Satie: Piano Music Vol.2@Noriko Ogawa |

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Satie: Piano Music, Vol.2
Erik Satie:
1. Prélude de la porte héroique du ciel
Sports et Divertissements
2. Choral inappetissant
3. La Balancoire
4. La Chasse
5. La Comedie italienne
6. Le Reveil de la mariee
7. Colin-maillard
8. La Peche
9. Le Yachting
10. Le Bain de mer
11. Le Carnaval
12. Le Golf
13. La Pieuvre
14. Les Courses
15. Les Quatre-coins
16. Le Pique-nique
17. Le Water-chute
18. Le Tango
19. Le Traineau
20. Le Flirt
21. Le Feu d'artifice
22. Le Tennis
Trois Sarabandes
23. Ⅰ. [untitled]
24. Ⅱ. [untitled: 'a Maurice Ravel']
25. Ⅲ. [untitled]
Préludes flasques, pour un chien
26. Ⅰ. Voix d'interieur
27. Ⅱ. Idylle cynique
28. Ⅲ. Chanson canine
29. Ⅳ. Avec camaraderie
Véritables préludes flasques, pour un chien
30. Severe reprimande
31. Seul a la maison
32. On joue
Sonneries de la Rose+Croix
33. Air de l'ordre
34. Air du grand maitre
35. Air du grand prieur
Menus propos enfantins
36. Ⅰ. Le chant guerrier du roi des haricots
37. Ⅱ. Ce que dit la petite princesse des tulipes
38. Ⅲ. Valse du chocolat aux amandes
Enfantillages pittoresques
39. Petit prelude a la journee
40. Berceuse
41. Marche du grand escalier
Trois Préludes pour "Le Fils des Étoiles"
42. Prelude du 1er acte - La vocation- La vocation
43. Prelude du 2e acte - L'initiation
44. Prelude du 3e acte - L'incantation
Peccadilles importunes
45. Ⅰ. Etre jaloux de son camarade qui a une grosse tete
46. Ⅱ. Lui manger sa tartine
47. Ⅲ. Profiter de ce qu'il a des cors aux pieds pour lui prendre son cerceau
Trois Nouvelles Enfantines
48. Ⅰ. Le vilain petit vaurien
49. Ⅱ. [Berceuse]
50. Ⅲ. La gentille toute petite fille
Noriko Ogawa (Pf: Érard 1890)
エリック・サティ(1866-1925):ピアノ独奏曲全集 Vol.2
1.「天国の英雄的な門」への前奏曲
スポーツと気晴らし
2. 食欲をそそらないコラール
3. ブランコ
4. 狩
5. イタリア喜劇
6. 花嫁の目覚め
7. 目隠し鬼
8. 魚釣り
9. ヨット遊び
10. 海水浴
11. カーニバル
12. ゴルフ
13. 蛸
14. 競馬
15. 陣取り遊び
16. ピクニック
17. ウォーター・シュート
18. タンゴ
19. そり
20. いちゃつき
21. 花火
22. テニス
3つのサラバンド
23. Ⅰ
24. Ⅱ(ラヴェルへ献呈)
25. Ⅲ
犬のためのぶよぶよした前奏曲
26. 内なる声
27. 犬儒派の牧歌
28. 犬の歌
29. 徒党を組んで
犬のための本当にぶよぶよした前奏曲
30.きびしいいましめ
31.家でただ一人
32.遊びましょう
ばら十字団のファンファーレ
33. 教団の歌
34. 大巨匠の歌
35. 大僧院長の歌
短い子供のお話~子供の曲集より
36. いんげん豆の王様の戦争の歌
37. チューリップの小さな王女様が何ておっしゃったか知っている
38. アーモンド入りのチョコレートのワルツ
絵に描いたような子供らしさ~子供の曲集より
39. 一日への小さな前奏曲
40. 子守歌
41. 大きな階段の行進曲
「星の息子」への前奏曲
42. 天職
43. 奥義伝授
44. 秘儀
迷惑な軽い罪~子供の曲集より
45. 大きな頭の友人という存在をやっかみ --
46. 彼のジャムパンを失敬して食べてしまう
47. 足のまめを理由に輪回しの輪を頂戴するために
新・子供の曲集
48. 横着でけちんぼうでろくでなし
49. 無題
50. とってもすてきな女の子
小川典子(ピアノ、エラール1890年制作)
小川典子について
彼女が国際的な実力派ピアニストとして精力的に活躍していることは従前から知ってはいたが、その演奏を聴くのは実はこの盤が初めてだ。小川さんとは2013年頃からFacebookフレンドとなっているが、どういった経緯で友達申請をしたのかは今となってはよく覚えていない。今でも割と頻繁に近況をアップしておられる。以下、ありきたりだがWikiから抜粋でプロフィールを載せておく。
小川 典子(おがわ のりこ 1962年1月28日-)神奈川県川崎市出身のピアニスト。
来歴
