2006年 09月 06日
Bartok: Miraculous Mandarin@Bouilez CSO |
めぼしいクラシックソースはそろそろネタ切れだ。暫くは途切れ途切れになるだろう。
パガニーニVコン@ハーンの音質の悪さに辟易して目の覚める音楽を聴いた。このアマゾンのものは再販盤だが例によって我が家のは国内版発売と同時に購入し、ずっと行方知らずになっていて、ようやく最近になって見つかった初盤だ。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/712834
(国内盤はこちら↓)

Miraculous Mandarin, Music For Strings, Percussion & Celesta
Boulez / Cso
1. 中国のふしぎな役人
2. 弦楽器,打楽器とチェレスタのための音楽
指揮: ピエール・ブーレーズ
演奏: シカゴ交響楽団
以下、一曲目のマンダリンとはどんな曲か? ライナーノートから要約すると・・
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バルトークの三大舞台音楽の1つである中国の不思議な役人(A Csodalatos Mandarin)メニュヘールト・レンジェル(Menyhert Lengyel (1880-1974))の台本に基づいて書かれたパントマイム/バレエのための音楽。バルトーク自身「私がこれまで書いたなかで最高の管弦楽曲です」といっている。
この曲はバルトークのなかでも異色の作品であり、そして恐ろしく凝縮され完成された宇宙である。彼の傑作であるにもかかわらず、道徳的・政治的な理由により舞台上演が官憲らによって妨害されバルトークを失意の底に追い込み、その後も一部の伝記作家、指揮者、オーケストラ、音楽ファンらから避けられて不遇な時期を過ごす。また半世紀に渡って誤った楽譜が使われてきたことが判明し、子息(第2夫人ディッタの息子)のペーテル・バルトーク氏らの尽力で全体像がようやく明らかになったところ。
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このあらすじは退廃的でグロテスクな男女エロ物語だ。バルトーク自身が中国を訪れたかどうかは分からないが如何にもチャイナチャイナした旋律/リズム/楽器は見当たらない。それでも精一杯中国の風景と国情を想像したであろう努力の痕跡がそこかしこに見られる。
おどろおどろしい旋律、怒涛のような激しい情欲や怨恨、恐怖、そして官能的なメロディーとリズムが非常に独創的で美しく、かつ瑞々しく華やか、しかも激烈な展開で息を呑ませられる。一大スペクタクルが眼前に拡がるバルトークの傑作中の傑作。
演奏は例によって冷徹なブーレーズが青白い炎を上げまくって渾身の振りだ。随所で見せるアチェレランドが緊張感を誘い、要所で打ち鳴らされるティンパニ/グランカッサの衝撃波が全身を包んで恐怖感を煽る。これ以上CSOをダイナミックに鳴らすことは出来ないであろうと思うほど素晴らしい出来だ。これは不世出の解釈/演奏である。
有名な「弦チェレ」はチェレスタが曲名に入ってはいる。しかし、聴いてみると控えめなモチーフとして登場するチェレスタよりもピアノやハープの方が目立って活躍する不思議な曲だ。尚、管楽器はフィーチャーされていない。器楽編成は非常に変わっていて、弦(Vn、Va、Vc、Cb、Hrp)、打楽器(Mar、S.Dr、Dr、Cym、Tom、B.Dr、Timp、Celst)、ピアノとなる。
配列は、中央の指揮者を境に5部弦セクションを左右に両翼配置、中央にピアノ、ハープ、チェレスタ、後ろにその他の太鼓を拡げるのがバルトークの指示だが(スコアに明記されているらしい)、この録音ではハープは最右翼に配されている。後は概ね指示通りに思われるがチェレスタは少し右寄りから聞こえる。
バルトークと親しかったパウル・ザッハーが手兵バーゼル室内管弦楽団創立10周年記念として作曲を依頼、1936年9月7日完成とされる。
世界初演は1937年1月21日に委嘱者のザッハー指揮バーゼル室内管弦楽団。日本初演は1939年5月10日にヨーゼフ・ローゼンシュトック指揮の新交響楽団(アマオケの新響ではなく、現在の新日本フィルの前身)。
ライナーノートから抜粋で曲の紹介:
曲は緩(Andante tranquillo)、急(Allegro)、緩(Adagio)、急(Allegro molto)の4楽章形式。第一楽章冒頭の主題が変形されて各楽章に用いられる。
第一楽章は、拍子の定まらない変則的なフーガ形式。ミュートつきのヴィオラの半音階的な主題から始まる。続いて、完全5度ずつ上で主題が登場する。次に完全5度下(通常のフーガなら完全4度下)に主題が登場し、弦楽器群は次第に音域を扇のように広げていく。ティンパニの連打、続いてB.Dr(グランカッサ)が鳴って変ホ音のクライマクスに到達、次第に収縮し、そして開始と同じイ音で静かに閉じる。
