J.S.Bach: Vn-Con@Hilary Hahn, Kahane, LACO |
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J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集
ヒラリー・ハーン(vn)
アラン・ヴォーゲル(Ob)
ジェフリー・カヘイン指揮ロサンジェルス室内管弦楽団
1. ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調BWV1042
2. 2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調BWV1043
3. ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調BWV1041
4. オーボエとヴァイオリンのための協奏曲ハ短調BWV1060
これらの曲はいずれもチェンバロ協奏曲でもフィーチャーされている、いわゆるドッペルである。尚、最後はBWV1060とあるが、伝統的にはBWV1060aとすべきだろう。無印はCemコンが元祖と言われているためだ。
Vnコン・ホ長調BWV1042 → Cemコン・ニ長調BWV1054
twin Vnコン・ニ短調BWV1043 → twin Cemコン・ハ短調BWV1062
Vnコン・イ短調BWV1041 → Cemコン・ト短調BWV1058
Ob+Vnコン・ハ短調BWV1060a → twin Cemコン・ハ短調BWV1060
私自身、過去からずっと、専らCemコンで聴いてきたので、たまにはふくよかなVnも良いかな・・?と思って買った一枚だったのだが・・・。
ハーンのヴァイオリニストとしてのベーシックスキルは高いものがある。また楽器の音色を明暗・硬軟にコントロールする技術も確かだ。
だが、この曲集はバッハの一般的解釈とは全く異なる速度で演奏されている。要はパッセージが速すぎるのである。緩徐楽章は実際にはゆっくり演奏しているのだが、やはり速く感じてしまう。
バッハのこのシリーズは第一、第三楽章はアレグロで弾いて欲しいところがヴィヴァーチェになってしまっていて味わいやテンポ感が感じられない。ただ単に速いメトロノームが拍を刻んでいるようだ。
緩徐楽章はレントで弾いて欲しいところをアンダンテで弾いていて急かされる感じ。もうちょっと譜面の行間を味わいたいと感じる。
譜面に現れる強弱記号によるデュナーミク、速度記号によるアゴーギクだけで十分にバッハらしい演奏になるはずなのに、実に勿体なく感じる。
全体としてみると、ハーンのVnだけではなく、オケまでもがせせこましい感じなので、なかなか長く聴いていることが出来ないのは残念。Vnは音色が美しくテクニックも盤石なので、解釈面での工夫が欲しい。但し近代以降のロマン派作品におけるこのストレートで若々しい解釈は有りだと思う。しかし、これはとりもなおさずバッハ作品なのだ。
(録音評)
2003年1月、ロサンジェルス、ハーバート・ジッパー・コンサート・ホールにおけるデジタル録音とある。DGとしては凡庸な音質と言える。多くの雑誌の録音評欄では五つ星を獲得していた様な気がするが、何度聞き返しても超高音質とは言えないごく普通の録音だ。
オケの輝きが過剰で残響も多め。ただ、これはホールトーンではなく電気エコーではないだろうか。それに比べてVnは割と素直な録り方だが、いわゆる松ヤニが飛び散るような克明な狙い方ではない。しかしハーンのVnはパッセージが速い流し方で、超絶技巧的な弦捌きも観察されるので、オーディオ的には喜びは大きいかも知れない。