R.Strauss: Don Quixote@Ophélie Gaillard, Julien Masmondet/Czech NSO |
https://tower.jp/item/4681714/
Richard Strauss:
1. Cello Sonata in F major, Op.6
Allegro con brio
Andante
Allegro
2. Romanze for Cello and Orchestra in F Major, Op.13 Andante cantabile
3. Don Quixote, Op.35
Introduction
Theme. The Knight of the Mournful Countenance
Variation Ⅰ. The adventure of the windmills
Variation Ⅱ. The battle with the sheep
Variation Ⅲ. Sancho's wishes, peculiarities of speech and maxims
Variation Ⅳ. The adventure with the procession of penitents
Variation Ⅴ. Don Quixote's vigil during the summer night
Variation Ⅵ. Dulcinea
Variation Ⅶ. Don Quixote's ride through the air
Variation Ⅷ. The trip on the enchanted boat
Variation Ⅸ. The attack on the mendicant friars
Variation Ⅹ. The duel and return home
Finale. Death of Don Quixote
4. Vier Lieder, Op.27
Ⅳ. Morgen
Ophélie Gaillard (Vc)
Vassilis Varvaresos (Pf) (1,4)
Alexandra Conunova (Vn) (3)
Dov Scheindlin (Va) (3)
Béatrice Uria-Monzon (Mezzo-Sop) 4
Czech National Symphony Orchestra, Julien Masmondet (2,3)
R.シュトラウス: チェロのための作品全集
・チェロ・ソナタ Op.6 ヘ長調*
・ロマンス ヘ長調 Op.13
・ドン・キホーテ(騎士的な性格の一つの主題による幻想的変奏曲)Op.35
・「あした」~4つの歌 Op.27(作曲者によるチェロ、ピアノ*とソプラノ** のための編曲版)より
オフェリー・ガイヤール(チェロ)
ヴァシリス・ヴァルヴァレソス(ピアノ)*
アレクサンドラ・コヌノヴァ(ヴァイオリン)
ドヴ・シェインドリン(ヴィオラ)
ベアトリス・ウリア・モンゾン(メゾ・ソプラノ)**
ジュリアン・マスモンデ指揮、チェコ国立交響楽団
オフェリー・ガイヤールの過去録音
オフェリーの経歴については多く掲載されているので詳述はしない。彼女の過去録音はMusicArenaで今まで何枚か取り上げてきている。彼女はその優れた演奏技巧、アーティスティックな表現技法、極めて幅広いレパートリーでは括目すべき逸材であり、現代における代表的Vcソリストの一人として高く評価している。
VcソナタOp.6
Vcソナタ ヘ長調Op.6はR.シュトラウスが唯一書いたVcとPfのためのソナタである。
個人的にはポストロマン派ではフランス系のフランク:イ長調ソナタと比肩しうる作品だと思っている。これは作家が大学に進学した18歳で書いたとされる実に早熟な内容と完成度のソナタであり、ミュンヘン宮廷音楽隊のチェロ長だったハンス・ヴィーハンへのオマージュだった。献呈先はやはり初演を務めたヴィーハン。
