Chopin: 7 Polonaises@Irina Mejoueva |


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Chopin: 7 Polonaises
Frederic Chopin:
Polonaise No.1 In C-Sharp Minor, Op.26-1
Polonaise No.2 In E-Flat Minor, Op.26-2
Polonaise No.3 In A Major, Op.40-1 "Military"
Polonaise No.4 In C Minor, Op.40-2
Polonaise No.5 In F-Sharp Minor, Op.44
Polonaise No.6 In A-Flat Major, Op.53 "Heroic"
Polonaise No.7(Polonaise-Fantaisie) In A-Flat Major, Op.61
Irina Mejoueva(Pf)
ショパン:
ポロネーズ(第1番) 嬰ハ短調 作品26-1
ポロネーズ(第2番) 変ホ短調 作品26-2
ポロネーズ(第3番) イ長調 作品40-1 「軍隊」
ポロネーズ(第4番) ハ短調 作品40-2
ポロネーズ(第5番) 嬰ヘ短調 作品44
ポロネーズ(第6番) 変イ長調 作品53 「英雄」
ポロネーズ(第7番) 変イ長調 作品61 「幻想」
イリーナ・メジューエワ(ピアノ)
ショパンのポロネーズ、そしてイリーナのポロネーズ集
イリーナの前作は非常に完成度の高いマズルカ全集だった。この盤はそのマズルカ集の続編と位置付けられるもの。マズルカと同様、ポロネーズもポーランド由来の舞曲に分類される民族音楽であり、文字通りポロネーズとは「ポーランド風」を意味する形容詞であり名詞である。ワルツ、マズルカと同様にポロネーズも3拍子の曲。ことショパンが書いた3拍子系のこれらの3つの系列には名曲が多い。
Wikiなどに詳しいのでここでは敢えて書かないが、要は古典的な民族ラインダンス、あるいは日本では学校の運動会などで踊られるあの甘酸っぱい思い出のフォークダンスのフォーメーションに似た造りと思えば遠くはない。即ち、3拍子の小節が3つで1つの踊りの最小要素を構成し、最後の小節は弱拍=休符で終わる。この短いパウゼが挨拶に相当する部分となり、相方に軽く会釈し、そして次の踊りの要素(新しい相方)へと移っていく、という繰り返し構造だ。
今回のポロネーズ集は、イリーナが初めて録音したものと想定され、というのは、彼女は今までショパンあるいはショパン作品を含むコンピレーション・アルバムは数多くリリースしていて、その中にポロネーズはいくつも含まれていたのであるが、ポロネーズだけで組まれた、しかも王道的な1~7番を通しで弾いている盤は探してみたがこれが初めてと思われるのだ。
Op.26-1,2、Op.40-1,2
冒頭のOp.26-1は、インテンポで太目の音調でエモーショナルさとレイショナルさが半ばする高バランス。丹念な中間部を経て再現部から最終部まで一貫して太く、ゆったり目なアゴーギクが印象的。Op.26-2の冒頭は不気味な動機から始まるがゆったり目。そして重厚で暗鬱なオクターブユニゾンが執拗に、しかも歪感なく連打されるところがイリーナらしい。中間部の短いパストラル調のトリオは慎重な歩の進め方でここも綺麗な打鍵。そして不安に満ちた動機の再現を何度か繰り返して重いこのポロネーズは静かに閉まる。
Op.40-1軍隊は個人的にはこの旋律・和声の単純さ故あまり好みではないが、イリーナの屈託のないこの弾き方を聴くと考えを改めようかと思う。テヌートを多く使って揺蕩う明るさを表現するが、左手通奏低音と右手オクターブユニゾンのシンクロが完璧で、真面目に奇を衒わず弾くと純音和声がとても綺麗なことに気が付く。Op.40-2は全マズルカ中でもかなり好きな曲でショパンらしい重厚で暗鬱な名曲。この曲はジョルジュ・サンドとともにマジョルカ島に渡ったときに書かれており、体調も最悪で絶望の淵からの慟哭という感じがよく出ている。この曲の8割の主旋律は左手が担当し、実際の演奏技巧上も高難度だ。ここでのイリーナはデュナーミクを多用し負のエモーションを表現している。
Op.44、Op.53英雄、Op.61幻想
理由は分からないが、この3曲がいわゆる3大ポロネーズ、Op.22(アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ)を加え、4大ポロネーズと言われているようだ。それはもしかするとショパン国際ピアノコンクールのポロネーズ課題ではこの3曲及びスピアナートの中から演奏曲を選択するルールによるものなのかもしれないし、また単に規模と完成度、過去からの人々の愛好度からそういわれているのかもしれないが、その辺の真相は分からない。
閑話休題。Op.44は個人的にはポロネーズに限らずショパンの全作品中でも屈指の最高傑作のひとつと思っている。これまた暗鬱で重厚かつ瞑想的な曲で、それでいて中間部のある種の民族楽的な、あるいは牧歌的な綺麗で抒情的な旋律が印象に残る。この部分はショパンが最期に至るまで断ち切れなかった故郷への望郷の念が描かれたものと個人的には思っている。というか、ショパンはこういった旅愁ないしセンチメンタルな私的心情の断片を作品中に織り交ぜていることが多々ある。ここでのイリーナの演奏は技巧の優劣や感情表現の多寡を超越したものがあって、ただただ聴き入ってしまう。
余りにも著名な英雄と幻想に関しては特に書かない。「イリーナ的」に普通に巧い、とだけ言っておく。あとは実際に聴いて頂ければ、と思う。
全体を通じたまとめ
今回の盤を聴くにあたりベンチマーク対象を選ぼうとMusicArenaの過去を探したが、意外なことに同一構成のポロネーズ集は一つも取り上げていなかった。要は巨匠ものしか聴いていなかったということらしい。それでも、ポリーニとアシュケナージ、割と最近のものではキーシンの演奏と比較しながら聴いた。
イリーナの演奏は毎回聴くたびに何か考えさせられ、また新たな発見もさせられる。ここの全てのポロネーズに関して言えることだが、まず、筆致が太くて墨痕鮮やかだ。しかし、滲みが一切なく細部にわたり明晰で繊細・精緻なのだ。次に、ありふれた言い方だが、テクニックとエモーションが高次元で両立している。技巧的には、ポロネーズに限らずマズルカ、ワルツといった3拍子系の曲に共通することだが、まず基礎をなすのが精密にコントロールされるデュナーミクであり、そこに複数小節に跨るロング・ディスタンスのアゴーギクを重畳して曲想を構築している。それに加え、時間軸に正確な打鍵と極少のペダリングによって鮮明なノンレガートを貫き通しているのだ。グネーシンのトロップ門下生がすべてこのような演奏をするわけではなく、これはイリーナに特有の演奏設計といえよう。
録音評
若林工房 WAKA-4200 通常CD。録音は2016年11月2~4日、ベニューは定番の新川文化ホール(富山県魚津市)。音質は前作のマズルカ集とほぼ同じで静謐な空間を背景としてイリーナの強く太めの打鍵が浮かび上がるというもの。このところこのスタインウェイはとても落ち着いていて、低域から中高域までバランスの取れた馥郁とした音だ。ライナーにはDSD録音とあるが、まさにその通りの形質の録音であり、非常に滑らかで刺激の少ない美音に録れている。
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