R.Strauss: Aber der Richtige..@Arabella Steinbacher/Lawrence Foster,WDR SO. |
https://tower.jp/item/4784755/
Richard Strauss: 'Aber der Richtige' / Violin Concerto & Miniatures
Violin Concerto in D minor, Op.8
1. Ⅰ. Allegro
2. Ⅱ. Lento, ma non troppo
3. Ⅲ. Rondo. Presto
4. Romanze F Maj, TrV 118 (arr.for Vn & Orc)
5. 5 Piano Pieces Op.3-4 A-Flat Maj Allegro molto (Arr.P.von Wienhardt for Vn & Orc)
6. Acht Gedichte aus 'Letzte Blätter', Op.10-1, Zueignung (Arr.for Vn & Orc)
7. Lieder(3), Op.29-1, Traum durch die Dämmerung (Arr.for Vn & Orc)
8. Vier Lieder Op.27-2, Cäcilie (Arr.for Vn & Orc)
9. Fünf Lieder, Op.41-1, Wiegenlied (Arr.for Vn & Orc)
10. Arabella: Aber der Richtige, wenn's einen gibt (Arr.P.von Wienhardt for Vn & Orc)
WDR Symphony Orchestra, Lawrence Foster(Cond)
Arabella Steinbacher (Vn)
リヒャルト・シュトラウス(1864-1949):
(1)-(3)ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.8(1882)
(4)ロマンス ヘ長調(1883)
(5)5つの小品 Op.3より第4番 変イ長調『スケルツィーノ』(1881)
(6)8つの歌 Op.10より第1番『献呈』(1885)
(7)3つの歌 Op.29より第1番『たそがれの夢』(1895)
(8)4つの歌 Op.27より第2番『ツェツィーリエ』(1894)
(9)5つの歌 Op.41より第1番『子守歌』(1900)
(10)歌劇『アラベラ』 Op.79(1933)より“私にふさわしい人が…"
※(5)(10)ペーター・フォン・ヴィーンハルト編曲
アラベラ・美歩・シュタインバッハー
(ヴァイオリン;1716年ストラディヴァリウス「ブース」(日本音楽財団貸与))
ローレンス・フォスター(指揮)、ケルンWDR交響楽団
このアルバムについて
ペンタトーンのプレスリリースがあったので以下に拝借しておく。
This album is violinist Arabella Steinbacher's tribute to the favourite composer of her family household. The music of Richard Strauss has played a crucial role throughout her life. As great Strauss lovers, her parents named her after the main character of Strauss's opera Arabella, and the family house was filled with Strauss melodies, often sung live by famous singers accompanied by Steinbacher's father, who was a solo-répétiteur at the Bavarian State Opera in Munich.
The album starts with a piece that Strauss originally conceived for violin and orchestra, the rarely-performed Violin Concerto in D minor, composed when he was still a teenager. Two other early instrumental works – the Romanze (usually performed by cello and orchestra) and Scherzino (an arrangement of an early piano piece) – are also featured on this album. The rest of the repertoire consists of famous Strauss songs (Zueignung, Wiegenlied, Traum durch die Dämmerung, Cäcilie), "sung" on Steinbacher's violin. The apotheosis of this highly personal programme is Steinbacher's rendition of "Aber der Richtige…", the celestial duet from Arabella. Arabella Steinbacher, a multiple award-winner with an extensive PENTATONE discography, is accompanied by the WDR Symphony Orchestra, conducted by Lawrence Foster.
