Prokofiev: P-Sonata#6 Etc@Lika Bibileishvili |

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Prokofiev: Piano Sonata No.6 in A major, Op.82
Ⅰ. Allegro moderato
Ⅱ. Allegretto
Ⅲ. Tempo di valzer lentissimo
Ⅳ. Vivace
Ravel: Gaspard de la Nuit
Ⅰ. Ondine
Ⅱ. Le gibet
Ⅲ. Scarbo
Sibelius: Thirteen Pieces, Op.76, Excerpt
1. Esquisse
2. Etude
3. Carillon
4. Humoresque
5. Consolation
7. Affettuoso
8. Piece enfantine
9. Arabesque
10. Elegiaco
13. Harlequinade
Bartók: Piano Sonata, BB 88, Sz.80
Ⅰ. Allegro moderato
Ⅱ. Sostenuto e pesante
Ⅲ. Allegro molto
Lika Bibileishvili(Pf)
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第6番イ長調『戦争ソナタ』 Op.82
ラヴェル:夜のガスパール
シベリウス:13の小品 Op.76
バルトーク:ピアノ・ソナタ Sz.80
リカ・ビビレイシュヴィリ(ピアノ)
リカ・ビビレイシュヴィリについて

だが、タイムラインには演奏会の模様や演奏家友達と共に写る写真が時折アップされる程度であり、それ以上の情報は知らなかった。それが、一昨年末あたりからアルバム制作の話題が頻繁に掲載され、そして昨年、遂にデビュー盤がリリースされたとの報に触れた。それがこのFaraoレーベルからのチャレンジングなアルバムとなる。
まとまった日本語経歴が見当たらず、彼女の公式ホームページ及びその他から得た情報で以下、バイオグラフィーを組み立ててみた。
リカ・ビビレイシュヴィリ(Lika Bibileishvili 1988-)
グルジア(現ジョージア)出身、ミュンヘン在住の新鋭ピアニスト。1988年9月21日、バトゥミ生まれ。10歳の時、バトゥミのグルジア芸術大学でMedea Shaladze教授のピアノクラスに参加。グルジアで就学中のうちから既にアジャラ交響楽団と何度も演奏会を催し、12歳の時にはラフマニノフのPコン#1、14歳の時にサン=サーンスのPコン#2を弾きこなしていた。
2008年、彼女はドイツに渡り、国立ミュンヘン音楽舞台芸術大学のフランツ・マッシンガー教授のもとで研鑚を積む。その後、2011年からはフォルカー・ヴァンフィールド教授に師事、2014年からはピアノクラスのアンティ・シーラに師事。特にフォルカー・ヴァンフィールドは現段階でも重要な指導者であり、彼との集中的なレッスン時間は彼女の音楽性の醸成に多大な影響を与え続けている。
2015年、最上位成績=特優で修士号を獲得。その後、2016年にザルツブルクへ移ってモーツァルテウム大学大学院に進み、ピーター・ラング教授に師事。また、エリソ・ヴィルサラーゼ、ルヴィム・オストロフスキ、およびナウム・シュタルクマン(チャイコフスキー音楽院教授)のマスタークラスにも参画。なお同郷の名ピアニスト、ドミトリー・バシキーロフは彼女の並外れた音楽性、知的能力を称賛している。
リカ・ビビレイシュヴィリはユーディ・メニューインが設立したLive Music Now財団から奨学金を受けている。彼女は一連のコンサートシリーズの中でソリストとして、また室内楽メンバーの一人としても演奏機会を数多く得ており、また2013年以降は作曲家ヴィルフリート・ヒラーと集中的に協業してきている。プレス及びメディアはたびたび彼女の超絶技巧と特異なサウンドに着目して取り上げている。ミュンヘン在住。
(C)MusicArena 2019
プロコフィエフ Pコン#6:驚天動地の超ワイドレンジ
プロコフィエフが書いた9曲のPソナタの中の代表作の一つ。因みに#6~8を戦争ソナタと総称する。作曲は1940年、初演は同年4月、モスクワでプロコフィエフ自身の演奏による。伝統的にはリヒテルの演奏が規範とされており、本アルバムのライナーにもリヒテル演奏との演奏時間比較などに言及がある。解釈も演奏も難しい、近現代ピアノ独奏曲の急先鋒の一つと言ってよい。

