Mendelssohn: Sym#2 'Lobgesang'@Andrew Manze/NDR RPO |

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Mendelssohn: Symphony No.2 in B flat major, Op.52 'Lobgesang'
Ⅰa. Sinfonia. Maestoso con moto
Ⅰb. Allegretto un poco agitato
Ⅰc. Adagio religioso
Ⅱa. Alles was Odem hat
Ⅱb. Lobe den Herrn meine Seele
Ⅲ. Recitative. Saget es, die ihr erlöst seid - Er zählet unsre Tränen
Ⅳ. Sagt es, die ihr erlöset seid
Ⅴ. Ich harrete des Herrn
Ⅵ. Stricke des Todes hatten uns umfangen - Wir riefen in der Finsternis
- Die Nacht ist
Ⅶ. Die Nacht ist vergangen
Ⅷ. Chorale. Nun danket alle Gott - Lob, Ehr' und Preis sei Gott
Ⅸ. Drum sing' ich mit meinem Liede
Ⅹ. Ihr Völker, bringet her dem Herrn
NDR Radiophilharmonie, NDR Chor, WDR Rundfunkchor Köln
Andrew Manze
Anna Lucia Richter (sop), Robin Tritschler (ten), Esther Dierkes (sop)
メンデルスゾーン(1809-1847):交響曲第2番 変ロ長調『賛歌』Op.52
第1部
第1曲 シンフォニア
第1楽章 マエストーソ・コン・モート-アレグロ
第2楽章 アレグレット・ウン・ポコ・アジタート
第3楽章 アダージョ・レリジオーソ
第2部
第2曲 a 合唱「すべての息づく者よ」
b 合唱「主を称えよ、我が魂よ」
第3曲 アリア「汝ら主に贖われし者は言え」
第4曲 合唱「汝ら主に贖われし者は言え」
第5曲 ソプラノと合唱「我は主を待ち焦がれ」
第6曲 アリア「死の絆は我らを囲み」
第7曲 合唱「夜は過ぎ去れり」
第8曲 合唱「いまこそ皆、神に感謝せよ」
第9曲 アリア「我ゆえに我が歌をもて」
第10曲 終末合唱「汝ら民よ、主に栄光と権力とを帰せよ!」
アンナ・ルチア・リヒター(ソプラノ)、エスター・ディールケス(ソプラノ)
ロビン・トリッシュラー(テノール)
北ドイツ放送合唱団、ケルン放送合唱団
アンドルー・マンゼ(指揮) ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団
このアルバム、及び奏者について
5月当初に2018年度MusicArena Awardsの選定を終えた以降、二カ月以上CD試聴記を書いていなかった。音楽をゆっくり聴いて思索に耽るような時間がとれないほど色んな事があった。また、だいいち素材としてのCD/SACDアルバムが完全に枯渇したまま数か月を過ごし、その間は過去録音をトラック単位で細々と聴く程度しかできなかった。
メンデルスゾーンは生涯に交響曲を5つ書いた。個人的には彼の交響曲作品は端正で割と好きなのだが、世の中的にはいずれもあまり有名ではない。この作品は作曲順では4番目にあたるのが、出版順位では2番目。2~3管編成のフルオケに加えてソプラノとテノール独唱、混声4部合唱を伴う巨大編成を要する。こと日本国内ではこの種の大編成曲の場合、ベートーヴェンの第九を唯一の例外として、ほぼほぼ演奏機会はない。メンデルスゾーン2番だけでなくマーラーの3番や8番(通称=千人の交響曲)も殆ど演奏機会はない。
