Sibelius: Vn-Con Op.47 Etc@Ayana Tsuji,G.Guerrero/Montréal SO |

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Ayana Tsuji – Live in Montreal
Sibelius, Saint-Saëns, Stravinsky
Sibelius: Violin Concerto in D minor, Op.47
Ⅰ. Allegro moderato (Live)
Ⅱ. Adagio di molto (Live)
Ⅲ. Allegro, ma non tanto (Live)
Saint-Saëns: Introduction & Rondo capriccioso, Op.28
Stravinsky: Duo concertant
Ⅰ. Cantilène (Live)
Ⅱ. Eclogue 1 (Live)
Ⅲ. Eclogue 2 (Live)
Ⅳ. Gigue (Live)
Ⅴ. Dithyrambe (Live)
Ayana Tsuji (Vn), Philip Chiu (Pf)
Orchestre symphonique de Montréal, Giancarlo Guerrero
辻 彩奈/シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ~ ライヴ・イン・モントリオール
1) シベリウス: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47
2) サン=サーンス: 序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 Op.28
(ピアノ・リダクション:ジョルジュ・ビゼー (ジノ・フランチェスカッティ版))
3) ストラヴィンスキー: 協奏的二重奏曲
辻 彩奈(ヴァイオリン)
ジャンカルロ・ゲレロ(指揮)
モントリオール交響楽団(1)
フィリップ・チウ(ピアノ 2-3)
辻 彩奈、このアルバムについて
ワーナー・ジャパンにバイオグラフィーがあったので以下に拝借しておく。
辻 彩奈(ヴァイオリン) Ayana Tsuji, Violin
1997年岐阜県生まれ。2016年モントリオール国際音楽コンクール第1位、併せて5つの特別賞(バッハ賞、パガニーニ賞、カナダ人作品賞、ソナタ賞、セミファイナルベストリサイタル賞)を受賞。3歳よりスズキメソードにてヴァイオリンを始め、10歳時にスズキテンチルドレンに選ばれ、東京、名古屋、松本にて独奏を実施。2009年には全日本学生音楽コンクール小学校の部にて全国第1位、東儀賞、兎束賞を受賞。その他国内外のコンクールで優勝や入賞の実績を持つ。
11歳にて名古屋フィルハーモニー交響楽団と共演後、多くの国内外のオーケストラと共演。これまでに、モントリオール交響楽団、チェコフィルハーモニー室内合奏団、セジョン・ソロイスツ(韓国)、シュトゥットガルトゾリステン、チェコ国立室内管弦楽団パルドビツェ、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、
横浜シンフォニエッタ、中部フィルハーモニー交響楽団、オーケストラアンサンブル金沢、セントラル愛知交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、日本センチュリー交響楽団、大阪交響楽団などと共演している。また室内楽においては、12歳にて初リサイタルを行って以降、宗次ホール、サラマンカホール、紀尾井ホールにてリサイタルを実施。チェロの堤剛、ピアノの江口玲、伊藤恵の各氏らとの共演を行っている。2017年に岐阜県芸術文化奨励を受賞。現在東京音楽大学に特別特待奨学生として在学中。
これまでに小林健次、矢口十詩子、中澤きみ子、小栗まち絵、原田幸一郎の各氏に師事。使用楽器は、NPO法人イエローエンジェルより貸与されているJoannes Baptista Guadagnini 1748である。2018年2月には、モントリオール国際音楽コンクールの模様を収録したメジャー・デビューCDをワーナークラシックス初のセンター契約第一弾アーティストとしてリリース。2018-2019シーズンには、ズービン・メータ指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団との共演(シベリウス:ヴァイオリン協奏曲)を予定している。
(WARNER MUSIC JAPAN)
衝撃的なシベリウスVnコン ニ短調Op.47
全3楽章で、非常に重厚なシベリウス唯一のコンチェルト。1楽章はアレグロ・モデラートでの入り。何とも言えない哀愁を漂わせるソロが主題を朗々と鳴らしながらオケとほぼ同時に入る。この堂々たる語り口は何なんだろうか・・。この作品の1楽章はオケが静かで、鳴っているかどうかというところで独奏Vnが長尺の旋律を奏でることから前半はカデンツァが多いと言われるが譜面上はそれはない。
純白の白鳥が大空を滑空しながら大地を俯瞰するような飛翔するかのイメージを、辻はダブルストップを駆って楽々と奏でる。これは・・。ちょっと武者震いする。1楽章は長くて飽きる場面もあるが、実は固唾を飲んで最後まで精緻に聴いてしまった。中間部での長めの真正カデンツァ。何とも雄弁で聴き惚れる。この人の操弦は巧み、また左手のヴィヴラートの襞の深さとその絶妙な周期が天才的だ。
2楽章はアダージオ・モルト指定で変ロ長調。ここは緩徐楽章に相当するが単純ではない。最初の動機はオケの総奏で入り、間髪入れず辻のVnがそれらを覆い被せるようにカデンツァ的な主題提示を行う。ちょっと謎めいた美しさを湛える独特の中間楽章だ。独奏Vnの辻の表現幅が極めて広いことを完膚ないまま受け入れざるを得ない。因みにバックのオケ/指揮が非常に巧みで素晴らしいことを申し添えておく。
3楽章はアレグロ・マ・ノントロッポの指定で変形ロンド形式と言ってよいだろう。楽想は明るくて自由、そしてちょっとメランコリックだが諧謔さがあるのでスケルツォ的とも言えようか。実に闊達かつ自由な律動が独奏/オケ双方に見られ、本当に楽しくて心が揺さぶられる構造だ。辻の独奏はオケにサーフィンよろしくじょうずに乗っていて見事なのだ。この堂々たるリズム&旋律提示はなんなんだろうか・・。驚いてしまい通勤時の行き帰りにiPodでずっと聴いていた。しかし、回数を重ねるごとに感動以外の何ものもなく、寧ろ感銘が増幅されて来るのだ。
重厚なサン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ

普通のアンサンブル作品と同様のアンダンテ指定で静かに動機部が始まるが、主題に移ると三拍子系の特異なロンド形式、即ち舞曲風の律動に乗せてテンペラメンタルな旋律がスタート。アレグロ・ノン・トロッポでの躍動が耳を奪う。
辻はどういったヴァイオリン教育を受けて来たのであろうか。私は悪い癖でそういった方向へと思索を巡らせてしまう。転調してコーダに向かうこのエキセントリックで熱い終盤、辻の分厚いボウイングが光り、糸を引くように曲は静かに閉じる。
近現代ものも完璧、ストラヴィンスキー:協奏的二重奏曲

1曲目のカンティレーネだが、入りはダブルストップの嵐でかなり重厚、かつ体力を使うであろう作品だが、中間部はアルペジオの主題とダブルストップによる叙情的な主題からなる。トリルを多用する不気味なPf=フィリップ・チウの技巧とパッションも素晴らしい。普通はこういった非和声の曲はなかなかに解釈が難しいが、辻はしっかりとした音の世界観に基づき太い構図を描く。2~3曲目はエクローグと称した題名となっている。これらもまたダブル、あるいは場所によりトリプルストップまでを駆使することを要求される。
エクローグ1はどちらかというとスケルツォ楽章と言うべき色彩感の強い発散的な曲。エクローグ2は緩徐楽章に相当するだろうが、辻のスケーリングは完璧でたおやか。4曲目ジーグは、古典的な舞曲ジーグとは大違いでストラヴィンスキーの独自表現が詰まったスケルツォ的な曲。技巧的にはかなり困難なうえ、解釈的にもどう持って行くかが悩ましい。ここがまた辻のVnの湿潤な咽び泣きがなんとも言えない。
最終曲のディテュランボスはとても静謐で不可思議な和声/非和声の混ざった曲で、高域弦のダブルストップが終始要求される曲。技巧的にも解釈的にも難しいが、なんとも言えない辻の示す威圧感と自信、そして強烈な主張が支配する瞑想的な音空間が凄いのだ。
まとめ
この人は本当に20歳代前半の若き演奏家なのであろうか。実は、もう何十年も齢を重ねて来た中堅あるいは壮年のソリストなのではないだろうか・・。そんなことを思いながら彼女の演奏を聴いている。こういった驚異的なパフォーマンスを示した若手Vnソリストとしては、日本人では五嶋みどり、諏訪内晶子、そして昨今では庄司紗矢香が印象に残るが、辻彩奈は従前の先輩である彼女らが登場した時と同じ、あるいはそれを上回るインパクトを私に与えてくれている。願わくば、単発に終わらず更なる高みを目指してずっと研鑽を積み、もっともっと色濃い演奏を聴かせて欲しいと思う。似た歳の娘を持つ親の心境もあっての願いなのだが。
録音評
Warner Classics 9029570290、通常CD。録音はシベリウス:2016年5月31日、メゾン・サンフォニーク・ド・モントリオール、サン=サーンスが2016年5月24日、モントリオール美術館、サル・ブージー、ストラヴィンスキーが2016年5月27日、同じくモントリオール美術館、サル・ブージーとある。コンチェルトの会場は広々とした気持ちの良い音場空間が拡がり、しかもS/N感が抜群で非常に静謐。オケのとても細かな音まで拾っているしちょっとオフ気味のVn独奏とのバランスもとても良い。しかし、音色は極めて暗いのだ。なんとも落ち着いていて、歴代のヴィルトゥオーゾの録音のような風格というか年輪というか、そういったものを彷彿とさせる格調高い録りかたなのだ。後半のピアノ伴奏付き演奏はホールよりかは狭い親密な空間感が漂う、これまた美しい残響を伴う場所での録音のようだが、Vnはちょっと距離感を詰めていて、辻の美しい操弦技巧がつぶさに聴かれる。両者を通じ、とても良い出来栄えの優れた録音であり、なおかつアーティスティックな音調に仕上がっている。素晴らしいのひとこと。
辻の演奏が如何に凄いかは、以下のTowerのサイトを聴けば理解できるであろう。例によりリンク切れまで貼っておく。
https://tower.jp/article/feature_item/2018/03/22/1101

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