Christiansen: Garden Party@Michala Petri, Lars Hannibal |
http://tower.jp/item/4627840/
Garden Party
Nielsen: 6 Humoresque Bagatelles, Op.11, FS 22
(Arr. L. Hannibal for Recorder & Guitar)
No.1 Hello, Hello!
No.2 The Spinning Top
No.3 A Short Slow Waltz
No.4 Jumping Jack
No.5 Puppet March
No.6 The Musical Clock
Hannibal: Dreams
Lalo: Violin Concerto No.3 "Fantaisie norvégienne"
Ⅰ. Allegretto non troppo
Ⅱ. Andante
Ⅲ. Allegro presto
Christiansen: Garden Party
Ⅰ. The Blackbird
Ⅱ. The Chaffinch
Ⅲ. The Peacock
Ⅳ. The Wagtail and the Cuckoo
Ⅴ. The Bullfinch
Ⅵ. The Lark
Hannibal: Sunset Dance
Grieg:
25 Norwegian Folksongs & Dances, Op.17
No.1 & 3 "Leaping Dance"
No.22 "Cattle Call"
Lyric Pieces Book 1(8), Op.12 No.4 "Elve's Dance"
19 Norwegian Folksongs, Op.66 No.15 "Lullaby"
25 Norwegian Folk Songs & Dances, Op.17 No.18 "Stumping Dance"
Weiliang Zhang: Ge Xie Mei Ling (Flowering Flowers at the River Ge)
Michala Petri(Rec)、Lars Hannibal(g)
1-6. ニールセン(1865-1931): 6つのユモレスク・バガテル Op.11 FS22
7. ハンニバル(1951-): 夢…世界初録音
8-10. ラロ(1823-1892): ノルウェー幻想曲
クリスティアンセン: ガーデン・パーティ…世界初録音
11. 第1曲:黒鳥
12. 第2曲:ズアオアトリ
13. 第3曲:クジャク
14. 第4曲:セキレイとカッコウ
15. 第5曲:ウソ
16. 第6曲:ヒバリ
17.ハンニバル: Sunset Dance-日没の踊り…世界初録音
グリーグ(1843-1907):
18. 25のノルウェー民謡 Op.17-第1番-第3番
19. 25のノルウェー民謡 Op.17-第22番
20. 抒情小品集 第1巻 Op.12-第4番「妖精の踊り」
21. 19のノルウェー民謡 Op.66-第15番「子守歌」
22. 25のノルウェー民謡 Op.17-第18番「農民の踊り」
23. ツァン・ウェイリアン(1957-):Ge Xie Mei Ling
ミカラ・ペトリ(リコーダー)
ラース・ハンニバル(ギター)
ミカラ・ペトリについて
彼女のアルバムは約十年前にこれを聴いていて、非常に感動的な音楽性とともに、その超絶技巧には恐れ入った。年齢的には私とほぼ同じで殆ど還暦だ。彼女は若い頃から美貌の縦笛奏者としても知られていて、今では加齢に伴って相応の変化はあるものの、そのエレガントな立ち居振る舞いはなお美しいという。適切なバイオグラフィーが見当たらなかったのでちょっと古いソニー時代のものを以下に引用しておく。
ミカラ・ペトリ リコーダー
四大陸にまたがる国際的な活躍を続けるミカラ・ペトリは,すでに現代の最も優れたリコーダー奏者としての名声を確立しており、その高い技巧と音楽性によって世界中の聴衆を喜ばせ、また驚かせている。1969年ティヴォリ・コンサートホールにおけるデビュー以来、ペトリはアメリカ,カナダ,ヨーロッパ,日本などに幅広く演奏ツアーを行っている。彼女は,イギリス室内管弦楽団,アカデミー室内管弦楽団,イタリア弦楽合奏団,ギルドホール弦楽アンサンブルなどとしばしば共演している。ニューヨークでは,彼女はモーストリー・モーツァルト・フェスティヴァルで,ピンカス・ズッカーマン,クリストファー・ホグウッド,そしてクラウディオ・シモーネらと一緒に演奏した。また,メトロポリタン美術館やヴァイル・リサイタルホールでもリサイタルを開き,カーネギーホール百周年を記念して委嘱された,マルコム・アーノルドのリコーダーと弦楽器のための作品の世界初演も行っている。1958年,コペンハーゲンに生まれたペトリは,1968年から1976年までドイツのハノーヴァーの国立音楽大学で学んだ。1987年以来BMGクラシックスの専属アーティストになる。(ソニーBMG)
ニールセンのユーモレスク、バガテル~ハンニバル/夢
