土曜のランチの様子。
まずは生ビール
11月に入ってから天候は割と安定している。この日は高島屋、ユニクロなどで買物があったので横浜駅西口へ。
この日は比較的早く起き出して家のことをやり、その後の朝食は近くのスーパーで買って冷凍してあった食パンとバゲットに家内謹製のベーコンエッグ、その他をいただいた。ランチは特に決めずにいたが、道すがら、たまには海鮮や鮨も良いわねぇと言う。ならばということで、前職時代に横浜・神奈川方面の仲良し関係で何度か使ったこちらへ。実に十数年ぶりだ。
肴一品 刺盛
鮨屋でランチを食べるのは実に久し振りだった。
というのも伊勢佐木町の行きつけの鮨屋が移転・新装オープンした後、先代の大将が引退して人手不足からランチ営業をやめ、昼時にはこれといって行くところがなくなったため。夜営業にはたまに行くが、ランチの選択肢からは外れてしまった。もちろん、他にも美味しい料理、店はあるので困ることはないのだが。昨今、やはり家内は海鮮あるいは鮨に枯渇していたようだった。
十数年ぶりに訪れたら、いつの間にか回転寿司になっていた。この店のネタや技術から言って敢えて回転寿司を標榜する必要もないと思うのだが。といっても昨今のこの状況からか、レーンは淡々と回ってはいるがその上の皿に乗っているのは三角に折った写真入りお勧め握りの単品メニューだけという状況。因みに鮨屋に来たらビールか酒、そして刺身を頼むのが私の流儀。
見渡すとアラカルトで注文した客の握りは小皿に載せカウンター越しで対面で手渡ししている。だったら無駄なのでレーンを止めればよいのにと思う。ま、それはいいとして生ビールのお供に刺盛を一皿頼んだ。昼に刺身を頼む客は殆どおらず厨房から裏へ急いで材料を取りに向かう板前の姿が。事前に拵えた握りの素材はコールドケースにずらりと並んではいるのだが。
割と安価な鮨前ではあるがネタは超新鮮で目付けも良くとても美味しい。写真の順に鮃、黒鮪の中トロ、真はた、あおり烏賊、潤目鰯、真鯛、青柳となる。特に真はたの脂の乗り具合と旨味が尋常でなく、刺身一枚で残りの生ビールを飲み干してしまった。山形県出身の家内がドリンクメニューの中から目ざとく見つけた銀嶺月山を追加。これまた罪作りな淡麗な酒。
大学の専門課程のキャンパスは港区にあり、住まいは駅2つくらい離れた品川区だった。20歳ごろの話だが、先輩に誘われて入った鮨屋でカウンターの中の大将と話をしていたら店の会計が思うように行かず、少し前に税務署の検査で追徴金が取られ、それを機に委託した会計士事務所からも杜撰だと言われているが忙しくて手が回らない由。どうすれば良いかと問われた。
では私が伝票整理のお手伝いをしましょう、という話になった。そんな軽い話から始まったバイトだが、大将には小学生の息子がいて、なんと当時では非常に高価なパソコンを持ってることが判明。今や化石だが8ビットCPUであるザイログZ80Aを積んだシャープ製のMZ-80Bという機種。当然に円盤ストレージはなく、何とカセットテープのドライブが付いていた。これを活用しようと提案し、以後、この原始的なPCがこの鮨屋の経理を担うこととなったわけだ。
上握り
私は回らない鮨屋でも、また回る鮨屋でも刺身と握りはアラカルトで頼むことは滅多にない。殆どの場合、おまかせの刺盛の後に上鮨か特上鮨を頼む。その習慣は若い頃から変わらない。
当時、工学系の学生だった私はFORTRAN、アセンブラ、あるいはCOBOLの授業や実習は一応受けていた。だが、そんなものは子供騙しに過ぎない。実は、大学の近くのNECや沖電気でプログラマーとしてアルバイトをしていたのだ。その関係上、学校の授業以外の言語でも実践的であらゆるコードが自在に書けたので、鮨屋の息子のMZ-80B上のBASICインタープリタでこの店の経理/会計システムを作り始めた。
