Liszt Recital@Polina Leschenko |

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1 J.S.バッハ/リスト編:前奏曲とフーガ イ短調
2 J.S.バッハ/ブゾーニ編:シャコンヌ
3 グノー/リスト編:歌劇『ファウスト』のワルツ
4 リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調
ポリーナ・レスチェンコ(Pf)
レスチェンコはEMIからデビューしていて、アルゲリッチ主宰のルガーノ・フェスティバルにも出演している。そして、この中のCD3でシュニトケのソナタを好演している。しかし、何故か突然に脈絡なく気鋭のavanticlassicからこの素晴らしいアルバムをリリースしてしまった。
この夏、すみだトリフォニーでNHKのテレビ番組「ぴあのピア」の収録があって、レスチェンコはこれにも特別出演したらしく、その時の模様が放映されたときには大きな反響を呼んだらしい。残念ながら見ていないが。その映像を見るまでもなくこのCDを聴けばレスチェンコの真価が全て理解できてしまう。
このCDにはリストや、その縁あるピアニスト兼作曲家ブゾーニらのJ.S.バッハに捧げるオマージュとも言えるトランスクリプション群、そして著名なソナタが収録されており、なかなか重厚な構成である。
バッハの作品そのもののピアノ編曲版は、怒涛のようなデュナーミク、目眩くアゴーギクにより一気呵成に加速しながら綴られていく。瞑想的で淡泊、静粛なプレリュードとフーガが、大波荒れ狂う大海を勇壮に進む船が激しく上下に揺さぶられながら前進していくが如きのドラマティックな解釈で演奏される。
最初から最後まで固唾を飲んで聴くとはこのことで、一瞬のたじろぎも許容されない程に凄まじい集中力と圧倒する超絶技巧に飲み込まれてしまう。気が付くと最後のソナタを残すだけとなっていた。
レスチェンコの感情表現の起伏は非常に大きく、それを支える操鍵技巧は揺るぎなく精密かつハイスピードだ。昨日取り上げたデゼールも技巧的には最高レベルなのだが、それとは異なる一種の凄みを持っているのだ。なるほど若い頃のアルゲリッチに通ずるものを持っている。
またリスト弾きとしてのテクニックはアンドレ・ワッツを凌駕しているかも知れない。昨今で言えば小菅優のリストもなかなかに巧くて聴かされるのであるが、レスチェンコの怒涛の演奏を聴いてしまうと残念ながらやや平坦と言わざるを得ない。レスチェンコを女流と称するにはやや問題があるかも知れない。
最後のソナタだが、これまた激しく重厚な演奏であり、それでいてパッセージの驚異的な速さは鈍重さの微塵も感じさせない。一気に咳き込むようなアチェレランドに入るや、ぱっと緩解するリタルダンドに転じたりと、これまた息継ぐ暇もないほどの縦横無尽さである。
聴いた後は無音に浸りたいほどの脱力感と疲労感が残った。毎日聴き続けられる演奏ではないかも知れないが、麻薬的な魅力を持った一枚である。
(録音評)
avanticlassicレーベル、5414706 10272、SACDハイブリッド盤。DSDレイヤーはP邸にて試聴、PCMレイヤーは自宅にて試聴。両者の差は僅かなプレゼンスと空気感の違いで、PCMの方がより実体的、DSDは空間再現で一日の長がある。
とにかく等身大のスタインウェイが丸々見えている臨場感が凄い。レスチェンコのハイスピードな豪腕で弾き倒され悲鳴を上げるハンマー、弦、スチールフレーム、響版が非常にリアルに描写されている。ピアノ録音としては今まで聴いた中で一二を争う出来映えだ。残響等の処理も非常に巧く、眼前に広大なステージが拡がっていて、その中央にピアノがポッと浮かび上がるのだ。すぐそこで弾いている気配感が強く感じられ気味が悪いくらい。
現代を代表する超優秀録音盤と言える。音楽的にもオーディオ的にもこれを凌駕するピアノ録音は希有だろう。
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このCD、数年前から持っているが、何度も聴いては聴き飽きて、また聴いて、また聴いて。。。 結局、このCDに戻ってきてしまう。 演奏もすごいし、録音質も好きだし。 ほどよい(!?)緊張感。絶品。 ...... more