タートバン@伊勢佐木町 |
店の名前が特異で印象的だった
フレンチとワインを特色とする店がここにあることは随分と前から知っていが、なぜか入ったことはなかった。このところ新規開拓もしていないのでふらりと入ってみることに。ここを知っていた理由はその店名にある。前の会社に勤めているとき、職場から至近の赤坂に老舗のショットバー、タート・ヴァンがあって頻繁に通っていたからだ。
伊勢佐木町のこの店の名には揺らぎがあって、欧文表記では「Bistro Tastevin」、和文表記では単に「タートヴァン」、あるいは「びすとろ たぁとばん」とある。綴りでは赤坂の方はTâte-vin、こちらはTastevinで、どちらも意味としては同じ。これはワインのテイスティングを行う時の道具で、ちょっと変わった形をした金属製の器具を意味する。
まずは生ビール、そしてメインをオーダー
階段を上って入り口を入るとL字のカウンタがあって中が厨房。奥へ進むと窓際に広い空間があり4人掛けのテーブル席が並ぶ。歳相応の女性スタッフが迎えてくれ、奥のテーブルへ通された。まずはビールを頼む。オーダーは本日のランチメニューと称するものから、家内はカジキのムニエル、私は牛肉のラウンドステーキというのを頼む。生ビールは程なく到着。
凝ったオードブルはなかなかのもの
暫ししてオードブルも到着。綺麗で卒のない盛り付けであり、この店がただものでないことが分かる。女性スタッフからは説明がなかったので詳細は分からないが写真(ピンぼけで失礼)の通りの四品。左側は鶏肉とその他の食材を圧縮し蒸し上げたハムのようなもので、たぶんガランティーヌだろう。製法はゼリー寄せ或いは八幡巻に近い料理で、これはとても美味しい。
その上が蓮根と牛蒡の削ぎ切りを赤ワイン少々と醤油・砂糖などで甘辛く煮たもので、いわば洋風の「きんぴら」。右側がよく分からない。素材はマッシュポテトと挽肉のようだがポロポロと崩れてうまく食べられない。フォークとナイフで挟んで再圧縮して崩れる前に口に運ぶ。一応、雰囲気としては卵が配合されないトルティージャという感じ。これも非常に美味。
大皿の中央には自家製らしい胡瓜としめじのピクルスが潜んでおり、上等なビネガーに浸ったこれらは香りが本当に良く、かつ上品で軽量な酸味が奏功し非常に美味しい。但し量は少ない。こんなに上等なピクルスをいただくのは本当に久々だ。ピクルスが美味しい店に外れはない。つまりこれは日本料理や蕎麦屋が出す糠漬けのクォリティと類似のベンチマークだ。
自家製コンソメとバゲット、そしてサラダ
続いてスープとバゲットが到着。一掬いしてみる。濁ってはいるけれどもこれは紛れもない自家製コンソメである。市販の民生向け、あるいは業務用とは一線を画する濃密さ、そして自然な甘みと旨味が凝縮されており、実にいい仕事が施されたスープといえよう。中に沈む玉葱およびエノキが和風とも取れるような絶妙で穏健な風味を演出している。
バゲットはその辺のポンパドゥルなどで調達しているのかもしれないが、味と香りは一線級。卓上のエクストラバージン・オリーブ油を小皿に滴下し、これを少しずつ含侵させながら頂くと風味が増幅され具合が良い。後にやってくるメインディッシュのソースと合わせるためにここは我慢してバゲットを温存する。そしてメインかと思いきや、ルッコラのサラダが登場。
メインディッシュ2種
デザートと珈琲
メインディッシュが終わったのを見計らいデザート、そして冒頭に頼んでおいた温かい珈琲がサーブされる。シェフ自らが砂糖の分量を誤ったとエクスキューズするチョコレート味のティラミスは確かに甘い。が、これはこれでありの稠密な味であって、添え付けの甘くないバニラアイスおよび珈琲と共に頂くと甘みは中和されて具合はちょうど良くなる。
着席してから食べ終わって店を出るまで約一時間を要した。この店はもっと早くに訪れておくべきであった。こんなに美味しく完成度の高い本格フレンチのランチセットを千円以下で提供するなんて、今頃の世間常識に照らしてどこかおかしい。今後、この店が私たちのランチの巡回経路に組み入れられることは確定した。様々なバリエーションを試してみたい。
お店データ
ビストロ タートバン(Bistro Tastevin)
横浜市中区伊勢佐木町4-121
ストークイセザキ5番館205
電話:045-231-7720
営業:月~金:17:00~翌2:00
土日祝:12:00~翌2:00
※ ランチ:12:00〜17:00 LO:15:30
定休:第3月曜
最寄:市営BL 伊勢佐木長者町 6分
JR関内 10分
京急 黄金町 10分
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