自家製麺 SHIN(新)@反町 |
まずはビール
この日も寒かったが、店内は調理に強い火を使っていて室温、湿度ともに猛烈で汗ばむくらいだった。最初、眼鏡もデジカメのレンズも曇ってしまって難儀した。突き出しにはお馴染のバラ・チャーシューの切り落とし部位を炙ったもの。これがもう相変わらず抜群で、ビールがあっという間に減っていってしまう。困ったものだ。もう一本ずつもらえばよかったか。
つまみ兼トッピングのハーフ揚げチキン
歳のせいかフルポーションだと辛いが、ハーフポーションならば二人でシェアするにちょうど良い。これはビールの後半戦に少し齧り、残りは後の楽しみにとっておく。
アゴだしつけめん
これが先週、アゴ出汁バージョンで電撃的に復活を遂げたつけ麺。
平戸産のアゴおよび同じく平戸産の手仕事による超高価な焼きアゴで丁寧にとったスープの軽量感が際立つ滋味はさすが。ここに鰹出汁がブレンドされ重量感のバランスを霊妙にとっている。要は純粋アゴのみで深みまで担保することは極めて難しく、鰹という伴侶を得ることで味も風味も落ち着いて深みが増す。鶏などの動物系と異なり雑味が皆無、すっと体に浸透して来る。
きゅっと締められた麺の付け合わせは丁寧に仕上げた良質な豚バラ・チャーシュー、出汁で含め煮にした筍穂先と麩が一つ、スープには葉三つ葉と長葱微塵切りというシンプルな潔さ。醤油はおそらくは地元の名品・横浜醤油製の上質なもので仄かな甘みが最後まで衰えず持続する。無論、別皿オーダーの揚げチキンも丼のスープに軽く潜らせ麺とともに啜る。至福だ。
店主曰く、このつけ麺は日本蕎麦の盛りそばのようにつるつると味わって欲しいのだとか。言われてみるとアゴと鰹という海の和食材のみの出汁にかえしが加わったこれは日本蕎麦、特に東京下町や横浜の老舗蕎麦屋の汁に相通ずるものがある。麺はもちろん日本蕎麦ではないが、この麺は中華麺の域を逸脱した靭性と風味を備えており、硬く打った外二八と風情は似ている。
いやはや、文字表現がおよそ不能なほど美味で高度なつけ麺であり、これはいわゆるラーメン、中華蕎麦といったジャンルの料理と一括りにはできない。啜りながら時折店主と雑談を交えていたのであるが、彼女も自分で作っておきながらどんな分類の麺料理なのかは判然としない、などと笑い飛ばす。これは精妙に調理された日本料理の一種であり、食べるというより寧ろ滋味・風味を嗜む麺料理なのかもしれない。
お店データ
自家製麺 SHIN(新)
横浜市神奈川区反町1-3-8
電話:045-548-3973
営業:11:30~14:30
18:00~21:00(日曜は夜営業なし)
※ 月火はカレー営業、麺の提供なし
定休:無休
最寄:東急東横線 反町4分
今日の一曲
前回の続きでヴィルヘルム・ケンプの2枚目から。ケンプはならではの朴訥さ、そして妙なギミックを弄しない質素、質実剛健ながら柔和で優しい音楽が展開される。シューマンはもう少し情感を込めて弾いて欲しいと思ったのかもしれないが、ケンプのこの解釈を草葉の陰で聴いたなら膝を打つかもしれない。現代ではピアニズム、ソリストが表出する個性の多様化が進み複雑な解釈が多い中、このケンプの子供の情景は実に新鮮で心洗われるのである。
(MusicArena 2006/10/25)
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