1840年6月、グーテンベルクの印刷技術完成400周年記念祝典の開催に先立ち、ライプツィヒ市がメンデルスゾーンにこのセレモニー向けの祝典曲の作曲を委嘱し、出来上がった作品のうちの一つがこれ。大きくは二部構成を取り、複数の既存作品から範をとって合体を繰り返しながら構想が練られた。前半の第一部は3つの楽章から成っており、ここは純器楽編成によるシンフォニアと名付けられ交響曲の様相を呈している。第二部は副題のLobgesang、即ち讃歌とある通り、祝典的なカンタータとなっており、ここのテキストはマルティン・ルターにより完成された旧約聖書のドイツ語バージョンを規範としている。前半の3つの楽章は後半のカンタータへの序章ないし前奏曲という位置付けだ。この曲の作曲と編曲の経緯は割と複雑で、その辺の事情はWiki等に詳しいので興味ある場合はそちらを参照のこと。
本作品の総指揮を執ったアンドルー・マンゼだが、本来はバロック・ヴァイオリンの名手。彼が率いたBBCスコティッシュ交響楽団をバックにナタリー・クラインが弾いたサン=サーンスのVcコン#1は出色の出来であり、2014年のMusicArena Awardsのセミ・グランプリに選定している。彼の経歴は古いながらトッパンホールのページに簡潔に出ていたので以下に拝借し、末尾には現況情報も補筆しておく。
Andrew Manze - Vn, Cond
アンドルー・マンゼ
ヴァイオリニストとしては1610年から1830年までの音楽のスペシャリストとして知られ、指揮者としてはバロック音楽から古典、あるいは19世紀から20世紀音楽にまでいたる、幅広い年代の音楽のエキスパートである。演奏活動以外にも教育活動、楽譜の校訂、著作業などにも携わっている。ケンブリッジ大学で古典文学を学んだ後、英国王立音楽院でヴァイオリンをサイモン・スタンデイジ、マリー・レオンハルトに師事。
演奏家としては、イングリッシュ・コンサートと共に古典派のレパートリーを研究しており、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲、管弦楽曲、オラトリオ編曲作品などを手がけている。もちろんバロック音楽の演奏も引き続き行っている。指揮者としては1996年から2003年までエンシェント室内管弦楽団の副指揮者、03年から07年までトレヴァー・ピノックの後任者としてイングリッシュ・コンサートの芸術監督を務める。
06/07年のシーズンよりスウェーデンのヘルシングボリ交響楽団の首席指揮者を務めた。彼はスウェーデン室内オーケストラのレジデンス・アーティストでもある。客演指揮者としても一流のオーケストラと良い関係を持っていて07/08シーズンにはバーミンガム交響楽団、マーラー室内オーケストラ、そしてミュンヘン・フィルを初めて振った。
録音では、ハルモニア・ムンディUSAと専属契約をし、イングリッシュ・コンサートやエンシェント室内管弦楽団とのCDリリースしており多くの賞を受賞している。リチャード・エガーとの長期間にわたるコラボレーションは高い評価を得ており、彼らの録音はこれまでにドイツ・レコード批評賞、グラモフォン・アワードを受賞。現在は英国王立音楽大学の客員教授を務める。
ベーレンライターおよびブライトコップフ&ヘルテル社の新しい校訂、モーツァルトとバッハのソナタおよび協奏曲集にも貢献している。2011年にショック賞を受賞。
2014年、ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団(NDR Radiophilharmonie)の首席指揮者に就任。
シンフォニア
私はこの曲をかなり昔、それも相当若い頃に聴いて感動していた時期があった。というのは亡父がたまにLPレコードでこの大作を、円盤を絶え間なく交換しつつ聴いていたことがあった。その頃には、日本国内では年末恒例となっているあの祭事に中2~高2までコンスタントに出ていてバリトン・パートを歌っていた。大学から社会人になった頃にも聴いていた。その後、カラヤンVPOとアバドLPOの復刻リマスタ盤を買っていたはずだが、今は見当たらなかった。どこへしまったのか・・。
この曲は前述の通り前半の三つの楽章がオケによるシンフォニー=交響曲、作家自身の命名はシンフォニアだった。それは以下のスコアの冒頭に示されている通り。この作品は長大なだけにメンデルスゾーンが新規で全編を書き下ろしたわけではなく、過去作品から特徴的な動機や祝典の趣旨に合致するような主題を引用、変形しつつ周到に作曲されたものだ。

