MusicArena Awards 2017 |
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・2017年度前後にリリースされたCD/SACD(国内盤・輸入盤)
・演奏面/音質面ともに優れたもの
・前衛的な取り組みであると認められるもの
以上の観点から評価して以下の各賞を選考するものとする
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ドヴォルザーク: スターバト・マーテル 作品58
中村恵理(ソプラノ)他
プラハ・フィルハーモニー合唱団
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
イルジー・ビエロフラーヴェク(指揮)
レーベル:DECCA

鎮魂歌に悲愴度という尺度があるならば、このスターバト・マーテルは最右翼だろう。我が子の相次ぐ死という極限状況に見舞われたドヴォルザークが音楽という媒体を用いて表現した自らの心の慟哭には心打たれる。この作品をこれほどの悲嘆を充満・横溢させた苛烈な演奏として表現する故ビエロフラーヴェク率いるオケ、独唱隊、合唱隊に畏敬の念を抱く。こういった演奏はそうそう聴けるものではない。

ストラヴィンスキー: 火の鳥
ボロディン: イーゴリ公「だったん人の踊り」他
シプリアン・カツァリス
広瀬悦子
レーベル:Piano 21

カツァリスと広瀬は、互いに密に通信し合って基本的な音楽の外形を象るが、それ以外はそれぞれの個性と表現手法を独立・自律的に、かつ奔放に発揮している。互いに何かの音とか律動に合わせることは敢えてせず、互いに個性を発露し、ばらばらに自らが思うがままの心象をぶつけ合っているのだ。その結果、音数が極めて多くて表現幅も非常に広いダイナミックな演奏となっている。
▶ Bach: Toccata & Fugue BWV565 Etc@Minako Tsukatani

J.S.バッハ:
幻想曲 ト短調 BWV 542/1
主よ、人の望みの喜びよ BWV147
トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565 他
塚谷水無子
レーベル:キングレコード

大フーガと小フーガ、そしてトッカータとフーガBWV565をフィーチャーしたバッハの美味しいとこ取りに見えるアルバム。だが、彼女の超絶技巧、そして類まれな解釈と演奏設計、音の構築が素晴らしく、特に最後を飾る大フーガの後半が凄い。総奏が音粒のシャワーで、激しいペダルワークによる通奏低音のうねる上下動は聴くものの心を鷲掴み左右に揺り動かす。時間軸をずらしたいくつもの旋律の塗り重ねが色々な角度から光を透過し、絵巻物を投影する。塚谷さんはただ者ではない。

ファリャ:
交響的印象「スペインの庭の夜」
バレエ音楽「三角帽子」他
児玉麻里(Pf)
山田和樹(指揮)、スイス・ロマンド管弦楽団
レーベル:PENTATONE

山田和樹率いるOSRの演奏は精緻にして広大なダイナミックレンジ、明媚な色彩感を備えており、児玉麻里さんらソリストたちの出来栄えも上々だ。三次元空間的な広がり、高さ方向のディメンションが表現されることは原理的にはあり得ない2チャンネル・ステレオフォニック方式で、なぜか音像が上下方向に明確に定位し、特にスペインの庭の夜では児玉麻里さんの独奏ピアノが中間より下に、パーカッションが上部に定位する。この録音は数年に一度出会えるかどうかという超優秀録音

シューベルト: 即興曲集 D899 Op.90
リスト: 「巡礼の年」より
ヴェネツィアとナポリ 他
モナ=飛鳥・オット(ピアノ)
レーベル:Oehms Classics

アリス=紗良・オットの3歳下の妹=モナ・アスカのOEHMSからデビュー盤。モナは紗良と全く異なる個性を持ったピアニストで、ある意味で姉を超越した剛健なピアニズムを備えた本格的なヴィルトゥオーゾと言って良い新鋭。彼女は太い構図でアグレッシブに攻めるピアニストで、姉との精緻な比較は敢えてしないが、個人的にはモナの将来に向けた可能性に大いなる期待を寄せる。
▶ 最終選考まで残った秀作たち













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