎるくらい遅いシノーポリのバトンが何故か全く気にならず、いや寧ろ天上のメロディーを存分に味わい尽くすのには最適なテンポと感じられるのである。SKDが楽しげに、そして心地よく揺らぐようにがっちりと下支えしており、その重層的な音の構築美はこのオケならではの繊細な美しさを湛えている。
5トラック以降はボーナストラックで、シノーポリの肉声によるマーラー第4交響曲についてのコメンタリーが入っている。このドイツ語での内容はスクリプティングされ、英訳翻訳版も含めてライナーに全文が掲載されている。
マーラー再発見の一枚だ。シノーポリ・ファン、またはアンチの人、マーラー・ファンにも是非お勧めしたい録音だ。
(録音評)
Profilレーベル、Haenssler Edition、PH07047、通常CD。録音は1999年5月29日、場所はSKDの本拠地ドレスデンのゼンパー・オーパーでのライブ収録。
音質は極めて優秀で、通常CDとしてはこれ以上望むべくもない仕上がり。その辺のSACDを明らかに凌駕するハイパー・ディテール、ウルトラ・ワイドレンジに支えられた極めて広大な音場空間が出現し、そして楽器の音色が出色の美しさだ。
漆黒の空間からふっと立ち上がる4楽章のバンゼのソロ歌唱は垂涎ものである。通常CDの録音としては年間グランプリ最右翼と言って良い出来だ。とても美しいマーラー録音で、ブーレーズ作品にばかり浸っている場合ではないのである。もうDGの出番は完全に終わったことを確証させてくれる一枚。
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