このアルバムは、バイオリン奏者のアラベラ・シュタインバッハーが、彼女の家族が愛してやまない作曲家、即ち、R.シュトラウスに捧げたものだ。R.シュトラウスの音楽は、彼女の今までの人生を通じて重要な役割を果たしてきた。R.シュトラウスの熱烈な愛好家である彼女の両親は、R.シュトラウスの高名なオペラ「アラベラ]の主人公の名に因んで彼女のファーストネームをアラベラと名付けたといい、当時から彼女の家はR.シュトラウスのメロディーで文字通り満たされていたそうだ。それは、バイエルン国立歌劇場のsolo-répétiteur(要するに専門伴奏者:コレペティトール)を務めていた父親が仕事で顔見知りだった著名歌手たちを自宅に招いては歌わせていたということだったようだ。
このアルバムは独奏ヴァイオリンとオーケストラ伴奏から成っていて、中核はわりと演奏機会が少ないニ短調ヴァイオリン協奏曲となる。これはR.シュトラウスが10代の頃の習作的な作品といえようか。このアルバムには、ロマンス(通常は独奏チェロとオーケストラ版)とスケルツィーノ(ピアノ曲の編曲版)の2つの初期の器楽曲もフィーチャーされている。あとは、有名なシュトラウス歌曲(献呈、たそがれの夢、ツェツィーリエ)で構成され、これらはシュタインバッハーのヴァイオリンにより文字通り歌われる。この非常に私的なプログラムの極致は、シュタインバッハーの演出による「私にふさわしい人が…」で、これは二人のアラベラが天上から奏でるデュエットなのだ。アラベラ・シュタインバッハーはペンタトーンから多数の優秀作をリリースしており、今回はローレンス・フォスター指揮/WDR交響楽団との共演となる。
シュタインバッハーのファーストネームであるアラベラがR.シュトラウスの歌劇の登場人物に因んでいたとは初耳だった。それで、R.シュトラウスにトリビュートしているというわけだが、私にとってはトリビアだった。
アラベラの録音は今まで何枚かは聴いてきたが、もちろん全アルバムを蒐集しているわけではない。なお、彼女は最初はオルフェオに専属していたが途中でペンタトーンに移籍。使用楽器は、以前にユリア・フィッシャーが使っていたストラディバリ「Booth」を引き継いでいる。
Vnコン ニ短調Op.8
R.シュトラウスがまだ10代の頃の習作とされる、彼の唯一のVnコンはかなり本格的な構造を持つ大規模な作品。
1楽章はアレグロ、ソナタ形式。わりと悲愴な第一主題は短調で開始するが、第二主題は長調へ転調し華やいだ雰囲気も。アラベラのVnは自由闊達だが羽目を外さずレイショナル。長大ではないカデンツァが後半部の導入部に入るが、美しくて霊妙なポルタメントが印象的、実に滑らかで無歪なA線だ。短調の第一主題に再度移調してのリフレインからはローレンス・フォスターのバトンが疾駆感ある拍取りを主導、ホーンセクションを重層化しつつコーダへ。
2楽章はレント・マ・ノン・トロッポ指定、ト短調三部形式の緩徐楽章。憂愁を湛える主題はアラベラのVnが奏でるアリア的な嗚咽から開始。中間部では明転し伸びやかに歌うも再度暗転、しっとりと閉じる。
最終3楽章はプレスト指定の二長調、ロンド形式。アラベラの駆る非常に速い三連符の高音域スケールが細かく律動して開始。諧謔味を湛えた楽しいフィナーレでアラベラのVnはとても闊達、しかも情感を十二分に高め、ダブルストップでは少々高揚する場面もあるが一定以上は制動が効いていて破綻に至ることはなく、ぎりぎりの線で弾き進めていく。情感と理性を巧妙に平衡させるというアラベラ特有のソリューションが光る。
ロマンス ヘ長調
このアルバムのもう一つの柱がこれ。元々はVcと管弦楽のためのロマンスだが、VcをVnに置換した編曲版。地味で純朴な旋律が特に美しく、オペラ書きだったR.シュトラウスらしいアンダンテ・カンタービレが静かに、しかし朗々と響き渡る。VnはVcよりオクターブ上になるので重心が高くなり、従ってしっとりさを醸すには難易度は高いと思われる。が、アラベラの現在の表現技巧と充実した精神状態を反映するかのように実に堂々たる弾きっぷり、情感表現である。聴き応えがする。
スケルツィーノ~アラベラ
あとは歌曲などの小品からのトランスクリプションが並んでいる。いずれも落ち着いていて肉声で歌われるアリアの如く感情の襞が深め、そして当然だがアラベラのVnは非常に巧い。詳細は割愛。最終曲が歌劇アラベラ Op.79より“私にふさわしい人が…"で、この曲が彼女のファースト・ネームの由来になった作品だそうだ。ここにある歌曲の中で最もモデレートで遅いテンポの曲。彼女の両親が生まれたばかりのアラベラの穏やかな将来を願い、思いを籠めて名を借用したのが何となくわかる平和で静謐、幸福感を湛えたメロディーだ。
録音評
PentaTone Classics PTC5186653、SACDハイブリッド。セッション録音で2017年5月23~24、26~27日、ベニューはKölner Philharmonie, Germany(ケルン・フィルハーモニー、ドイツ)とある。軽量でフローラルな音場空間が特徴的で、明るく華やいだ印象の音調となっている。さりとて帯域ごとの強調感は殆どなく低域から高域までブロードで稠密だ。SACDレイヤーの解像度は驚異的で、boothの弦のディテールを余すところなく再現している。最近のペンタトーンの音質は更に進化している。音楽ファン/オーディオファイルを問わず広くお勧めできる一枚。
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