総勘定元帳も、また勘定科目マスターもカナ文字で作り(=当時のPCでは漢字は出ない)、相手勘定もしっかり自動仕分けする本格的な複式簿記方式にした。入力された伝票の素データは内部仕分け処理後に月次会計明細ファイルに溜め、月締め処理で総勘定元帳に更新をかける運用にした。ところが、今だと更新ボタンを押せば瞬時に処理が終了しディスクに書き込まれるが、当時はそれをカセットテープに書き出すのだ。気が遠くなるほど悠長なオペレーションだった。
突っ込むカセットを誤って、先月分のデータを逸失したというトラブルがあった。そのため、BASICで自前でボリューム管理する仕組みも作った。要するに突っ込んだカセットに誤りがないということを確認するため、ラベルの照合を促すのだ。当時から既に汎用機OSには当たり前だがボリューム管理機構が実装されていたので、ちょうどそれを真似たというわけだ。
話が大きく逸れてしまった。で、当時の鮨屋の大将や板前に誘われてよく他の鮨屋へ食いに出掛けた。カウンタに座って、そこで彼らがとった行動は、まず酒の肴としてつまみの盛り合わせ=多くの場合は刺盛=を頼み、その後、上鮨か特上鮨を頼むのだ。その行動がいまだに私に染みついているというわけ。カウンタに座りながら下駄に乗って出て来る刺身と握りを食う、というスタイルだ。
下駄にプリセットされた刺盛も上鮨も、一義的にはいわば店のスタンダードを網羅した看板商品なので失敗がないということ。もう一つの意図としては、その店のネタのグレード、鮮度、板前の調理技術、盛り付けセンスなどがその二基の下駄の上に凝縮して表現されているわけで、これらを賞味すればたちどころにその店の品位が覗えるというもの。そういったわけで、店が休みの日には彼らは偵察と称してよく鮨屋巡りをしており、そのときによく声をかけてもらった。
経理システムのオペレーションは女将さんと店のスタッフだけで回せるようにスキル移転した。この店とは就職後も付き合いが続いた。結局、会計年度でいえば5期連続で決算、確定申告を無事やり過ごした。実は手伝ったのは経理だけではなかった。土日の夕刻、また雨の日など出前の繁忙期にはよくヘルプの電話がかかって来て、裏厨房で魚や貝、海老などの下拵え、胡瓜や大根のつま作り、カンピョウの煮戻し、ご飯炊きやシャリ切り、賄い飯作りなどを手伝った。この時、板前やその弟子たちから包丁の基本的な使い方、魚介類の種類別のおろし方などを学んだ。大学の技能実習とは比べ物にならないほど実践的かつ実利的で貴重な経験をさせてもらった。
そんなこんなを思い出しつつ上握りをいただいた。どのネタも新鮮で美味しく、しっかりとした下拵えが施されている。特上握りではないので超高級ネタは入らないが、鮨屋としてのボリュームゾーンに相当するスタンダードなネタばかりなので逆にホッコリと安心できる手堅く仕上がった握り鮨であった。ランチに鮨は久し振りだった家内は銀嶺月山でほろ酔いで、
あ…、人間が駄目になったを連呼していた。
お店データ
網元 伊豆 あみもと いず
横浜市西区南幸1-9-4
電話:045-312-3640
営業:月~土:11:00~23:15、
日:11:00~23:00
定休:12/31 21時閉店・元日休み
最寄:各社線 横浜2分
※感染対策のため営業時間等が異なる場合があるため要確認
今日の一曲
スカンディナヴィアの響きもそろそろ終盤、五枚目。ポピュラーな曲で、ロシアを除く北欧では唯一メジャーとなるグリーグPコンから始まる。このPコンはアンスネス/キタエンコ/ベルゲン・フィルということで、録音は1991年、なんとアンスネス21歳の時の演奏。これは割と名演奏とされているもので、他からも別のカップリングでリリースされていたりする(例えば
VirginのVirgoシリーズなど)。
(MusicArena 2009/6/8)
今週の珈琲
我が家の定番、ガテマラ・ピーベリー。
数か月前のセールで安く仕入れていたが冷凍庫の底に堆積してしまい日の目を見るのが遅くなった。豆の特性等は以下の末尾を参照のこと。
(豆工房 コーヒーロースト 白楽店)
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