Ravel: Ma Mere l'Oye@Argerich, Pletnev |
--
マ・メール・ロワ(Ma Mere l'Oye)は、マザー・グースを題材にした、モーリス・ラヴェルの作品。 原曲である4手連弾のピアノ曲、これを管弦楽曲に編曲した管弦楽曲版、さらにバレエ用に増補された版がある。
--
(少し補足すると、バレエ版の増補というのは要するに曲を幾つか書き足して大規模化させているということ)
(もう少し補足すると、この曲はラヴェルが彼の友人であるゴデブスキ氏に献呈し、氏の子供二人に弾かせるつもりだった)
そもそもが子供のために書かれた優美で情操たっぷりの組曲なのだが、オーケストラ版になるとちょっと様相が異なってくる。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1844533
(国内盤はこちら↓)
前半のプロコフィエフ・バレエ組曲シンデレラとカップリングされているCDだが、こちらはまた別の機会に取り上げられたら、と思う。
男性的で奔放なアルゲリッチと女性的で繊細なプレトニョフが織りなす幻想的な4手ピアノ連弾だ。(知らない人が読むといけないので書いておくが、アルゲリッチ=女性、プレトニョフ=男性である。逆なのである、念のため・・)
ハイライトを幾つか書こう:
眠りの森の美女へのパヴァーヌ・・・神秘的な小さな転調を数回繰り返しながらたおやかな絹糸を曳くようなソステヌートが紡がれ、とても癒される佳曲である。このCDでのアルゲリッチは抑制の効いた滑らかなタッチでアシストしている。f部分では芯のある彼女らしいタッチが一瞬復活するが全体としては大変に穏やかな弾き方である。プレトニョフの主旋律は夢心地の優しさだ。サンソン・フランソワ+バルビゼの軽やかで少々早いパッセージも好きだが、やはりこっちだろう。
美女と野獣の対話・・・ちょっと激しいダイアローグが実に楽しい。アルゲリッチはここでも十分にコントロールされたキータッチを見せるが強打と弱打が交互に到来する様は彼女本来の開放的な弾き方である。弱音部でのプレトニョフのタッチコントロールは筆舌に尽くしがたいくらい巧い。アルゲリッチは以前にネルソン・フレイレと共に同曲を録音しているが、やはりこっちだな・・・。
この曲集のうちの一曲で、2手へ易しく編曲し直したものを小学校6年の時のピアノ教室発表会で弾いた。
ということで、私にとっては懐かしさも手伝ってか、夢心地で珠玉の一枚なのであった。
(追補:録音評)
スイス・ヴヴェイにて録音とある。音像は遠くも近くもなく中庸といったところにスッと定位する。若干ライブ気味の残響だがS/N感が極めて高いのでサスティンペダルが脚から離れ、ダンパーが弦に触れる瞬間まで見えるように透き通った音場空間が再現される。録音は文句なし。スタインウェイが中央奥に二台並んでいれば再生系は正常と言って良いだろう。