Steinway Legends: Arrau |
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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」
モーツァルト:ロンド イ短調 K511
シューベルト:アレグレット ハ短調 D915
リスト:ピアノ・ソナタ イ短調 S718
バラキレフ:イスラメイ(東洋風幻想曲) ←1928年録音のリマスター版
ウィキペディアから:
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クラウディオ・アラウ( Claudio Arrau 1903年2月6日 - 1991年6月9日)は、南米チリ出身でアメリカを中心に活動した、20世紀を代表する巨匠的大ピアニスト。
ベートーベン、シューマンなどのドイツ系のピアニストとして世界的に有名だが、リストやショパンの演奏にも独自の境地を見せている。大柄で渋めの演奏が特徴で、抑制の効いた大人の世界は「噛めば噛むほど味が出る」と、遺された多くの録音を通じて多くのピアノファンを今なお魅了している。
アラウはチリの首都であるサンティアゴの400km南にある都市チリャンに、歯科医のカロス・アラウ(Carlos Arrau)とアマチュア・ピアニストのルクレチア・レオン(Lucrecia Leon)の息子として生まれた。
アラウは神童として知られ、5歳にしてコンサートを開催し、7歳でチリ政府の援助によってドイツ留学に送られた。ベルリンのシュテルン音楽院に入学した彼は、リストの高弟であるマルティン・クラウゼに師事。同じくクラウゼに師事したエドウィン・フィッシャー同様、リストの孫弟子にあたる。よってリストの解釈のひとつの完成型をアラウに見ることができると言ってもよいであろう。
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壮年期までのアラウは、重厚で剛健、男性的なピアニズムが基礎となった実に勇壮で渋い曲想をもっている。
この月光もこの例に漏れず実に重々しく荘厳かつ高密度なのだ。さりとて鍵盤さばきが鈍いとかテンポが緩いということは一切無く、楽譜に込められた情感をデフォルメすることなく淡々と速めのパッセージで繋いで行く。
月光は世の女流が好んで取り上げる曲で、得てして彼女らの演奏に見られるのは可憐さ、爽快感、軽快といったイメージが主だ。だが、アラウのこれはそれらの印象とはまるで裏返しで、絶望的な悲壮感と諦念の情が重層を成す津波となってグッと押し寄せてくるのだ。
リストのソナタはベートーヴェンとは打って変わったリリカルなもので、ダンディな虚無主義者であったリストの複雑な心情を表現しているような気がする(=勿論、リストの人となりを知っているはずもないのだが・・)。多彩で自在なアゴーギグ、胸の透くようなアチェレランドは爽快感さえ漂う。それでいてアラウの根底にある屈強で男性的なベースラインは些かも揺るいではいないのだ。リストの孫弟子というキャリアが為せる技なのかどうかは不明だが、これはこれで確立された世界なのだと思う。
アラウの二枚目だが、ショパンとシューマン、ベートーヴェンが入っている。
ショパン: 即興曲 第1番、第2番、第3番、第4番「幻想即興曲」
シューマン:ウィーンの謝肉祭の道化芝居 作品26
ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」の主題による15の変奏曲(エロイカ・ヴァリエーション)作品35
エロイカ・ヴァリエーションは初CD化だそうで、この盤の唯一のトピックらしい。これは何のことはない3番シンフォニー英雄の4楽章だ。第一主題を変奏曲にしたもの。で、出来は、何だかな~・・・。
私から見たこの盤の真価はショパンの即興曲だ。自信に漲った、なんとも男性的で力強く硬質なショパンだ。硬質と言ってもポリーニのような冷たく張りつめた危うげな硬さではなく、実に骨格の太い豪快な硬さなのだ。運指は素早く正確で、高難度のスケールも軽々と弾き上げて行く。特に幻想~は、ともするとショパン全般に対する固定観念、即ち、儚く、時に弱々しく、物憂げでやるせなく弾くという、なよとした解釈が多く見られるのだが、アラウは実に開放的に、さりとて適度にセンチメンタルに弾いている。時に強く、時には優しく元の旋律を大切に歌い上げている。
(録音評)
前のホロヴィッツはDGレーベルだったが、このアラウはフィリップス・レーベルだ。音は良くない。マスターが古いせいもあろうが、リマスタ技術が水準以下と言うべきだろう。ショパンの四曲はモノラル録音だと思っていたが、実はよく聴くと辛うじてステレオ収録らしい。つまりセパレーションが悪いだけであった。
スタインウェイのピアノは、まぁ普通はこんなものだろうという程度にはキャラクタを残しつつ録音されている。ちょっとバタ臭い音。ホロヴィッツの方の音質が素晴らしかったのでちょっと期待外れ。
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