CHIKI CHIKI & TAN TAN@吉田町 |
都内の職場から関内へと向かう
というのは、2011年から私たちが家族ぐるみで懇意にしてきたカジュアルなイタリアンが週末を以て営業終了するとの報に触れ、是非とも最後にあの美味なる逸品たちを味わって舌と脳裏に焼き付けようと思った次第だから。先週の火曜、店に電話を入れて金曜のディナーを二名で予約した。その時には、閉店直前であり食材やお酒などの追加発注は止めているため、週末時点での残り具合が分からず、従って希望に沿えるほどの料理は出せないかもしれない、と言われたが、それでもということで一席リザーブした。私も家内も都内でフルタイム勤務しているため夜7時シャープに関内の店に着くのは厳しかったがなんとか滑り込んだ。
まずは生ビール
夜の7時過ぎはまだ店内は混み合っておらず、厨房前のカウンタ及び丸テーブルに常連客が座ってシェフたちと話をしながらワインなどを嗜んでいる程度だった。しかし、7時半を過ぎると我々と同様に閉店を惜しむ常連客のグループがどんどん入店してきてあっという間に満席となった。一挙に客が入ってオーダーが集中したため厨房もフロアもてんてこ舞いだ。
ビールを飲みながらママさんと話していると料理のサーブやら追加オーダーやらで忙しく呼ばれていくがまた戻って来て話し込むということを間欠的に繰り返していた。テナントとして入るビル・オーナー、また家賃の話し、営業時間が長くてシェフやスタッフが長年にわたり疲弊していること、厨房設備更新の投資額のこと等々、閉店に至る経緯は単純ではない。
アンティパストの最初は前菜盛り合わせ
二種か三種が選べるが、我々二人で食べきれそうな二種でお願いした。
▼シュリンプとブロッコリーのツナ入りプッタネスカ・ソース
▼鶏と色々きのこの青胡椒ソース
プッタネスカは今までのランチのオードブルでもよく出たし、時にこのトマトベースのソースでアレンジしたパスタも頂いたものだ。シュリンプとプッタネスカ・ソースの相性は抜群。鶏肉もシェフが得意のジャンルで、今回は青胡椒とのことでちょっと青臭くて僅かに辛味が感じられる絶妙な加減が鶏とシメジなどに合っていてとても美味しい。
ボッリート=イタリア風おでん
前回いただいてとても美味しかったボッリートを再び。
中型の丼でサーブされたボッリートだが、蕪は思っていたよりも巨大で、牛蒡も太いものが二本付いていた。株は四半分に、牛蒡はそれぞれ半分ずつにナイフを入れた。それでも一口で頂くには大きいくらいだ。しっかりとした旨味を湛えたブイヨンが食材の芯にまで浸透していて味は折り紙付きである。実に美味しい。例の三種の薬味を塗り付けて風味を楽しむ。
お酒をチェンジ
お代わりした生ビールも尽き、ワインに行くことに。
アンティパストが更に続く
更に肴を頼んでいく。
▼オレンジと水牛のモッツアレラチーズのカプレーゼ
▼アサリ、ホンビノス、ムール貝のガーリックバター パン焼き
▼モッツァレラチーズが入ったライスコロッケ
▼CHIKI CHIK特製 骨付き肉厚スパイシー・スペアリブ
カプレーゼと言えばトマトとモッツァレラと決まっているが、これは何と完熟オレンジで挟んだもの。甘味がどう作用するか訝ったが杞憂だった。これは実に美味しくてフルーツトマトの軽量な甘みに通じる。モッツァレラとの相性も抜群だ。手に入ったその季節の貝類で作るパン焼きはこの晩はアサリ、ホンビノス、ムール貝だった。旨味が極大化され最高。
更に、前回オーダーしてとても感心したライスコロッケがサーブされる。揚げ立ててじりじりと音を立てているところにナイフを入れ、添え付けの自家製トマトソースを付けていただく。ご飯粒がもっちりしているところに素朴なチーズの塩気が馴染んでなんとも言えない滋味を醸している。ここにトマトソースを少々塗ると爽やかな酸味と仄かな甘みが加わり絶品。
そして、チキタンの特製のスペアリブが登場。運ばれてくる途中からクミンやシナモン系といったスパイスの芳香が伝播してくる。詳細は分からないが、予め豚肋肉には割としっかりした下味が付いていて芳醇な味わいだ。そこにスパイス、ハーブも加わって複雑なフレーバーを形成する。上から振りかけたパセリの微塵切りが僅かな苦みを演出。完璧なスペアリブだ。
プリモにはパスタを一皿をオーダー、シェアする
ずっとアンティパストをいただいていたが、やっとプリモに到達。
▼生ハムと揚げカブのトマトラグーソース スパゲッティ
セコンドにはこの日は鯛ソテー、及び牛の座布団のソテーが用意されていたが、いかんせん満腹となってしまい、やむなくプリモ終了時点で諦めることに。ドルチェとコーヒーも遠慮し、ママさんとひとしきり話し込んだ。そしてシェフには今まで美味しい料理の数々をサーブしてくれたことに謝辞を述べ、再び店を開くなら必ずや馳せ参じることを約束して店を後にした。
もうこの超絶美味なイタリアンは当面味わえないのが実に寂しい。
お店データ
dining cafe CHIKI CHIKI / work shop TAN TAN
横浜市中区吉田町5-1 第一吉田ビル
電話:045-260-2670
営業:火~木:12:00~26:00
金~土:12:00~26:30
日曜/連休の最終日 ~22:00
定休:月曜(月曜が祭日の場合は翌火曜)
最寄:JR、市営BL 関内4~5分
※2019年6月15日 閉店
今日の一曲
モーツァルト:幻想曲 ニ短調K.397(385g)。ソリストはエミール・ギレリス、内田光子。両者は違う譜面を弾いているので厳然たる比較ではないが、以下ご参考。ギレリスの幻想曲は固く遊びのないソリッドステートの世界だ。対する内田の幻想曲はまさに幻想的に、変幻自在に音符を操っている。内田は休符にフェルマータを掛けている、という表現が妥当か否かは分からないが、「無」の部分を非常に大切に弾いている。(写真はエミール・ギレリス)
(MusicArena 2006/12/18)
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