Mompou: Oeuvres pour piano@Luis Fernando Perez |
http://tower.jp/item/4602406/
Federico Mompou: Oeuvres pour piano
Cançons i Danses
I~XII、XIV
Paisajes
Ⅰ. La fonte y la campana
Ⅱ. El Lago
Ⅲ. Carros de Galicia
Scenes d'enfants
Ⅰ. Cris dans la rue
Ⅱ. Jeux sur la plage
Ⅲ. Jeu Ⅱ
Ⅳ. Jeu Ⅲ
Ⅵ. Jeunes filles au jardin
Musica callada Ⅰ, n.Ⅲ
Luis Fernando Perez(Pf)
モンポウ(1893-1987): ピアノ作品集
・歌と踊り(1~12 & 14番)
・風景
・子供の情景
・ひそやかな音楽 第1巻より第3番
ルイス・フェルナンド・ペレス(ピアノ)
この録音について
ペレスについては音楽祭の録音や色んな共演の中のシュアな演奏で記憶に残るテンペラメンタルかつ盤石なテクニックを両立させたPf奏者だ。だが実のところ、それ以外はあまり知らないのだ。今まで聴いた中ではショパンのノクターン集がとても秀逸で印象に残っている。
以下、この盤に関するキングインターの販促文を引用しておく。
スペインの名手ペレスが描く新しいモンポウ
1977年マドリード生まれの名手、ルイス・フェルナンド・ペレスによる、スペインの至宝作曲家、モンポウの登場。ラ・フォル・ジュルネ音楽祭でもおなじみで、その演奏と人柄で着実にファンを増やしている注目ピアニストです。幼いころラジオで流れていたのを聴いてモンポウの音楽に初めて出会ったというペレス。「ユニークなハーモニー、神秘的な響き、色彩、繊細さ、'スイング'、自由さ、鐘の音色・・・民謡だけが持つ真の力強さ」を持つモンポウの作品に魅了された、といいます。後にそれはモンポウ自身が演奏する「歌と踊り」だったと知り、ますますのめり込んだそう。師であり、モンポウ弾きでもあったラ・ローチャにもモンポウについて指導を仰ぎました。モンポウの妻、カルメンを生前訪ねたことがあり、その時に彼女にモンポウ作品を全曲録音するよう励まされたといいます。本盤はその第1弾ということになります。ペレスは、鮮烈にして深みのある音色で、モンポウの音楽に秘められた豊かな世界を大胆に解き放ちます。「繊細」「静謐」と評されるモンポウ作品に、こんなにも美しい和声と豊かな歌が込められていたのかと気付かされる1枚です。「歌と踊り」は全15曲から成りますが、そのうちピアノのために書かれた楽曲全13曲が収められています。
キングインターナショナル
歌と踊り
このアルバムはこの曲のためにあり、残りはフィルアップだと言ってよい。この作品については他に詳しいのであまり詳細には述べないが、以下に少しだけ触れておく。この曲集はもともと最初から何かを意図されて構想して書かれたものではなく、事後的に過去に書かれた似たような傾向の曲たちを収集して編纂されたものだ。
各曲は内部的には2楽章形式、あるいは導入部+展開部という二つのパートに分かれている。一つ一つは2分半から4分くらいの短い曲なので楽章というのは大袈裟かもしれない。前のパートを緩徐な歌(Cançons)、後ろのパートを比較的急速な踊り(Dansa)と呼んでいる。なお、Cançons=カンソンとはフランスのシャンソン、イタリアのカンツォーネと語源が同じスペイン語だ。
主題の継承性という点においては、必ずしも前後の連関が強いとはいえず、歌とは全く異なる踊りも多い。一部の転調を除き、基本的には歌と踊りは同じ調性だが、拍子は不同で、特に踊りは文字通り舞曲との位置づけからか三拍子系が多い。主題の旋律の多くはカタルーニャ地方の民謡あるいは舞踏から採取されているそうだが、6番のようにモンポウが独自に書いた旋律もある。後年にはピアノだけではなく様々な器楽向けにも編曲されたようだ。
以下、かいつまむ。冒頭1番は明るい長調。ショパンのバラードにあるような跳躍する移調と和音が特徴の綺麗な入り。踊りの部分は最後尾でようやく現れる。暗転して歩を速めて影を描く。2番は暗い。3番は有名と思う。ここの歌は純粋で綺麗、そして極めて静謐かつゆっくりした旋律を紡ぐ。後半の踊りがデモーニッシュでスケルツォ的で個人的にはかなり好きな部分。4番は3番の主題とほぼ同じで、これは前曲から続いた展開部との位置付け。
6番は他のどの曲とも似ていない。それは、他の曲たちがカタルーニャの民謡をベースとしているがこの曲はあのアルトゥーロ・ルービンシュタインに献呈するためにモンポウが書き下ろしたオリジナル曲だからだ。とても美しい導入部は誰しもがテレビCMとかで聴いたことがあるはず。そして展開部である踊りだが、これもモンポウがオリジナルで書いた曲でイメージ的には完全にフラメンコ。とても秀逸。
風景~子供情景~ひそやかな音楽
この風景とは、モンポウがその目で見ていた風景を写実的、かつ絵画的に音楽表現したものと思われる。1曲目は泉と鐘と称し、沈み込むような静謐さが特徴。ドビュッシーの沈める寺に似た独特の風情がある。2曲目もドビュッシーのベルガマスクや版画のような浮遊する全音音階のきらきらした作風で、これは綺麗だ。
子供の情景はシューマンの同名の作品が有名だ。しかし、その快活でちょっとアンニュイな明媚な和声と直截的な旋律展開とは違って、どこか裏と陰がつきまとう重たくてくぐもった和声が特徴。翳りのある旋律が非和声で訥々と語られるが、途中には煌びやかな展開部も挟まり個人的には奥深い愉しみが得られた曲集だ。最終曲は不可思議系の落ち着く緩徐な旋律および和声で、ストラヴィンスキーやプロコフィエフが時に見せるロシア系に似た諧謔味のある短編で、あっけなく終わるのが印象的。全体を通じ、ペレスの演奏はソリッドだが、スペインという地域性が醸すエナジー感、そして明確には分からないのだが、カタルーニャの土着の民謡と舞曲が醸しているであろう純朴かつ憂愁に満ちた風情を巧みに表現していた。
録音評
Mirare MIR364、通常CD。ベニューはAula de musica de la universida de alcala de henares(Madrid)とある。この場所がどんなところなのかは分からないが、透徹されたスタインウェイの一つ一つの打鍵が空間にしみじみと沁み込むような実に美しい録音だ。ペレスの鍵盤へのタッチが非常に静謐で、ノイズ成分が殆どなくて美麗な録音となっている。ミラーレの昨今のピアノ録音にあっては特筆する優秀さだ。
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