Schubert: Nacht & Träume@Laurence Equilbey/Insula O., accentus |

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Franz Peter Schubert:
1. Schwanengesang, D957: Ⅳ. Ständchen (Orch. Mottl)
2. An Sylvia, D891 (Orch. Krawczyk)
3. Die Forelle, D550 (Orch. Britten)
4. Ganymed, D544 (Orch. Richard Strauss)
5. Im Abendrot, D799 (Orch. Reger)
6. Nacht und Träume, D827 (Orch. Krawczyk)
7. Die junge Nonne, D828 (Orch. Liszt)
8. Gruppe aus dem Tartarus, D583 (Orch. Brahms)
9. Rosamunde, D797 Ⅴ. Entr'acte 3
10. Rosamunde, D797 Ⅲb. Der Vollmond strahlt auf Bergeshöh'n
11. Gondelfahrer, D809 (Orch. Krawczyk)
12. Coronach, D836 (Orch. Krawczyk)
13. Erlkönig, D328 (Orch. Berlioz)
14. Das Grab, D377 (Orch. Krawczyk)
15. Du bist die Ruh, D776 (Orch. Webern)
Wiebke Lehmkuhl (Mezzo-Soprano)(2,7,8,10)
Stanislas de Barbeyrac(Tenor)(1,3-6,13,15)
accentus(11,12,14)
Insula Orchestra
Laurence Equilbey
ロランス・エキルベイ/シューベルト:夜と夢(管弦楽編曲版による歌曲集)
シューベルト:
1. 『セレナーデ』D957(フェリックス・モットル編)
2. 『歌(シルヴィアに)』D891(フランク・クラフチク編)
3. 『ます』D550(ベンジャミン・ブリテン編)
4. 『ガニュメート』D544(リヒャルト・シュトラウス編)
5. 『夕映えに』D799(マックス・レーガー編)
6. 『夜と夢』D827(フランク・クラフチク編)
7. 『若い尼』D828(フランツ・リスト編)
8. 『タルタルスの群れ』D583(ヨハネス・ブラームス編)
9. 付随音楽『キプロスの女王ロザムンデ』より間奏曲第3番
10. ロザムンデのロマンス『満月は輝き』D797-3b(シューベルト編)
11. 『ゴンドラを漕ぐ人』D809(フランク・クラフチク編)
12. 『挽歌(女たちの挽歌)』D836(フランク・クラフチク編)
13. 『魔王』D328(ヘクトール・ベルリオーズ編)
14. 『墓』D377(フランク・クラフチク編)
15. 『君はわが憩い』D776(アントン・ヴェーベルン編)
ヴィーブケ・レームクール(メゾ・ソプラノ:2,7,8,10)
スタニスラス・ドゥ・バルビラック(テノール:1,3-6,13,15)
アクサントゥス(合唱:11,12,14)
インスラ・オーケストラ
ロランス・エキルベイ(指揮)
前半 セレナーデ~ロザムンデ間奏曲
ロランス・エキルベイ/アクセントゥスは長らくnaïveレーベル専属であったが、前作のモーツァルト:戴冠ミサからエラートに移籍し、これが2作目となるようだ。個人的にはnaïveの音作りが気に入っていたのだがその辺がどうなのかが気になるところではある。
シューベルトは歌曲王と呼ばれているが、その殆どのボーカル作品はピアノ伴奏付きの独唱形式。これらの優れた作品はその後の著名作家らの手により様々な形式でオーケストレーションされている。この録音ではエキルベイがその編曲版のみを彼女なりに独自に構成し、シューベルト歌曲の新たな一面を聴かせるという趣向。
冒頭はバルビラックの伸びやかなテナーによるセレナーデで始まる。前回はムターによる独奏Vn版であったが、やはり歌詞付きの肉声で聴くセレナーデは良いものだ。鱒は歌曲版のD550のオーケストレーション版となる。ピアノ五重奏の鱒ももちろん良いが、ふくよかで音数の多いインスラ・オーケストラをバックにテナーで朗々と歌われる鱒はまた違った趣がある。
