Debussy: Préludes du 1er Livre & Estampes@Javier Perianes |

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Debussy:
Préludes, Livre 1
Ⅰ. Danseuses de Delphes. Lent et grave
Ⅱ. Voiles. Modéré
Ⅲ. Le vent dans la plaine. Animé
Ⅳ. Les sons et les parfums tournent dans l'air du soir. Modéré
Ⅴ. Les collines d'Anacapri. Très modéré - Vif
Ⅵ. Des pas sur la neige. Triste et lent
Ⅶ. Ce qu'a vu le vent d'ouest. Animé et tumultueux
Ⅷ. La fille aux cheveux de lin. Très calme et doucement expressif
Ⅸ. La sérénade interrompue. Modérément animé
Ⅹ. La Cathédrale engloutie. Profondément calme (Dans une brume doucement sonore)
Ⅺ. La danse de Puck. Capricieux et léger
Ⅻ. Minstrels. Modéré (Nerveux et avec humour)
Estampes
Ⅰ. Pagodes. Modérément animé
Ⅱ. La soirée dans Grenade. Mouvement de habanera
Ⅲ. Jardins sous la pluie. Net et vif
Javier Perianes (Pf)
ドビュッシー:
前奏曲集 第1集(全12曲)
1. デルフィの舞姫
2. ヴェール(帆)
3. 野を渡る風
4. 夕べの大気に漂う音と香り
5. アナカプリの丘
6. 雪の上の足跡
7. 西風の見たもの
8. 亜麻色の髪の乙女
9. とだえたセレナード
10. 沈める寺院
11. パックの踊り
12. ミンストレル
版画(全3曲)
1. 塔(パゴダ)
2. グラナダの夕べ
3. 雨の庭
ハヴィエル・ペリアネス(ピアノ)
ファヴィエル・ペリアネスについて
銀座・王子ホールのWebページによくまとまっているバイオグラフィーが載っていたので、以下に引用させていただく。
ハヴィエル・ペリアネス(ピアノ)

ダニエル・バレンボイム、リチャード・グード、アリシア・デ・ラローチャなどのピアニストから教えとインスピレーションを受けており、バレンボイムのテレビでのマスター・クラス・プロジェクト“バレンボイム・オン・ベートーヴェン”に参加。その様子は、DVDに収められEMIクラシックスからリリースされている。最近ではバレンボイムの指揮でベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」のソリストを務めた。
これまでにハエン国際コンクール、ハシント&イノセンシオ・ゲレッロ財団国際コンクールで優勝。以後、英国、ドイツ、イタリア、ポーランド、ロシア、フランス、カナダ、アメリカ、中国、南米などに演奏旅行を行っている。ロリン・マゼール、ダニエル・ハーディング、アンドレイ・ボレイコ、フリューベック・デ・ブルゴスなど世界の指揮者たちと共演。08年9月には、クリスチャン・ツメルマンの代理でソリストを務め大成功を収めたばかり。室内楽ではボロディン・カルテットと共演している。

