J.S.Bach: Lute Works@Paul O'Dette |
今日はハルモニア・ムンディの新譜で、リュートで奏でるバッハの作品集から。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2592726
J.S.バッハ: リュート曲集 第1集
1. シュスター氏のためのリュート用作品 イ短調 BWV 995
(原曲:無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調)
2. パルティータ ヘ長調 BWV1006a
(原曲:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調)
3. ソナタ ト短調 BWV1001
(原曲:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番ト短調)
ポール・オデット(13弦バロック・リュート)
リュートはかなり古い歴史を持つ古楽器で、見た目にはビルマの竪琴、日本の琵琶に酷似している。典雅な音色もまた互いに似ている。それもそのはずでこのリュートが祖先となって東洋へ伝来したのが琵琶たちだからだ。
上の奏者の解説に(13弦バロック・リュート)とあるが、これは13コース・バロック・リュートの翻訳誤りだ(http://harmoniamundi.com/usa/album_fiche.php?album_id=1189)。通常は最高音コースを除き、一つのコースに2本の弦を張って調律し、これを同時に爪弾く恰好になっているのだ。つまり、この場合だと12×2+1で25本の弦が張られていることになる。
リュートは現代において合奏に使われることは殆どないし、またリュートのためのオリジナル作品もそれ程多くは残されていない。以前に取り上げたヴィオール属(ヴィオラ・ダ・ガンバ)と同様にフレットを持つ弦楽器であるが、やはり音量と操弦法の観点からヴァイオリン属によって駆逐されていった楽器と言える。しかし、ピチカートのみで演奏されることから言えば現代のギターがその子孫として生き残っていると言えなくはない。
BWV995は本来はチェロのための作品であるが、このバロック・リュートの最低音弦は辛うじて通奏低音を奏でることに成功している。やはり楽器サイズから言って低域は苦しい。しかし、このポール・オデットという人の技術は確かであり、ボウイングによるスケールよりもピチカートによるスケールの方が緻密で正確な旋律を刻めているという印象。
BWV1006は有名な無伴奏Vnパルティータだが、1006aは明らかに作者自らの手によってリュート用に編曲された作品である。しかしバッハ自身がリュートを演奏したのか否かは分かっていない。これはなかなかの出来映えで、Vnで聴くのとは違う趣だが適度な緊張感と共に華やいでくつろげる独特の雰囲気はリュートの天国的な響きのためか?
BWV1001は1006とペアリングされることの多い無伴奏Vnソナタだ。こちらはオデットの編曲によるものかも知れないがライナーノーツを全部読んでいないので分からない。時間軸の揺らぎを最大限に使ったいわゆるアゴーギクの多い演奏で、バッハ作品の演奏としては珍しいエモーショナルなもの。
(録音評)
Harmonia Mundi HMU907438、2006年3月の録音とある。音質は非常に良好だがピチカートを捉えた収録としてはフィンガー・ノイズや輪郭強調が抑制された落ち着いた音調。だが、残響成分は彫りが深く、それでいて楽器のボディーは明確に、そして原寸大で描かれている。
スピーカーケーブルやアンプなどの高域にキャラクタが乗った要素があるとたちどころに刺激臭を発するという類のCDであって、本来の姿で再生するのは予想外に難しいかも知れない。オーディオ的な快感は少ないかも知れない。非常に洗練された「大人」のサウンドだ。
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よくご存知ですね。ただい、ルネサンスリュートはそうなのですが、ここで弾かれているバロック・リュートは高音側2弦が単弦なので
11X2+2 で 24本です。
ところでこのリリース以来ポール・オデットの新譜がでていませんね。
(最近出たカプスベルガーは再発です)
>高音側2弦が単弦なので11X2+2 で 24本です。
ご指摘ありがとうございます。なるほど、非常によくご存知ですw
昨日HMV渋谷に寄ったところハルモニアムンディ創立20周年記念CDというのが並んでいて、その中にオデットの録音もあったのですが既出のCDからのコンピレーションでした。
ところで、犬の聴覚というのは非常に鋭敏なのをご存知ですか? 我が家の犬は音の悪いCDを掛けると大騒ぎします orz