ガニュメートはちょっとポップなバラード風の曲でやはりバルビラックのテナーは良く伸びる。続く夕映えにはシューベルト歌曲の最高傑作の一つと言われている。カール・ゴットリープ・ラッペの荘厳な詩が静謐にしっとり歌われる。その次の夜と夢がこの録音のアルバムタイトルとなる曲で、マテウス・フォン・コリンの詩による夕映えにと並び称せられる名曲。これまた静謐で美しい旋律ならびに浮き立つほど嬉しく綺麗な和声。単独PF伴奏よりも厚みのあるオケ版伴奏は良いものだ。
一方、レームクールのメゾは冒頭2トラック目の歌(シルヴィアに)D891に戻る。この曲はシューベルト自身、だた単に Gesang(歌)とだけ自筆譜に記している。だが、後世では歌い出しのWas ist Sylvia?、または単にSylviaと通称される。農村の娘=シルビアへの讃歌らしいが、シンプルで屈託のない詩とメロディはシューベルトらしい明るい曲想。レームクールの弾む美声は本当に綺麗だし、オケのFlが刻む細かなオブリガートがPf伴奏版とは違ってとても華やいだ雰囲気を演出。
7トラック目の若い尼D828は少々屈折した難しい作品。若い女性が尼僧になったばかりの頃の慣れない暮らしと教条への反抗、鬱屈した精神状況を歌う前半、徐々に神への信仰を宿し尼僧としても人間としても成長し、遂には神への帰依と昇華に至るといった内容。レームクールの歌い込みは深遠で引き込まれるものがある。次のタルタルスの群れもこれと類似した暗鬱とした内容。
ロザムンデの間奏曲はインストゥルメンタルでインスラ・オーケストラが訥々と静かに奏でる。なお、インスラのHPによればオーケストラとは言うが規模は小さくて弦楽がVnが3、Va2、Vc3、Cb3というアンサンブルに毛が生えた程度のもの。だがライナーには、ほぼ倍の数のメンバーが記載されており、たぶん録音にあたってエキストラを呼んで増員したのであろう。迫力は1st Vnでいえば4プルト以上はある。
後半 ロザムンデのロマンス以降
ロザムンデのロマンス「満月は輝き」D797-3bは劇中挿入歌で、ロザムンデは幼少期に父である王を亡くし乳母に育てられたが、やがて訪れた別離にあたり乳母が惜別して歌ったとされる曲。これもまた哀歌だ。レームクールはシルヴィア以外は短調の暗い曲ばかり歌う設定のようだ。
11~12と14トラックがアクセントゥスによる合唱となる。暫く新譜を聴いていなかったせいか、実に懐かしいコーラスだと感じる。この人たちの歌い方は正統派混声合唱とはいいがたいところはあるものの、独特のプレゼンスとブリリアンスは他のどの合唱団とも似ていない。
ゴンドラを漕ぐ人は、あまり有名ではないかもしれないが気持ちの良い曲だ。明確なカンタービレを男声2部合唱で歌い紡いでいく作品。喉頭部を拡げたベルカントまたはリートではない、アクセントゥスの独特の歌い方。挽歌(女たちの挽歌)D836は、今度は女性2部合唱が主体で、これがアクセントゥスの真骨頂ともいえる微細で独特の空気感が漂う歌唱となっている。とても悲しい主題をバックのインスラが少し演出がかって盛り立てる。(この後の魔王は割愛)
14トラック目の墓 D377は初めて耳にするのであるが、短い曲だが本当に悲しい曲。シューベルトが何を思ってこの曲を書いたのであろうか。今後、作曲背景等を調べてみたいと思う。最終曲、君はわが憩い D776はヴェーベルン編で、とても美しくかつ静謐で完璧な和声を伴うシューベルトらしい聴かされる逸品。バルビラックのテナーがしみじみと沁みて来る美しい歌唱で、これをバックのインスラが馥郁と包み込む構図も筆舌に尽くしがたい出来栄え。そして静かにこのアルバムは閉じられる。
録音評
ERATO 9029576943、通常CD。録音は2017年4月、ベニューはフランス、ブローニュ、ラ・セーヌ・ミュジカルとある。音質だが、エラート典型のマッシブで無駄のない澄明なもの。個人的には問題だと事前に危惧していたのはアクセントゥスの持つあの幽玄で空間感が伴った得も言われぬプレゼンスがナイーヴからエラートに移りどうなったかである。
ところで最近の私は、というと、相変わらず鑑賞時間が十分に取れず、実は1か月ほど比較試聴を繰り返してきた次第。結論としてはこれはナイーヴ時代のアクセントゥスとは異なる。が、これはこれでエラートの美学で捉えたアクセントゥスであって悪くはない。ただ、霞み棚引くナイーヴのアクセントゥスとは違う道を歩み始めたと判断せざるを得ない。物事は常にフォワード・ルッキングで捉えるべきと普段から思っているので、音質におけるこの変曲点も受け入れていくつもりだ。そして今後、彼らの更なる活躍に期待するのであった。

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