2楽章はスケルツォに相当するパートで諧謔味がある。が、独特の様式美と優雅さが感じられるロンドに近い気風かもしれない。ちょっと悲しげだが深刻な進行ではない。中間部の転調には長調の冒頭動機が流用され、勇気が鼓舞されつつコーダへ。3楽章はアダージオ指定の緩徐楽章となっている。3楽章形式ではたまに最終楽章の始まりを緩徐部としているケースは見られることは見られる。後半のピッチは少々早まり徐々に強奏に入り、再び緩徐かつ微弱化しコーダを迎える。
カンタータ
全9曲のカンタータで神への賛美を歌い上げる壮大な連曲歌集といえる。全部紹介するには長大なので勘所だけ触れる。第2曲は前半(a:すべての息づく者よ)と後半(b:主を称えよ、我が魂よ)から成る。a部は冒頭動機のリフレインが数度続き晴れやかで力強い讃美歌混声合唱。主題が2つ出現し、それぞれが連関しつつ進行するいわば2声のリチェルカーレの様相を呈する。明転して冒頭動機がトゥッティを迎え、連続しb部が始まる。ソプラノのアリアに混声合唱が加わり優美に優雅に歌い上げられる。
第6曲はアリア「死の絆は我らを囲み」で、テノールの独唱に厳かな管弦楽が重畳され、暗くやるせない闇と絶望を連綿と歌って行く。後半からは冒頭動機を断片的に混ぜることで光の兆しを感じさせつつ一瞬のパウゼ。急にソプラノが冒頭動機を高らかに独唱し、次の第7曲「夜は過ぎ去れり」へと途切れず連続して突入していく。ここがメンデルスゾーンがカンタータ部でもっとも苦心した部分ではなかろうか。第7曲は明媚な二長調で、最初から冒頭動機の混声合唱+器楽による総奏で、非常に絢爛かつ豪壮な迫力、パワーが漲る。冒頭動機は数度の変形と移調を繰り返しながら、そして男声合唱、女声合唱がフーガ的な輪唱を掛け合いながら、堂々としたコーダを結ぶ。
第10曲の終末合唱「汝ら民よ、主に栄光と権力とを帰せよ!」。割と厳しい短調で始まり、カンタータというよりもミサ曲、いやレクイエムに近い印象の深刻さだ。付点のリズムは冒頭動機を援用したもので力強いが短調ということで悲嘆な様子が勝る。~を帰せよ! というからには人間の傲慢さを戒め神への帰依と信仰の秩序を取り戻せ、という意であろうか。中間部からは対位法表現を採用し、4声のフーガ、あるいはリチェルカーレという風情の重層感ある展開。コーダでは再びTb(トロンボーン)が独奏で登場し、冒頭動機を高らかに吹くと、それに呼応し、Alles, was Odem hat, Lobe den Herrn meine Seele!(すべての息づく者よ、主を称えよ、我が魂よ!)と独唱・合唱全員が高らかに歌い上げ、この壮大なカンタータが閉じる。いやいや、対極にある、あの著名曲との差異が歴然、メンデルスゾーンのこの作品は簡素であって媚び諂いのない素晴らしい讃歌なのだ。現代的で華美な演出を排したマンゼの解釈・演奏も出色だ。
録音評
PENTATONE PTC5186639、SACDハイブリッド。録音は2017年6月15~16日、ベニューはGroßer Sendesaal des NDR Landesfunkhaus Hannover, Germany(NDR ハノーファー、放送局スタジオ大ホール=グロッサー・ゼンデザール)。客を入れたライブ収録とのことだが客席ノイズは皆無でセッション録音と聞き違えるくらいS/N感が凄い。全体の調音はペンタトーンの特徴である超高解像度をある程度抑制したモデレートなもので、器楽音や声楽パートの輪郭を極度に強調したような痕跡は全くない。音場展開は前後左右に広大で、ゼンデザールのアンビエントの豊かさ、空間感が存分に捉えられている。かといって音像定位やディテールが曖昧かというとそれは微塵もなく、よく聴くと細部に至るまで確実に結像している。オーディオファイル的な微細な聴き方を楽しむには不足感があるかも知れないが音楽と融和した素晴らしい調音だと思う。CDレイヤーとSACDレイヤーの差はあって、明らかに後者の方が音が良い。CDレイヤーは少々硬質でアンビエント成分が後退する傾向だ。
※ペンタトーンのサイト:ここでちょっとだけ試聴できるようだ。

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