Steinway Legends: 内田光子 |
因みに第二弾はまだ買っていない。早くしないと店頭から消えそう。そうなると全10アーティストのボックスものとなり、一ヶ月待ちということらしい。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1252514
モーツァルト:ロンド イ短調 K511
モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第12番 ヘ長調 K332
モーツァルト:幻想曲 ニ短調 K397
シューベルト:即興曲(D899) 第4番、第2番
シューベルト:6つのドイツ舞曲 D820
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第13番 イ長調 D664
内田光子のベートーヴェンやシューベルトが巧いのは既知の事柄であり、またモーツァルトも定評があるのだが、自分的にはどうも食わず嫌いで来ていたようで、それはモーツァルト自体があまり好きではないということに起因しているのだろう。
短めのロンドK.511で始まるこの1枚目はなんとも掴み所がない出だしであったので少々面食らった。内田のピアニズムは男性顔負けのタイトでダイナミックなものだとずっと迷信のように思い込んでいたがためである。
実にたおやかで優しいロンドだ。そして、あまり使いたい表現ではないがやはり女流の美点である細やかで手抜きのない弾き込みが感じられる。前回がアシュケナージ、その前がポリーニだったので殊更その優美さが強調されているのかも知れない。
ソナタは一転して快活なもので、過剰なほどにポップに弾むデュナーミクが嫌味ではなく楽しい。これはどちらかというと普段の内田の弾き方だ。
6つのドイツ舞曲が圧巻である。短めのアップテンポな三拍子曲が連続する難曲だが、内田や軽やかに、時にためつすがめつ鍵盤を舐めるように叙情豊かに弾いている。このシューベルト作品の所以は知らないがショパンが生涯書き続けたマズルカに通ずるものが感じられる。
内田は生粋の日本人ではあるが、彼女の音楽性やピアノ奏法上の表現手法については主に欧州で培われたものであり、そういった点においては日本国内の多くのタレント・ピアニストとは一線を画する存在だ。
いよいよスタインウェイ・レジェンズ第1弾の最後、内田光子の二枚目。
ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲 ハ短調 WoO80
シューマン:クライスレリアーナ 作品16
ドビュッシー:12の練習曲より
「組み合わされたアルペジォのための」
「対比的な響きのための」「反復する音符のための」
「装飾音のための」
ベルク:ピアノ・ソナタ 作品1
ベートーヴェンの変奏曲は内田光子の本領発揮と言った出来映えである。例によって深々とした瞑想するかのようなアダージェット、そこからアチェレランドで取り憑かれたように咳き込むヴィヴァーチェへと緩急自在のベートーヴェンである。彼女の多くのピアノソナタに見られるベートーヴェンの解釈であり、毅然とした硬質感が特徴だ。
この盤では、なんと言ってもクライスレリアーナが素晴らしい出来である。
Wikipediaから・・・
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クライスレリアーナ (Kreisleriana) はロベルト・シューマンが1838年に作曲した、8曲からなるピアノ曲集で、ショパンに献呈された。題名のクライスレリアーナとは、作家でありすぐれた画家でもあり、また音楽家でもあったE.T.A.ホフマンの書いた音楽評論集の題名(1814-15年刊)から引用されている。この作品はそれに霊感を得て作曲された。シューマンはその中に登場する、クライスラーという人物(ホフマンその人)を自分自身、さらに恋人のクララの姿にも重ね合わせた。作品は作曲者のピアノ語法がふんだんに使用されており、曲は、急-緩-急-緩・・・と配置されている。全曲は3部形式を基調とし、それぞれに共通し、全曲を統括するモチーフや曲想が見られる。作曲者を代表する傑作である。
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この幻想曲を八つ並べた曲集は、その全てにおいて増四度の上昇音階旋律が基調となっている。これが見えつ隠れつ間歇的に出現する隙間にシューマン独特の夢見心地なメロディーが紡がれている。まぁ、女性的ななよなよしたところが嫌いだというアンチ・シューマンな人にはお勧めできない最右翼の曲集かも知れない。
内田の演奏は完璧である。一部の隙も見せず巧妙に仕組まれた和音を全て溶融させて結合し、シームレスに流れるように弾ききっている。ブレンデルのクライスレリアーナも良かったがデュナーミクの洗練性では内田の勝ち。
(録音評)
フィリップスの制作。ピアノの音は中庸で、ローエンドからハイエンドまで過不足なく録られている。殆どがデジタル録音だが一部にアナログマスターが含まれる。しかし、調音はどれも同じ様な質感に仕上げてあり秀逸である。ピアノのアクション・ノイズはごく少なめで聴きやすく優しい録音である。BGMとして聴いても、また多少音量を上げ、腰を据えて聴いても価値ある曲集だ。
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