第二楽章は、対向配置を生かしたアレグロで、弦楽器のステレオ効果の掛け合いが特徴的。ときにピアノや弦楽器も打楽器的(バルトーク・ピッツィカート)に用いられる。二つの主題を持つソナタ形式。
第三楽章は、バルトークの「夜の歌」の好例で、ティンパニのグリッサンドや木琴の即興的な音形が印象的。ABCBA のアーチ形式で、各部の経過に第一楽章主題が効果的に用いられる。
最終楽章は舞曲風アレグロ。後半はチェロのカデンツァ風ソロを経て、テンポがめまぐるしく変わる中、熱狂的に閉じる。
作曲技法・技巧的な秘密については日フィルの楽団員が書いているこれ http://www.japanphil-21.com/kikidokoro/kotaku/bartok_gencele.htm が面白い。
各楽章とも7分少々、足して約30分という演奏だが、どこでも息が抜けない緊迫した音楽である。1~2楽章は純粋な抽象音楽といって良いと思われるが3~4楽章はハンガリー色が強い(行ったことないので何とも言えないが・・)とされ、なるほど叙情的でやるせない旋律が断片的に現れる。ブーレーズはこういうのを振らせたらピカイチだ。感傷に走らずちょっと冷たく突き放したような尖鋭な捌き方をするのだが、それが堪らない魅力の録音と言える。
(録音評)
1994/12、Orchestra Hall, Chicagoでの収録とある。DG4D録音、トーンマイスターはRainer Maillardであり、彼がブーレーズを録る時の典型的な器楽配置がここでも再現されている。
マンダリンの方は非常に奥行き感のあるライブで明るいステージを構築し、煌びやかな管楽器のビームが心地よくリスナーに届くように設計された音場である。ストコフスキー配置の弦の重層は文句なく超一流の美音と厚みを明るい残響を伴って再現している。
弦チェレは一転してブラスセクションが無い地味な構成なのだが、こちらはちょっとデッドな暗黒のステージを構築。チェレスタの澄んだ音色が漆黒の闇に溶け込んで消えゆく様が美しい。恐ろしいS/N感である。ピアノが出しゃばることなく打楽器の一部として活躍するがオフ気味に引いたところでくっきりと定位している。両翼配置の弦は掛け合いを為し、まさにステレオフォニックのためにある曲だと思い知らされる。
両者は音質的に違いはあるが、どちらも超ハイファイな仕上がりであり、ブーレーズ録音の中でも際立った名録音の一つに数えて良い。最新のマーラー録音チクルスと比較しても遜色が無いどころか凌駕している美点が幾つか見つかるのである。
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パガニーニVコン@ハーンの音質の悪さに辟易して目の覚める音楽を聴いた。このアマゾンのものは再販盤だが例によって我が家のは国内版発売と同時に購入し、ずっと行方知らずになっていて、ようやく最近になって見つかった初盤だ。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/712834
(国内盤はこちら↓)
Miraculous Mandarin, Music For Strings, Percussion & Celesta
Boulez / Cso
1. 中国のふしぎな役人
2. 弦楽器,打楽器とチェレスタのための音楽
指揮: ピエール・ブーレーズ
演奏: シカゴ交響楽団
以下、一曲目のマンダリンとはどんな曲か? ライナーノートから要約すると・・
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バルトークの三大舞台音楽の1つである中国の不思議な役人(A Csodalatos Mandarin)メニュヘールト・レンジェル(Menyhert Lengyel (1880-1974))の台本に基づいて書かれたパントマイム/バレエのための音楽。バルトーク自身「私がこれまで書いたなかで最高の管弦楽曲です」といっている。
この曲はバルトークのなかでも異色の作品であり、そして恐ろしく凝縮され完成された宇宙である。彼の傑作であるにもかかわらず、道徳的・政治的な理由により舞台上演が官憲らによって妨害されバルトークを失意の底に追い込み、その後も一部の伝記作家、指揮者、オーケストラ、音楽ファンらから避けられて不遇な時期を過ごす。また半世紀に渡って誤った楽譜が使われてきたことが判明し、子息(第2夫人ディッタの息子)のペーテル・バルトーク氏らの尽力で全体像がようやく明らかになったところ。
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このあらすじは退廃的でグロテスクな男女エロ物語だ。バルトーク自身が中国を訪れたかどうかは分からないが如何にもチャイナチャイナした旋律/リズム/楽器は見当たらない。それでも精一杯中国の風景と国情を想像したであろう努力の痕跡がそこかしこに見られる。
おどろおどろしい旋律、怒涛のような激しい情欲や怨恨、恐怖、そして官能的なメロディーとリズムが非常に独創的で美しく、かつ瑞々しく華やか、しかも激烈な展開で息を呑ませられる。一大スペクタクルが眼前に拡がるバルトークの傑作中の傑作。
