J.S.Bach: Sonates@Victoria Mullova |
ということで、長らく専属していたフィリップスと決別し、新たなバロック音楽解釈を模索してきた女王の二枚組みの新譜で、バッハのソナタ全集だ。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2560436
J.S.バッハ:
ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ集 BWV.1014~BWV.1019 (全曲)
トリオ・ソナタ 第5番 ハ長調 BWV.529
ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト長調 BWV.1021
ヴィクトリア・ムローヴァ(ヴァイオリン)
オッタヴィオ・ダントーネ(チェンバロ&オルガン)
ヴィットリオ・ギエルミ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
ルカ・ピアンカ(リュート)
ムローヴァは以前、どのジャンルも卒なく流麗に弾きこなしていた印象があった。ヴィヴァルディやバッハにおいてもそうだったのだが、この録音では解釈が変化していて、一言で言うと虚飾が削ぎ落とされている。清冽という表現が当たっているだろうか? 淡々としつつも規律を重んじたシンプル表現と言える。以前の「女王」のイメージで聴くとちょっと違うかも? と思われる傾向はあると思う。
一枚目の最後に入っているトリオソナタに関しては肩の力を抜いた柔らかな表現で多少アゴーギクも織り交ぜ、オルガンとガンバとの掛け合いハーモニーを存分に楽しんでいるようだ。聴いている方も気分がうきうきとしてくる。
全体の完成度、緊迫感は一級品で、本格的バロック解釈による本格的ソナタ全集である。これはムローヴァが到達した一つの結論ではなかろうか。満足行くCDである。今後、ONYXからは無伴奏Vnソナタやパルティータがリリースされるそうで実に楽しみだ。
(録音評)
ONYXレーベル、#4020、2007年3月の録音。ムローヴァがずっと愛用してきたストラディヴァリに代わり、1750年製のガダニーニを弾いている。艶やかなストラディヴァリや渋いガルネリとは一線を画するストレートで純度の高いアンシェント楽器だ。
録音は他のONYXに見られるようなマイルドタッチなものではなく、かなりの辛口だ。レコーディングのプロデュースはムローヴァ自身が務めているようだがその趣向が反映した音質ということかもしれない。Vnの定位、トリオソナタにおける小型オルガンの残響、ガンバの響きは優秀でありオーディオ的にも楽しめるものだ。
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