1楽章アレグロ・コン・ブリオ。3拍子の明媚な第1主題がPfの派手な分散和音で開始、すぐにVcが参画。明るい第1主題は暫くして暗転するもまた明転、そして短調の第2主題に引き継がれる。ソナタ形式のため冒頭主題の再現に明転。オフェリーのナチュラルで無理しない語り口は爽やか。2楽章アンダンテ・マ・ノン・トロッポは緩徐楽章で、アンニュイなオフェリーの語りから開始。短調と長調が交錯しつつ単純かつ静謐なVcのスケールがなんともしっとり。3楽章フィナーレはアレグロ指定のソナタ形式。快活でポップ、楽しい第1主題がオフェリーのゴフリラーにより提示。何とも言えない幸福感を感じる影のない展開。ちょっと落ち着いた第2主題もそこそこに冒頭主題へと回帰。
ロマンス ヘ長調
前のVcソナタの直後に書かれた作品で、この頃のR.シュトラウスはチェロに傾倒していたらしい。
現在ではPf伴奏によるVc独奏版がよく演奏されているが、このCDでは作曲当初の原曲である管弦楽版を採用している。初演は前作と同様ヴィーハンによりバーデン・バーデンにて。何とも伸びやかで美しい屈託のない曲想。オフェリーの柔らかいヴィブラートに載せてフェザータッチの美しいメロディーラインがさらさらと無限に流れ出て来る。
ドン・キホーテOp.35
ドン・キホーテ(Don Quixote)Op.35は、個人的には異論はあるが分類上は交響詩とされ、その副題は騎士的な性格の一つの主題による幻想的変奏曲(Phantastische Variationen über ein Thema ritterlichen Charakters )となっている。作品の組み立てはセルバンテスの著名な同名の小説=ドン・キホーテから着想を得ており、器楽によるオペラ的な配役がなされるといった異色の作品。
配役上のドン・キホーテを独奏Vc=オフェリー・ガイヤールが、従者サンチョ・パンサを独奏Va=が、そしてドゥルシネラ姫はVn=アレクサンドラ・コヌノヴァが担っていて、各々セリフに相当する旋律をソロ楽器で演ずる格好。
長いので一々は書かないが、音楽としてはウィットが効いた遊び心が、そして形式的には一部にデモーニッシュで聴きにくい非和声が混ざったり苦しそうな変拍子があったりと、必ずしも綺麗な作品とは言えない。ここでのオフェリーの変幻自在ぶりはさすがで、実に旨くて歌心が存分に発揮される。Va、Vnの面々もさすがだし、バックのチェコNSO、率いるジュリアン・マスモンデの精細な配慮と丁寧な描き込みも凄いものがある。ドン・キホーテは延々と繰り返される変奏が単調、途中の演奏がアクロバティックということで今まであまり得意ではなかったが、こういった解釈もありか、と膝を打った。
4つの歌Op.27から、あした
R.シュトラウスはドイツのメロディー・メーカーとしては異彩を放つ作家であり、たぶん彼の作品中、最も有名な旋律はツァラトゥストラはかく語りきの冒頭=2001年宇宙の旅のあれ=だが、このあしたは陰に隠れてはいるが最も美しい旋律だと個人的には思っている。冒頭の主題提示を担うオフェリーのゴフリラーに思わずやられてしまう。オフェリーのVcが巧くて聴き惚れるのは勿論だが、不意に入って来るベアトリス・ウリア・モンゾンのメゾのなんと美しいことか・・。ぽろりん、ぽろりんとPfで合の手を入れるヴァシリス・ヴァルヴァレソスの間合いの取り方が完璧で、半分以上は空白・無音で音を作るという離れ業。表題音楽としての完成度、アンサンブル演奏としての表現美に圧倒された短かな4分間であった。
Apartéのプロモーション・ビデオ
録音評
Aparté AP174、通常CD。録音は2017年7月12~15日/チェコ国立交響楽団スタジオ(プラハ)(2,3)、2018年1月22~23、31日/パリ(1,4)とある。オケとアンサンブルとではベニューが異なるが音質は揃っていてどちらもアパルテの典型的な美学が貫かれている。ちょっと霞がかかったような、ヴェールに包まれたような微妙な見通しで、その奥に透徹された澄明な空間が現出する。定位も素晴らしくてほぼほぼピンポイント。オフェリーのゴフリラー(先日、強盗に遭ってオフェリー自身から強奪され、後日、奇跡的に無傷で戻った由)がとてもふくよか、かつ表情豊かに捉えられている。よくよく聴き込むとレンジは割と広くて、オケ・パートでのグランカッサやティンパニなどの極低音の衝撃波もリアルに捕捉されている。実にアーティスティックな一枚。いい音楽をいい音質で聴くことのできる愉悦に浸る。
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