2007年 06月 21日
Debussy: Piano Works@田中希代子 |
今週の音楽日記の最後はこれ。その名の如くの希代の日本人ピアニスト、田中希代子のドビュッシー作品集で、春先に購入し、ちょこちょこと聴いている最近の愛聴盤だ。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/2506345
ドビュッシー:
1 ベルガマスク組曲 前奏曲
2 ベルガマスク組曲 メヌエット
3 ベルガマスク組曲 月の光
4 ベルガマスク組曲 パスピエ
5 子供の領分 グラドゥス・アド・パルナッスム博士
6 子供の領分 象の子守唄
7 子供の領分 人形のセレナード
8 子供の領分 雪は踊る
9 子供の領分 小さな羊飼
10 子供の領分 ゴリウォーグのケークウォーク
11 前奏曲集 第1巻より アナカプリの丘
12 前奏曲集 第1巻より 雪の上の足あと
13 前奏曲集 第1巻より 西風の見たもの
14 前奏曲集 第1巻より 亜麻色の髪の乙女
15 前奏曲集 第1巻より とだえたセレナード
16 前奏曲集 第1巻より 沈める寺院
17 前奏曲集 第1巻より ミンストレル
18 前奏曲集 第2巻より 霧
19 前奏曲集 第2巻より 妖精はよい踊り子
20 前奏曲集 第2巻より 月の光が降りそそぐテラス
21 前奏曲集 第2巻より 水の精
22 前奏曲集 第2巻より 花火
田中希代子(ピアノ)
FMで何曲か聴いたとき、否応なしに耳に浸透してくる鮮度の高いピアノの音色がもの凄く気になっていた。その時の衝撃度はデビュー当時のブーニンの超絶技巧を聴かされたとき以上のものがあり、あとから調べてみたら既に故人の演奏とあった。
その後訪れたHMV店頭で、たまたま試聴機にセットされているのを見つけ、そして最初から最後まで直立不動で聴いてしまったというCDだ。
田中希代子は、日本人として初めてショパン国際ピアノコンクールの最終選考に残り、そして10位入賞を果たしたまさに幻の女流だ。ショパン国際の前にはロン・ティボー国際、ジュネーブ国際で入賞を果たすという偉業を達成している不世出のピアニストであるが、若くして膠原病を患い、活動期間は非常に短かったという不運の人でもあった。人となりはWikiなどに詳しいが、そこから象徴的なセンテンスを引用:
---
1955年、第5回ショパン国際ピアノコンクール10位(日本人初の入賞)。この年初めて採用された点数計算機によれば、1次予選では5位、2次は19位、3次で6位だった。上位10人はほぼ横並びに等しく、1位のアダム・ハラシェヴィチ(ポーランド)と2位のウラディーミル・アシュケナージ(ソ連)の差はわずか0.1ポイントで、1位と10位の差も7.6ポイントしか開いていなかった。そのため、審査員だったアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリが、アシュケナージが2位で希代子が10位という結果に憤慨し、どちらの認定書にもサインを拒否して退席してしまっていたことが、1989年9月、ワルシャワの新聞「エクスプレス」によって、全段写真付きで明らかにされた。
---
アシュケナージと共にショパン国際で渡り合った、そういう時代背景の人だったが、亡くなって今年ではや11周忌となるそうだ。
閑話休題
ほかの誰にも似ていない華麗なドビュッシー。そして驚くべき感性と超絶技巧は聴く者を圧倒し、そしてただただ感動を励起するのみだ。何度聴いてもその思いは変わることなく、いや、聴く度にその大いなる才能と卓越した感性への驚愕は増幅されていくのだ。
ドビュッシーのピアノは瞑想的で詩的で、時にメランコリックに、滑らかに、時に離散的、というのは普遍的なイメージ(例えばパスカル・ロジェなど)なのだが、田中希代子はその固定観念をいとも簡単に破壊してしまう。
この演奏は動物に例えれば野を駆ける大山猫だ。その鋭く獰猛な爪で音符を切り刻んだかと思いきや今度はゆったりとした抜き足で用心深く鍵盤上を歩む。かと思えば急に全力で疾駆し始めてはまた停まる・・。爛々と輝く瞳は楽譜を睨みつつジリジリと迫ったかと思うやいなや、俊敏な瞬発力を活かして一気に跳躍して挑み掛かる・・。まぁ、こんな印象を持つ、実に鮮やかな解釈なのだ。
若々しくて燦然と輝くクリスタルのような音色も特徴で、弦がピーキーな悲鳴を上げる多少乱暴な箇所もあるが、これはご愛嬌。ペダルを最小限の使用に留めた超高速マルカート奏法は運指に自信がなければ為し得ない技だ。転がるような鮮烈なスケール、工作機械のように高速で打ち下ろされる和音、魔術的なトリルと分散和音・・・、どこをとっても天才だ。
パスピエ、ゴリーヴォーグ、雪の上、沈める寺院を聴けばこの人の解釈が尋常を逸脱していることが良く分かる。
(録音評)
キングKICC655、録音:1961年7,8,11,12月、文京公会堂(ステレオ)とある。居を構えるパリからたまたま帰国したときの録音だそうだ。キングレコードは田中希代子演奏の復刻に情熱を傾けているそうで、これは非常に喜ばしいことだ。
超高音質とは言えないものの、瑞々しく弾けるような爽快感が堪らない高好感度リマスターだ。キング渾身の復刻と言える。
1日1回、ポチっとクリック ! お願いします。


http://www.hmv.co.jp/product/detail/2506345