3楽章は一転、短調で暗澹たる曲想。ここは音価を伸ばし気味に悲劇性を演出する演奏が多いが、リカは割と淡々とやり過ごす。最終4楽章ヴィヴァーチェ指定はロンド形式。ここはリカがまたもや驚きの鮮鋭さを見せつける高速パートが随所に登場。なお、この4楽章は冒頭1楽章とのドッペルを形成し、1楽章で提示された主題とパッセージが何度も再現し変奏されるので局所域で形成される一種の循環形式ともとれる。鋭敏で非常に強い芯を突くリカのタッチと解釈は脳裏に焼き付くほど強烈で斬新。
夜のガスパール、クラヴィーア・シュトゥックOp.76
冒頭のプロコ#6で鋭敏かつソリッドなピアニズムを披露したリカだが、フランス印象楽派=ラヴェルと北欧楽派=シベリウスもまた美しくメロウでソフトタッチに弾き得ることを示すための選曲と言える。冒頭オンディーヌの清冽で綺麗なトリル、霞たなびく全音音階を駆使した和声部が白眉で、少し生硬なところはあるものの、純音の美しさと技巧の確かさが光っている。シベリウスのOp.76抜粋だが、抒情的でメロディアスなパッセージもまた余裕を持って、そして相応に大きな構図で描ききることが出来ることを証明している演奏。一部分だが多少はドライでソリッドな解釈が垣間見られるが、これに関しては今後、齢を徐々に重ねるごとにウェットに、またスウィートに熟成されてくるのではないだろうか。
バルトーク:PソナタSz.80
このソナタはとても短いが、鮮鋭なバルトーク唯一にして孤高の3楽章で、再びここでリカの真価を聴き取ることが出来る。

2楽章は陰鬱な緩徐楽章。3楽章は1楽章コーダ近辺に近い拍子を刻むダイナミズム溢れる変形ロンド形式、曲想だ。ここでのリカの構図は大きく、また揺らぎも打ち下ろしの打撃も強く、ここを聴くとこの人はやはり近現代ものの解釈に一日の長があって、また彼女自身もこういった非和声系が好きなのではないだろうかと思う。
まとめ
初めて聴く奏者なので、まとめを書いておく。デビュー盤を一枚聴いただけなので断言するまではいかないが、リカは将来的な伸び代が非常に大きなピアニストではないだろうか。硬質で強烈な打鍵能力を擁する若手女流は何人かいるが、この独特のドライさ、ソリッドさを徹底的に前面で見せつけるスタイルは彼女ならではの特徴だ。この手のハードボイルドなPfとしては、同郷のカティア・ブニアティシヴィリ、ヴァネッサ・ベネリ・モーゼル、ヴァレンティーナ・リシッツァ、ソフィー・パチーニなどが挙げられるが、また一人、この系列で有望なPfが登場した。
録音評
Farao Classics B108099、通常CD。録音は2017年7月、ベニューはドイツ・ミュンヘンのプラネック(Kupferhaus Planegg)とある。少し音場が真ん中に寄っている感じのコンパクトなアンビエントが特徴だが、これはこれで集中して聴き易い。音調はニュートラルから少々細身に振った綺麗なものだが誇張感はない。リカの駆るスタインウェイDシリーズの音は高音が綺麗に伸びていて、それでいて通常よく聴かれるような痩せすぎではなく中庸を行く太さに仕上がっている。レンジは極めて広く、夜のガスパールやシベリウスでの最弱音とプロコなどの最大音量との差が極端だが両端における破綻や潰れは一切なく克明に捉えられている。優秀録音である。

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