Brahms: Pf-Quartet@Argerich, Maisky, Kremer, Bashmet |
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(国内盤はこちら↓)
ヨハネス・ブラームスは割と大編成な曲からPや管や弦楽器のための小曲まで、規模という点ではバリエーションに富んだ作曲を精力的に行った作家である。交響曲4つ、Pコン2つにVコン、弦楽セレナーデ、それとピアノトリオやカルテット、セプテット、弦楽トリオやカルテット、変わったところではクラリネットのためのソナタやトリオを作曲している。声楽物では有名なドイツ・レクィエムを忘れてはならない。
愁いに満ちた、激しくも美しいこのピアノ四重奏曲一番には、シェーンベルクがオーケストレーションを付けた管弦楽版というのが存在し、それはブラームスの交響曲五番などと呼ばれるほど規模も構成も本格的なものである。
以前は専らアイザック・スターン、ハイメ・ラレード、ヨーヨー・マ、エマニュエル・アックスのもの(今はソニーから再販されているらしいが・・)を聴いていたが、クレーメルらのこれが出てからはすっかりお蔵入り。
超多忙を極めるこの有名人4人がベルリンで落ち合ってCDを一枚録ると言うことがどれほど困難な事であったかがライナーに書いてある。それ程の希有な演奏であり、また出来映えも素晴らしいものがある。ブラームスの魂までも聞こえてくる様な鬼気迫る演奏である。細かなことは言うまい。是非買って聴いてみて欲しい。
(録音評)
2002年2月という厳冬期、ベルリンのグラモフォン社テルデック・スタジオにて収録、DGの4D録音である。右奥にアルゲリッチ、右手前にマイスキー、中央にバシュメット、そして左手手前にクレーメルが座って渾身のクァルテットを奏でる。音像の定位は素晴らしく、スピーカーの奥で生演奏しているかの如く錯覚を覚えるほどの収録。テルデック・スタジオ独特の透明で細身の残響が心地よいサイズの音場空間を作る。ミシャ・マイスキーのモンタニアーナが奏でる心の叫びがテルデックの空間に浸透していく愉悦を味わいたいものだ。
このCDは全般に再生が難しい。まず定位がなかなか定まらなく楽器の位置が不鮮明になり聴いていて落ち着かない、次に空間が拡がらない、楽器がザラ付いてピーキーで刺激的・・・等々、相当高いレベルのシステムで再生してもこの様な現象を引き起こしてしまう。系全体が高度に整ったシステムでは素晴らしい再生音が得られるが、少しでも不安定要因があると激しい破綻を見せることとなる。