ニールセンはミカラ・ペトリと同郷のデンマークの著名作家で交響曲、各種の協奏曲、その他の管弦楽曲で有名だ。激しいカオスと精妙なコスモスが交互に去来する抒情的な作品集。特に3曲目のA Short Slow Waltzは、和声が7割、非和声が3割といった具合の綺麗だがどこか重心の高い風情の作品。ペトリのソプラノ・リコーダーは縦横無尽にして柔和。5曲目のPuppet Marchはまさに潔癖な行進曲風がミカラのアルト・リコーダーで短く綴られる。
次の夢は、伴奏ギターのラース・ハンニバルの作で世界初録音。なんともいえないゆったりと揺蕩う主題をミカラがアルトで素朴に吹いていく。途中に挿入されるラースのソロの数小節が切なさを誘う。
ラロ/ノルウェー幻想曲
ラロはフランスの作家だが欧州各地の民俗的作風に秀でていて、スペイン交響曲があまりにも有名。だが、ロシアや北欧の情景を描いた作品も書いている。そのうちの一つが本作品となる。第一楽章、ノスタルジックで情感たっぷりの主題がミカラのソプラノリコーダーで刻み始められる。ギターのトレモロが憂愁を誘うのだ。ラロという名でバイアスがかかっているのかもしれないがこれはイベリアの気風を含有する和声と旋律だ。ただ、必要以上に熱気を帯びないところはノルウェーの風景といえなくはない。
中間楽章は珍しい三拍子でアンダンテ指定。ここでのミカラがどうやってリコーダーを吹いているのかがよく分からない。というのもバスリコーダーから一気にソプラニーノに移ったり、かと思うとアルトで朗々と鳴り響かせてみたりと変幻自在。たぶんだが、両手リコーダーと片手リコーダー、あるいは音域の異なる片手リコーダーを二つ吹いている可能性がある。実際にスピーカーバッフルから放散されるウェーブパターンが複雑で響きが渦巻いているのだ。最終楽章はソプラノの一本吹きでこれがまた超絶技巧で高速タンギングと運指の妙味が相俟って、もう理解不能領域だ。
クリスティアンセン/ガーデン・パーティー
アスガー・ルンド・クリスティアンセン(Asger Lund Christiansen 1927–1998)はデンマークの著名チェリストで作曲家だったそうだが今回初めて知った。この組曲は当アルバムのタイトル曲であり、各曲は鳥の名をキャプションとしている。題名を見た最初、庭園で催されるバーベキュー的な集まりの風景を想像していたが、実際には違っていて、庭にやって来る鳥たちの挙動を鳴き声で描写したものだった。それを庭のパーティーと称して組曲を書いたというのが真相のようだ。鳥の鳴き声の模倣はリコーダーの得意とするところだがミカラの演奏は想像を絶していた。例によって複数帯域で異なる旋律を同時に吹き分けるという離れ業が随所で聴かれるが、これはまさに筆舌に尽くしがたく聴いてもらうほかあるまい。曲ごとの詳細な解説は割愛。
サンセット・ダンス~グリーグの小品集
サンセット・ダンスはギター伴奏のハンニバルの作となり、これもまた世界初録音。なんとも言えない距離感と旅愁を湛えた、どちらかというと中央アジア、キルギス、あるいはトルコ方面の風景に似た情景描写、そして気だるくやるせない風情はバルカン半島の音楽に似たところがあるかも知れない。非和声は少なく全体的に清浄で綺麗な音楽。細かな運指により32部音符またはそれ以上の高速トレモロ的な奏法をなんと称するかは承知しないが、これは凄いのひとこと。
一転して素朴、純朴、ストレートなグリーグの小品集が始まる。ミカラのソプラニーノが直進的に尖鋭的に鳴らされる。こういった呼吸法によって持続する長い単音を実現させるのはちょっと衝撃。デジタル領域での処理を行うことなくこれだけ多彩な音と音域、そして超絶的な高速演奏をリアルタイムで可能にする技術とは何なんだろうか・・。ともあれグリーグのこれらの可憐な曲集は明媚な部分と暗鬱な部分とを複雑に交錯させながら綴られ、これは確かに北欧の雰囲気、そしてグリーグなのである。
最後には中国の笛の名手が古い伝承曲を基に書いた、ある大河の周辺に咲く花を賛美する作品が置かれる。可愛らしくて可憐で、しかも縦笛の特質を生かしたハイスピードで尖鋭な曲想だ。どうやら昔から彼と彼女とは親交が深いらしく、彼女が彼のオマージュとして演奏した曲らしい。アジアン・テイストなこの作品については詳細は割愛。
録音評
OUR Recordings 6220619、SACDハイブリッド。録音は2017年3月1-3日、ベニューはGarnisonskirken, Copenhagen, Denmarkとある。SACDレイヤーの音質は極めて良好。CDレイヤーも優秀だがちょっと硬質で、SACD側のふわっとした何とも言えない音場感には及ばない。ミカラのリコーダーの定位は良好なのだが、彼女が左右に楽器を振ると音像もそれにつれてずれてアンビエントも大きく振れる。なので、バッフルから至近距離に座って聴くと眩暈がするくらいに頭がブレる感覚に陥るが、ちょっと離れると彼女の身振り手振りがよく分かる。そして片手用のリコーダーを複数持って吹いている時には当然に左右からばらばらに音が出てくるのだ。これは面白い録音で、かつ珍しい録りかただ。
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