演奏は例によって冷徹なブーレーズが青白い炎を上げまくって渾身の振りだ。随所で見せるアチェレランドが緊張感を誘い、要所で打ち鳴らされるティンパニ/グランカッサの衝撃波が全身を包んで恐怖感を煽る。これ以上CSOをダイナミックに鳴らすことは出来ないであろうと思うほど素晴らしい出来だ。これは不世出の解釈/演奏である。
有名な「弦チェレ」はチェレスタが曲名に入ってはいる。しかし、聴いてみると控えめなモチーフとして登場するチェレスタよりもピアノやハープの方が目立って活躍する不思議な曲だ。尚、管楽器はフィーチャーされていない。器楽編成は非常に変わっていて、弦(Vn、Va、Vc、Cb、Hrp)、打楽器(Mar、S.Dr、Dr、Cym、Tom、B.Dr、Timp、Celst)、ピアノとなる。
配列は、中央の指揮者を境に5部弦セクションを左右に両翼配置、中央にピアノ、ハープ、チェレスタ、後ろにその他の太鼓を拡げるのがバルトークの指示だが(スコアに明記されているらしい)、この録音ではハープは最右翼に配されている。後は概ね指示通りに思われるがチェレスタは少し右寄りから聞こえる。
バルトークと親しかったパウル・ザッハーが手兵バーゼル室内管弦楽団創立10周年記念として作曲を依頼、1936年9月7日完成とされる。
世界初演は1937年1月21日に委嘱者のザッハー指揮バーゼル室内管弦楽団。日本初演は1939年5月10日にヨーゼフ・ローゼンシュトック指揮の新交響楽団(アマオケの新響ではなく、現在の新日本フィルの前身)。
ライナーノートから抜粋で曲の紹介:
曲は緩(Andante tranquillo)、急(Allegro)、緩(Adagio)、急(Allegro molto)の4楽章形式。第一楽章冒頭の主題が変形されて各楽章に用いられる。
第一楽章は、拍子の定まらない変則的なフーガ形式。ミュートつきのヴィオラの半音階的な主題から始まる。続いて、完全5度ずつ上で主題が登場する。次に完全5度下(通常のフーガなら完全4度下)に主題が登場し、弦楽器群は次第に音域を扇のように広げていく。ティンパニの連打、続いてB.Dr(グランカッサ)が鳴って変ホ音のクライマクスに到達、次第に収縮し、そして開始と同じイ音で静かに閉じる。
第二楽章は、対向配置を生かしたアレグロで、弦楽器のステレオ効果の掛け合いが特徴的。ときにピアノや弦楽器も打楽器的(バルトーク・ピッツィカート)に用いられる。二つの主題を持つソナタ形式。
第三楽章は、バルトークの「夜の歌」の好例で、ティンパニのグリッサンドや木琴の即興的な音形が印象的。ABCBA のアーチ形式で、各部の経過に第一楽章主題が効果的に用いられる。
最終楽章は舞曲風アレグロ。後半はチェロのカデンツァ風ソロを経て、テンポがめまぐるしく変わる中、熱狂的に閉じる。
作曲技法・技巧的な秘密については日フィルの楽団員が書いているこれ http://www.japanphil-21.com/kikidokoro/kotaku/bartok_gencele.htm が面白い。
各楽章とも7分少々、足して約30分という演奏だが、どこでも息が抜けない緊迫した音楽である。1~2楽章は純粋な抽象音楽といって良いと思われるが3~4楽章はハンガリー色が強い(行ったことないので何とも言えないが・・)とされ、なるほど叙情的でやるせない旋律が断片的に現れる。ブーレーズはこういうのを振らせたらピカイチだ。感傷に走らずちょっと冷たく突き放したような尖鋭な捌き方をするのだが、それが堪らない魅力の録音と言える。
(録音評)
1994/12、Orchestra Hall, Chicagoでの収録とある。DG4D録音、トーンマイスターはRainer Maillardであり、彼がブーレーズを録る時の典型的な器楽配置がここでも再現されている。
マンダリンの方は非常に奥行き感のあるライブで明るいステージを構築し、煌びやかな管楽器のビームが心地よくリスナーに届くように設計された音場である。ストコフスキー配置の弦の重層は文句なく超一流の美音と厚みを明るい残響を伴って再現している。
弦チェレは一転してブラスセクションが無い地味な構成なのだが、こちらはちょっとデッドな暗黒のステージを構築。チェレスタの澄んだ音色が漆黒の闇に溶け込んで消えゆく様が美しい。恐ろしいS/N感である。ピアノが出しゃばることなく打楽器の一部として活躍するがオフ気味に引いたところでくっきりと定位している。両翼配置の弦は掛け合いを為し、まさにステレオフォニックのためにある曲だと思い知らされる。
両者は音質的に違いはあるが、どちらも超ハイファイな仕上がりであり、ブーレーズ録音の中でも際立った名録音の一つに数えて良い。最新のマーラー録音チクルスと比較しても遜色が無いどころか凌駕している美点が幾つか見つかるのである。
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by primex64
| 2006-09-06 09:06
| Orchestral
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