B&O BeoPlay H2 |
自宅のデスクトップパソコン
自宅のデスクトップPCはレギュラーのATXミドルタワー仕様。最新状況を開示していないので内容的にはどんなシステム? と思っておられる人は僅かながらいらっしゃるかも知れないので少しだけ紹介すると、ASUS P9X79/Intel Core i7 3930K(6コア12スレッド)/オーバークロック=4.3GHz/Thermaltakeの簡易水冷クーラー/64GB RAM/Adaptec 7805 RAIDカード/Seagate Cheetah 15K RAID5/Windows 10の構成。MBが冗長対応ボードではない点、CPUがXeonでない点、OSがWindows Serverでない点を除けば、ほぼサーバに近い処理速度を持つパソコンだ。この自宅PCは数年に一度、ハードウェア、ソフトウェアともにエンハンスを施しながら今日にまで至っている。
自宅Windows PCに繋いでいたイヤホンが不調
こうした中、大昔のWindows3.1の頃からサウンドカードを載せ、音は必ず出る環境をずっと維持してきた。子供が小さいうちはスピーカーを繋いでいたが、学齢に達してからは勉強の妨げとなると言われてイヤホンを繋いで静かに聴くようにしてきた。現在まで繋いできたのは2011年購入のスマホ=当時のエリクソンXperia Arc に付属のリモコン/マイク付きイヤホン。

ましてやPCでYouTube、iTunesなどを聴く程度の用途であるならばオーバースペックともいえる品質なのだ。ところが、昨年末あたりからこのイヤホンは高域が明らかに落ちていた。そして昨今、この症状は更に顕著となったため、分解して原因を探って治そうかとも思ったのだが、経年劣化で修復不能だった場合には時間だけを浪費し徒労に帰す気もした。そういうことで、ここはさっぱりと諦めて買い替えることにした。従前どおりカナル型、あるいはこれに近いインイヤー型にしようかとも思ったのだが、常々この手のイヤホンは両側取出しの細いケーブルが手に当たって邪魔なうえ、その度ごとにぼそぼそ言う物理ノイズが煩いこと、また閉塞感があって聴き疲れすることなどからオーバーヘッドバンド付きオンイヤー型の軽い掛け心地のヘッドホンにしようと考えた。
ヘッドホンを手に入れるにしても、何が良いのか
私のこの用途からはハイファイ級の音質である必要はなく、また遮音性やノイズキャンセリング機能もいらない。要は、明らかに劣悪な音でなければ良いので、イメージ的には昔に流行ったSENNHEISER(ゼンハイザー)HD414(拝借写真を参照)のような軽量オープンエア型が良いと思っていた。ただ、HD414はとっくの昔にディスコンで、その後復刻したらしいがそれも既にディスコン。


PC用のイヤホンあるいはヘッドホンという市場
そのフロアではイヤホン/ヘッドホン売場は相当な面積を占めており、現在の市場におけるこれらの音響機器のニーズの多さを思い知る。この売り場には若者を中心とした客がたくさん入っており、人気のブランドの前には人だかりも出来ていた。イヤホンとヘッドホンの品数の比率はだいたい5:1くらいであろうか。殆どの若者はスマホや携帯プレーヤーに繋ぐことを前提としてイヤホンを探しているのだろう。
そのためインイヤー型あるいはカナル型のイヤホンが百花繚乱の状態にあるということを悟る。値段も千差万別で簡易な数百円のものから素材に貴金属を使った数十万円の高級品まで、バリエーションは実に豊富だ。ヨドバシ横浜ではメーカーごとに展示ブースが設けられているので、これらを巡回し、見知ったブランドのヘッドホン、あるいは興味本位で高額なイヤホンも片っ端から試聴する。
試聴を始めて暫し、衝撃が走った。どういうことかというとこれらの製品の音質はおしなべてエキセントリック、有体に言うと音がとても悪いのだ。大体の製品が低域の充実を謳っているが、要するに50~200Hzあたりを増強、つまりバスブーストしているものが殆どなのだ。そして高域がチャラチャラ言って五月蠅い。中域の歪が多くてボーカルが暈けたり割れ気味になっているものが半分ほど、逆に痩せていてキンキンした声域のものが半分ほどと、惨憺たる戦績だ。
B&Oの製品は特性がフラットでノーブルな音質だった
それでも、私のような聴覚にフィットするフラットバランス基調の製品が少数ながら見つかった。ソニー、テクニカ(audio-technica)、ゼンハイザー(Sennheiser)、AKGのそれぞれ一部の製品だ。しかし、これらは価格が恐ろしく高い。2時間ほど試聴を繰り返し、疲れてきたし、もう諦めて帰ろうかと思ったその時、ひっそり佇む小さく地味な展示台が目にとまった。デンマークのB&Oだ。そうだ、この選択肢があったか、と内心小躍りした。さっそく繋げて聴いてみる。どの製品もレンジはフラットで、しかも音楽性が感じられる整った音調で歪感は皆無。実にスムーズでスイートな音に心が安らぐ。このブランドは大昔から変わらずこの音なのだということを再認識した。
B&Oの展示台には高価な製品もあったが、それらと普及価格帯の製品とでは値段の違いほどの有意差は見つけられなかった。それで、価格と聴感がバランスしたこのBeoPlay H2をチョイスしたという次第。なお、この製品のリリースは少し古く、Web上には既に様々なインプレが載っているのでそちらを参照願うとして、以下にその姿を掲載しておく。
製品パッケージ、および実物の写真






まとめ
イヤホン/ヘッドホンの市場は活況を呈している。それは、大昔のオーディオブームの頃を彷彿とさせる熱気に満ちたものだ。つまり、周波数レンジや歪特性、音場再現性、音像定位特性などという、音響機器として本来備えるべき特性の純然たる優秀さを競うのではなく、明らかに個性的な音作り、過度に誇張した帯域、そしてブランドに対する固定した商品イメージ・音のイメージなどを使ってのマーケティング、つまり顧客の取り込み合戦が展開されているということだ。
例えば、この数年、日本国内ではBeats Electronics製のイヤホン/ヘッドホンが好評を博して売れまくっているが、なぜこれらが売れるのかを考察すると市場の底に横たわる理屈が見えてくる。このBeatsの製品だが、低音はボンボン言うし高域は濁って汚い。それでも、愛好する音楽CDを心地よく、そして自分たちがこれぞと思う雰囲気で再生できる機器があったならば、彼らは単純にそれらを買うのだ。ラップやヒップホップ、その他のジャパニーズ系の軽音楽の大部分のCD音源は低音がスパッとローカットされているので、その少し上と更に下がブーストされたイヤホン/ヘッドホンだと音が補完されて具合が良いという、それだけのことだ。
一方、JBLという大昔に一世を風靡したブランド(=現在はハーマン・インターナショナルという資本が中国製造する製品ブランド)が提示するヘッドホンの音質はBeatsと基本は似ていて、これは明らかに二匹目のドジョウを狙っているのがよくわかる。それでも、紙臭くてパーチクルボードの鳴きが強い当時のスタジオモニターに近い雰囲気をうまく再現しているのには笑ってしまった。このヘッドホンには紙製のコーンもパーチクルボードも使われていないにも拘らず、だ。

今回、色々と考えさせられた製品選びだったが、最終的にはまともな音がするB&Oの製品を手にすることが出来て、個人的にはとても満足している。

♪ よい音楽を聴きましょう ♫