ドビュッシー:
1 ベルガマスク組曲 前奏曲
2 ベルガマスク組曲 メヌエット
3 ベルガマスク組曲 月の光
4 ベルガマスク組曲 パスピエ
5 子供の領分 グラドゥス・アド・パルナッスム博士
6 子供の領分 象の子守唄
7 子供の領分 人形のセレナード
8 子供の領分 雪は踊る
9 子供の領分 小さな羊飼
10 子供の領分 ゴリウォーグのケークウォーク
11 前奏曲集 第1巻より アナカプリの丘
12 前奏曲集 第1巻より 雪の上の足あと
13 前奏曲集 第1巻より 西風の見たもの
14 前奏曲集 第1巻より 亜麻色の髪の乙女
15 前奏曲集 第1巻より とだえたセレナード
16 前奏曲集 第1巻より 沈める寺院
17 前奏曲集 第1巻より ミンストレル
18 前奏曲集 第2巻より 霧
19 前奏曲集 第2巻より 妖精はよい踊り子
20 前奏曲集 第2巻より 月の光が降りそそぐテラス
21 前奏曲集 第2巻より 水の精
22 前奏曲集 第2巻より 花火
田中希代子(ピアノ)
FMで何曲か聴いたとき、否応なしに耳に浸透してくる鮮度の高いピアノの音色がもの凄く気になっていた。その時の衝撃度はデビュー当時のブーニンの超絶技巧を聴かされたとき以上のものがあり、あとから調べてみたら既に故人の演奏とあった。
その後訪れたHMV店頭で、たまたま試聴機にセットされているのを見つけ、そして最初から最後まで直立不動で聴いてしまったというCDだ。
田中希代子は、日本人として初めてショパン国際ピアノコンクールの最終選考に残り、そして10位入賞を果たしたまさに幻の女流だ。ショパン国際の前にはロン・ティボー国際、ジュネーブ国際で入賞を果たすという偉業を達成している不世出のピアニストであるが、若くして膠原病を患い、活動期間は非常に短かったという不運の人でもあった。人となりはWikiなどに詳しいが、そこから象徴的なセンテンスを引用:
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1955年、第5回ショパン国際ピアノコンクール10位(日本人初の入賞)。この年初めて採用された点数計算機によれば、1次予選では5位、2次は19位、3次で6位だった。上位10人はほぼ横並びに等しく、1位のアダム・ハラシェヴィチ(ポーランド)と2位のウラディーミル・アシュケナージ(ソ連)の差はわずか0.1ポイントで、1位と10位の差も7.6ポイントしか開いていなかった。そのため、審査員だったアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリが、アシュケナージが2位で希代子が10位という結果に憤慨し、どちらの認定書にもサインを拒否して退席してしまっていたことが、1989年9月、ワルシャワの新聞「エクスプレス」によって、全段写真付きで明らかにされた。
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アシュケナージと共にショパン国際で渡り合った、そういう時代背景の人だったが、亡くなって今年ではや11周忌となるそうだ。
閑話休題
ほかの誰にも似ていない華麗なドビュッシー。そして驚くべき感性と超絶技巧は聴く者を圧倒し、そしてただただ感動を励起するのみだ。何度聴いてもその思いは変わることなく、いや、聴く度にその大いなる才能と卓越した感性への驚愕は増幅されていくのだ。
ドビュッシーのピアノは瞑想的で詩的で、時にメランコリックに、滑らかに、時に離散的、というのは普遍的なイメージ(例えばパスカル・ロジェなど)なのだが、田中希代子はその固定観念をいとも簡単に破壊してしまう。
この演奏は動物に例えれば野を駆ける大山猫だ。その鋭く獰猛な爪で音符を切り刻んだかと思いきや今度はゆったりとした抜き足で用心深く鍵盤上を歩む。かと思えば急に全力で疾駆し始めてはまた停まる・・。爛々と輝く瞳は楽譜を睨みつつジリジリと迫ったかと思うやいなや、俊敏な瞬発力を活かして一気に跳躍して挑み掛かる・・。まぁ、こんな印象を持つ、実に鮮やかな解釈なのだ。
若々しくて燦然と輝くクリスタルのような音色も特徴で、弦がピーキーな悲鳴を上げる多少乱暴な箇所もあるが、これはご愛嬌。ペダルを最小限の使用に留めた超高速マルカート奏法は運指に自信がなければ為し得ない技だ。転がるような鮮烈なスケール、工作機械のように高速で打ち下ろされる和音、魔術的なトリルと分散和音・・・、どこをとっても天才だ。
パスピエ、ゴリーヴォーグ、雪の上、沈める寺院を聴けばこの人の解釈が尋常を逸脱していることが良く分かる。
(録音評)
キングKICC655、録音:1961年7,8,11,12月、文京公会堂(ステレオ)とある。居を構えるパリからたまたま帰国したときの録音だそうだ。キングレコードは田中希代子演奏の復刻に情熱を傾けているそうで、これは非常に喜ばしいことだ。
超高音質とは言えないものの、瑞々しく弾けるような爽快感が堪らない高好感度リマスターだ。キング渾身の復刻と言える。
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by primex64
| 2007-06-21 10:47
| Solo - Pf
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