日曜のランチの様子。
まずはビール
SHINが久々に野心的な限定をやるとの情報を得て、気合を入れて行ってきた。店主が先月予告していた蟹を使ったメニューがようやくお披露目。種々の事情からリリースが遅れたようだ。



詳細は店のPOPにあるので敢えて細々とは記さない。スープは、炊いた渡り蟹を粉砕してシノワで丁寧にピュレした出汁に、ソフトシェル・クラブを丸ごとミキサーで擂り潰したペーストを配合したそうで、いわば2way crab(蟹の二本立て)という超贅沢なもの。素材とアプローチは前回のビスク風ラーメンに似た感じだが、出来上がりはまるで違う。
カニポタージュつけめん
満を持して限定・蟹つけ麺が登場。この見た目はラーメンの延長線上にある料理とはとても思われない。





2way crabのスープには更にトマトと葫が入り、味付けは塩。塩味が塩だけなので、確かに蟹特有の深みある旨味、風味が脚色なしにダイレクトに来る。それだけでも十分美味だが、上にソフトシェル・クラブが一杯丸のまま乗る。これはガーリック・パウダー、ディル・パウダーでシーズニングし、小麦粉をはたいてポワレ、またはプレフリ(フリッター)にしたもの。

スープにはピュアで強い蟹のエキスが凝縮され、これはとても美味しいとしか形容のしようがない。スープには生クリームが滴下され、蟹エキスをマイルドに包み、更に深みが増す方向へとリードしている。そして何といっても今回の限定に通底しているのがディル。シーズニングにも、スープ表面にもあしらっていて、独特の爽やかさと仄かに甘い香りが実に効果的だ。

SHINの孤高のパッツン麺はこの極上蟹スープにめちゃくちゃ合う。もともと芯が強くて食べ応えするのであるが、この硬麺が粘度ある蟹スープ、生クリームを掠め取ってぐいぐいと持ち上げるのだ。鼻に抜ける蟹風味と麺の小麦臭が混然一体となって味覚中枢を襲って来る。ソフトシェル・クラブは超絶的に柔らかく、またディルの効いた味付けも抜群であった。
なんと愚かなことに、麺を食べるシーンの撮影を失念してしまった。いつもならスープに麺を浸す、具材を摘まんで拡大する、麺をリフトする、など一連のシーンを撮影し、後から上出来の写真をピックアップするのが常なのだが、今回は余りにも美味しかったせいか一心不乱に一気に麺を平らげてしまった。そして帰宅してRAWをJPGに現像する時、その失態に気が付いた。あぁ、落胆・・。
クルトンガーリックライス ▶ 2way crabリゾット
クルトンガーリック・ライスは、もちろんこのために私だけオーダーしたもの。

麺はすぐに終わり、お楽しみのリゾット・タイム。因みになぜかこれ以降は写真撮影していた。麺が入っていた丼にクルトンとガーリックチップが散らされたご飯を投入、そこに余った蟹スープをおもむろに注入。もちろん少し取り置きしていたソフトシェル・クラブの脚を数本と揚げ蓮根も一緒にぐずぐず混ぜる。麺とはまた違ってご飯でも超絶美味。二度美味しいのだ。




家内は鰹出汁のスープ割り。味の変化量が大きく驚いた。蟹のダイレクトな旨味は少しマイルド化されるが、代わりに多元的・重層的な滋味が加わり得も言われぬ幽玄な風情を醸す。私は家内に頼んでこのスープ割り後のスープを貰いリゾットに投入した。味がかなり落ち着くというか、和の風情に傾く。三度美味しい。写真を撮り忘れる駄目な人間になり下がった。
お店データ

自家製麺 SHIN(新)
横浜市神奈川区反町1-3-8電話:045-548-3973
営業:11:30~15:00(夜営業は当面休止)
定休:火曜(祝日でも休業)
最寄:東急東横線 反町4分
※感染症対策の消毒は万全
カウンター席には仕切りあり
今日の一曲

OEHMSのSACDハイブリッドでH.アルブレヒトがオルガンで弾くゴルトベルク。元々が二段鍵盤式クラヴィーアのためのアリアと変奏曲集だが、思いのほかすっきりとしたハイスピードなゴルトベルクに仕上がっていてなかなかに楽しめる一品だ。ピアノやチェンバロとは比較にならない多彩な音色が出せるオルガンならではの豪華さ、そしてペダルによる低音ストップの重厚な効果が顕著に現れていて飽きが来なく最後までずっと楽しく聴いていられるのだ。
(MusicArena 2009/7/15)