Chausson, Ravel: P-Trios@Trio Chausson |
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・ショーソン:ピアノ三重奏曲ト短調Op.3
・ラヴェル:ピアノ三重奏曲イ短調
トリオ・ショーソン
フィリップ・タレク(Vn)
アントワーヌ・ランドウスキ(Vc)
ボリス・ド・ラロシェランベール(Pf)
ショーソンの作品は最近では日本でもよく聴かれるようになってきたようで、アルバムも見るしコンサート・リサイタルの新聞広告で演目としてたまに目にする。
ショーソンのPトリオ、一楽章はちょっと仄暗いVcとPの通奏低音が基調となり、長調と短調を行き来しながら協和音と不協和音を重ねていく。不安定な心情と歓喜の心情が交錯するダイナミックな入りで、変形のロンド形式かと思わされるが恐らく自由形式だ。二楽章はtrès vite(凄く速く)という速度指定で、諧謔的な旋律と意表を付く拍子感が特徴のインプロンプテュ(スケルツォ相当)だ。三楽章は緩徐楽章でたおやかで少々厳かな旋律が支配し、VcとVnの掛け合いが絶妙、美しい。四楽章フィナーレは一転激烈なリズムとテンポ、そしてアップダウンの激しい旋律をVnがトレースし最後の盛り上がりを迎える。
ラヴェルのPトリオは有名は有名だが、ラヴェル作品中最も前衛的であって重厚かつ劇的な曲で、長さから言っても割と大型の曲だ。和声と分かるような単純で理解しやすいポリフォニーは殆ど出現せず、また無調性と言われても殆ど納得せざるを得ない重層的な旋律遷移、また不定拍子ともとれる複雑で暗鬱なリズムを刻むのだ。全体を通して感じられる鬱屈した精神状態と、そこから解脱せんとする飛翔への試みが主題の背景にあるのでは、と、個人的には解釈する。
トリオ・ショーソンの演奏は、これらの難曲の深い森の中を分け入るが如く獅子奮迅の取り組みを示す。集中と分散を繰り返しつつ歩を進め、静寂部では芯を突くエネルギーをどこかに蓄えていて、トゥッティでは実に開放的かつバイタリティ溢れる表現を見せる。とにかくこのトリオ、巧い人たちだ。
(録音評)
MIRAREレーベル、MIR049、通常CD。このCDは再生が難しい。ローレベルが判然とせずどこか靄がかかったような背景に、神経質な暖色系の弦が悲鳴を上げるような荒さがあったし全体の構図も曖昧だった。しかし、何回か再生していたところ急激に透明度が改善し、非常に克明な楽器がクールで豊かな立体感を伴って定位するようになった。
実はこれ、もの凄く解像度の高い録音で、しかもローレベルの微細な直接音と絶妙な残響成分が高いレベルで調和したCDだったのだ。成功すれば小振りのステージを鳥瞰するかのような見晴らしの良い、そして均整の取れた三次元音場が提示されるのであった。緊張感のある演奏内容と相俟って、オーディオ的な快感をも密やかに味わえるという優秀録音盤なのだ。
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