Sachiko Furuhata-Kersting Pf Recital@Bashamichi |

F.Chopin:
Nocturne No.20 in C# min, KK.IVa-16 Op.posth.
Étude Op.25-7 in C# min
Étude Op.10-12 in C min, "Revolutionary Étude"
Sonata No.2 in B♭ min, Op.35
M.Mussorgsky:
Pictures at an Exhibition
Encore:
F.Chopin: Impromptu C# min(posth.), Op.66 " Fantaisie-Impromptu"
R.Schumann: Kinderszenen, Op.15-7 "Träumerei"
Sachiko Furuhata-Kersting (Pf)
ショパン:
夜想曲 第20番 嬰ハ短調 KK.IVa-16(遺作)
12の練習曲 Op.25-7
12の練習曲 Op.10-12「革命」
ピアノソナタ 第2番 Op.35 変ロ短調「葬送」
ムソルグスキー:
組曲「展覧会の絵」
アンコール:
ショパン: 即興曲 第4番 嬰ハ短調(遺作)Op.66「幻想即興曲」
シューマン: 子供の情景 Op.15-7「トロイメライ」
古畑 祥子(ピアノ)
(サチコ・フルハタ=ケルスティング)
古畑祥子さんについて
そうしたところ、今度7月に馬車道で演奏会をするので聴きに来ませんか? とのお誘いを受けた。もちろん快諾しスケジュール表に即座に予定を書き込んだ。まさにその日がこの日曜だった。以下、今まで私が聴いた彼女の演奏をダイジェストで記しておく。右側のサムネイル写真をクリックすると当時の評に飛ぶので詳細はそちらで確認いただきたい。

(MusicArena 2010/12/31)

(MusicArena 2014/6/3)

(MusicArena 2014/10/18)
アンコールで彼女が弾いたスクリャービン:左手のためのノクターンOp.9-2があまりに秀逸で拍手が止められなかった。その後、2017年の初冬、彼女は一連のベートーヴェン・プログラムを引っさげ、ニューヨーク/カーネギー・ホールでのデビューを鮮やかに果たし、地元ファンや大手メディアから大絶賛を受ける。
前半 ショパン
いずれも著名曲ゆえ、楽曲の個別解説はしないし、長くなってもいけないのでクイックに書く。冒頭の遺作ノクターンだが、インテンポよりもかなり遅い速度、そして瞑想的で揺れながらの導入部。なんだか落ち着かない風だが、暫し後の展開は一気呵成にffで和音を打鍵し始めたかと思うと一転して思索的なpへと移行する。楽章を重ねるなか、彼女の演奏設計はドラマティックな情感表出だと理解する。やはり彼女は椅子の高さと腕と鍵盤の距離が気になっていたらしく、次に移る前に素早く椅子の高さと位置を修正した。エチュードOp.25の7番は私が大好きな曲、かつ幼少期に苦戦した最右翼の曲。あまりに激しいスケールに戸惑ったが、実はショパンはこれがやりたかったのではという激情が迸る。いや、凄い。そして革命。傷は少しあったが、激烈で隙のない打鍵は過去録音にある通りの精密さ。だが、以前の古畑さんとは違って自由に飛翔し、そして制限のない空間で思い切り叫ぶがごとくの革命だった。ここで小休止、約5分ほど。
戻った古畑さんの葬送ソナタの入りはやはりインテンポより相当遅め。どうやら、テンペラメントの劇的拡大を狙う今年度の古畑さんのテーマの真骨頂の一つがこのソナタだった気がする。はたと気が付く。変ロ短調は暗いけれどもブリリアンスに満ちた調。そう、前の三つはフラット基調で音圧がストレートに迫る変ハ短調あるいはハ短調だったのだ。古畑さんがそこまで計算して選んだかどうかは不明だが、この対比は素晴らしい。葬送ソナタは全体に沈痛なのだが、古畑さんのピアニズムは闊達で実に明媚だ。3楽章がいわゆる葬送行進曲だが、ここでの彼女に遠慮はなく容赦なく陰鬱な和音を強いアタックを打ち込みながら進んで行く。
後半 展覧会の絵
これは、本当に凄い展覧会だ。今まで生演奏あるいは録音で聴いた中で、もしくは私も幼少期にはこれを全曲弾いた経験があるので言うが、凄まじい音圧とリアリティ、いまだかつて聴いたことのないような内声部の執拗な主張と、余りに新機軸なので聴きながら固まってしまった。具体的には古城での激しすぎるアゴーギクというかテンポ・ルバート、テュイルリーやリモージュ市場でのアチェレランド/リタルダンドの交錯、牛車での激烈極まりない左手の打ち込み・・。勿論、ババ・ヤーガから大門に至る一連のムーブメントもドラマティックかつエモーショナル。ラヴェル編のオケ版が有名だが、原曲のピアノ版は最も優れた表現であり、個人的にはオケ版はダイナミックレンジに優れるが二番煎じと思っている。古畑さんは原曲でオケ版を凌ぐのが目標と言っているが、これはもう完全に凌駕していると思うのだ。私が抱いていた古畑さんのストイックかつレイショナルな印象が180度変わった瞬間だった。
アンコール
アンコールに際し彼女は1曲目に幻想即興曲を選んだ。これは2014年の松尾ホールでも弾いた曲。彼女のメンタリティは展覧会が終わったことから緩解され、安心したことが作用したのであろうか、特段にゆったり優美で、しかも精密極まりない幻想即興曲であった。これは本編プログラムを聴いて肩肘が張った全身をほぐしてくれるにふさわしい一曲。そしてさらにほぐしてくれたのが最終のトロイメライ。彼女が静かに弾き切り、そして大団円でマチネーが幕を閉じた。
終了後、エレベータ前で娘さんと共に退去する私らを見送りしてくれた古畑さんと僅かに会話ができた。今年はこのプログラムでリサイタル・ツアーを敢行し去年に引き続きカーネギーでも演奏を予定している由。是非ともこの激烈なエモーションで再び現地の喝采を浴びて欲しいし彼女のこの演奏内容と調子なら必ずや行けると思う。

©古畑さんの公式Facebookから拝借
音質評
馬車道の野中貿易ビル2階には、スタインウェイの中型モデルであるB-211が設置されていた。

株式会社 馬車道ピアノサロン
横浜市中区太田町4-46 野中貿易ビル2F
電話:045-211-2593(FAX:045-212-0598)
営業:10:00〜18:00
定休:水・祝(来店の際は予約必須)
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