東京音楽大学付属高等学校(1977年-1980年)、ジュリアード音楽院(1981年-1985年)卒業後、ベンジャミン・カプランに師事した。1983年、第2回日本国際音楽コンクール2位の後、1987年のリーズ国際ピアノ・コンクールで3位となり、国際的な演奏活動のキャリアを開始した。ニューヨークでは1982年にデビュー、ロンドンでのデビューは1988年となる。 Photo: © S.Mitsuta
1997年からは、スウェーデンのクラシック音楽レーベルであるBISレコードの専属レコーディングアーティストとなっている。2001年よりイギリス人ピアニストの キャスリン・ストットとピアノ・デュオを組み共演 、BISレコードにてフレデリック・ディーリアス作品のレコーディングを行なった。2003年、2人はグラハム・フィトキンの「サーキット」を初演。またクラリネット奏者のマイケル・コリンズとも長く共演を行なう。
小川はラン・シュイ指揮シンガポール交響楽団との共演によるアレクサンドル・チェレプニンの協奏曲をレコーディングしたことで知られる。また、武満徹とは関係が深く、2008年9月にはBBCワールドワイド(英国)のクラシック音楽番組「ビジョナリー」に出演し、武満の音楽を紹介した。
2011年にはクロード・ドビュッシー全曲集のレコーディングを完成させると共に、 モーツァルトの新盤をBISレコードで制作した。ドビュッシーの複数のディスクは武満の録音と同様、「グラモフォン」誌の編集者による特選盤に選出された。小川は菅野由弘、藤倉大等の現代作曲家に定期的に作曲を委嘱、作品を初演している。ロンドンのギルドホール音楽演劇学校、東京の東京音楽大学においては各々教授、客員教授として指導を行なっている。
2011年3月の東日本大震災に対して、復興支援に向けた基金の活動に参加している。
受賞歴
第2回日本国際音楽コンクール・2位入賞(1983年)
リーズ国際ピアノ・コンクール・3位入賞(1987年)
文化庁芸術選奨文部大臣新人賞受賞(1999年)
第5回ホテルオークラ音楽賞(2003年)
川崎市文化賞受賞(2006年)
著作
『夢はピアノとともに』 小川典子、時事通信出版局、2008年2月
『静けさの中から: ピアニストの四季』 スーザン・トムズ著 小川典子訳、春秋社、2012年6月
サティの収録作品、及びこの演奏について
サティの作品であまりにも有名なジムノペディ、グノシエンヌは小川さんの昨年リリースである第1集に入っている。そして、この盤には有名曲としては3つのサラバンドが入るが、それ以外は余り演奏機会がない作品が並ぶ。
この盤の収録曲として目を引くのは子供向けの作品群がフィーチャーされていること。彼は後年、子供たちの世界にとても興味を持っていて、子供たちと交流もしていたということが知られており、その特徴的なコメントがこれ。'I came into the world very young, in an age that was very old' 私はとても歳をとってしまってから非常に若い世界に来てしまった。とでも訳するのであろうか。とにかく、中年期を過ぎてから子供たちの無邪気な挙動や、利害が関与しない純粋な世界に目覚めたということなのだろうか、その辺は良くは分からない。
しばしば見聞きするには、サティには 'Humorous period'=ユーモラスな時期、というのがあったらしく、その期間内である1913年にこの盤に含まれる「子供の曲集」と題した作品を4編まとめて書いている。そして同時期にふざけた題名の「犬のためのぶよぶよした前奏曲」とその後続、そしてその筋には隠れた人気があるSports et Divertissements(邦訳した題名=スポーツと気晴らし)を書いている。
なお、ここに出てきている仏語のdivertissement(ディヴェルティスマン)は英語にもなっている言葉で、伊語のディヴェルティメント(divertimento)と等価。つまりは18世紀中頃の器楽様式で、モーツァルトやハイドンがこの題名で書いたことで有名。主旨としては面白い、軽妙洒脱、などという意味。このディヴェルティメントだが、日本語では「喜遊曲」と書くのが一般的だ。個人的にはスケルツォ=諧謔曲といまだに区別が付いていないのだが。
小川さんの演奏だが、ここではサティという特異な作家の作品集なのでこの盤のみですべてを語ることはできないのはもちろんで、なので多くは書けない。そして、彼女のレパートリーは非常に広いのでそれを聴かないで何か言うのは良くないと思う。そこでちょっとだけ感想を書く。冒頭の天国の英雄的な門、3つのサラバンドを聴く限り、彼女は真っ直ぐな性格で鍵盤に向かって打ち下ろす打鍵力と芯を突く精密な技巧は余り例のないエナジー感を漂わせている。特にサラバンドの最終曲はゆっくりの展開だが時間軸の揺らぎは皆無であって、デュナーミクだけで全てを紡ぎだす大胆な演奏家だと思った。
あとはいくつかの作品が入っているが、特筆すべきは、邦題=スポーツと気晴らし=で、これは、抑揚を最大限につけた渾身の出来だ。とてもデモーニッシュな作品群だが、サティだと思わされる要素がたくさん含まれた楽しい、それぞれが小さな短編集、例えればSFのショートショートのような面白さを内包した佳曲たちだ。
あまり書いても詮無いのでこの辺で本当に終わりにしておくが、最後にもう一つ。小川さんがこの第2集を通して見せている特徴がサティの譜面解釈における小節=実は小節区切りは殆どなくて曖昧=の前後におけるアクセントの付け方だ。後拍つまりアフタービート、もしくは前拍に時間軸を集中した僅かな強調=シンコペーションがとてもお洒落なのだ。こういったセンスのサティは初めて聴いた。これらのシンコペーションがとても斬新なサティであって、しかも何にも媚びない直截な旋律運びは従前のサティ解釈では聴いたことがなかった。小川さんの演奏はもっと早くに聴いておくべきだった。
録音評
BIS SA2225、SACDハイブリット。録音は2015年8月、9月、べニューは小川さんが客員教授を務める東京音楽大学、Jスタジオでのセッション録音とある。音質だがBISの典型的なもので、ハイビット/ハイサンプリングPCM特有のリジッドで澄み渡ったものだ。エラールのフォルテピアノは響板が薄いせいか、小川さんの強打鍵に耐え切れず混変調ノイズや共振音も時折出すが、おしなべて軽量かつ綺麗な音だ。そしてBISの従前どおりの録音ポリシーに従ったソリッドな録りかたは健在で、とても美しいピアノ録音に仕上がっていると言える。

♪ よい音楽を聴きましょう ♫