前奏曲集 第1集

最初のデルフィの入りはロー・テンポでかなり静かだ。そして滑らかで舐めるような打鍵は相当に繊細、最後まで冷静に展開。次の帆は前衛的で、従来の多くの演奏ではその不協和的な響きを殊更にハイライトするような基調があるが、ペリアネスは温度感を低めに維持したままゆっくりトレースする。野を渡る風はやや速めのパッセージを羽音のように微細に紡ぐ。
前半の頂点の一つとなるのが4曲目のLes sons et les parfums tournent dans l'air du soir(夕べの大気に漂う音と香り)。この一幅の絵画のような名作をどう弾くかでブック1の演奏価値が決まると言っても過言ではない。ペリアネスの描き方は極めて写実的でありながら微細、しかし変な抑揚は挟まずナチュラルに弾き進める。これは良い。このところ女流でも鋭角的な素晴らしすぎる演奏、例えばリシッツァやモーゼルなどに慣れた耳には非常に心地よく、乾いた砂に水がすっと浸み込むような気分をもたらしてくれる。それだけソフトで空気感、というか気配感を醸していて、まさに大気なのだ。他の優秀録音は確かに明媚なのであるが、それは個体であったり、あるいは液体の質感なのかもしれず、ペリアネスは確かに気体の漂う様子を描いている。
エマールに雰囲気が似た洒脱なアナカプリを経て雪の上の足跡に至ると、これは技巧的にはメジューエワとの比較とならざるを得ないが、空間、つまり無音から単音の打鍵、サスティン、そして自然減衰する音価の妙味がしっとりと表現されている。雪が積もったところは吸音が強くて非常に静寂なのだが、それをまさに想起させられる静かでエナジー感の低い表現。名曲、亜麻色の髪の乙女。非常に女性的で、ペリアネスの方が女流的と言えるかもしれないシンプルで優美、ソフトな弾き方。例えば、尖鋭的な田中希代子とは対角にあるアプローチ。続くセレナードは一転し洒脱である種デモーニッシュ、独特の風情はグヴェターゼの語法に似たところがある。が、ペリアネスの方が更に角が取れて刺激が少なく、それでいてモーションが大きいのだ。
後半の山である沈める寺院。堂々たるユニゾン、そして、やはり空間感、パウゼの取り方とサスティン、減衰の美しさが印象的。この間の取り方は佐々木宏子が弾くプレイエルが発した一種独特の香気に似たものが漂って来るのである。もちろんペリアネスの打鍵には生硬さは微塵もなく、とても滑らかかつ穏健なものだ。全12曲のブック1を締めくくるミンストレルでペリアネスの心が良い意味で解放される。デモーニッシュで非和声中心のこの楽しくも可笑しい曲を超絶技巧を以って愉快に弾き倒している。
版画
まさに絵画的な全3曲。バリ島のガムランの調性に規範を求めたとされている五音音階が特徴的なオリエンタルな風情のパゴダは立派で太い表現。この太さはメジューエワのフラット基調の弾き方に似てはいるが更にふくよか、ふんわりしている。明晰で彫りがくっきり、しかもフォーカスが細く絞られたブレハッチなどとは真逆なアプローチなのだ。
グラナダの夕べ。朧気で危うい雰囲気を漂わせるハンガリアン・スケールが特徴的。なんともイスパニアなのだ。だが、それもそのはずで、ペリアネスはスペイン土着の人。熱き心は消せないということか。
最後の雨の庭。全音音階がその全ての特徴を象るといってよいこの名曲。クロマティックのトレモロをモチーフとして雨粒を点描画のようにドットで表現する離散的な跳躍和音は空疎で静謐な背景に跳ねて飛び回る。胸の空くような心の飛翔を示しつつも、ペリアネスは隣接する音価の殆ど全てを連綿と繋げてみせる。これは誰の表現にも全く似ていない孤高のドビュッシーだ。
比較試聴に用いた過去の優秀リファレンス盤
プレリュード・ブック1:






版画:

録音評
Harmonia Mundi HMM902301、通常CD。録音は2018年7月、ベニューは定番、ベルリンのテルデックス・スタジオ。音質は、ハルモニア・ムンディとしては非常に変わっていてナローレンジで、最初に針を下ろしたときに我が家のオーディオ・システムが壊れてしまったかと不安になりラインケーブルやスピーカー配線などを点検したほど。それでも改善はしなかった。おまけに、プツプツと非定期に小さなノイズが乗る。ここにきて個別の装置、特にSACDPであるAccuphase DP-85が遂に逝ってしまったかと訝った。
が、それはおそらく杞憂で、これはハルモニア・ムンディの気の利きすぎた演出だ。一聴するとナローレンジに感じるが、よくよく聴くと帯域内のリニアリティは十分確保されていて上も下も必要なファンダメンタルは捉えられている。そのうえで確信犯的にスクラッチノイズを模したプチプチ音をミキシングで重畳しているのだ。そう、これはアナログのLPレコードの音質を再現したものなのだ。LPレコードのスクラッチノイズは我々古いオーディオファイルの仇であり、その撲滅のためにいかに粉骨砕身努力したことか。しかしながら、この偽造スクラッチノイズの存在に気が付く人、また往時の実物のノイズを知っている人は現代にあってどれほどいるのであろうか。

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