Duo Sessions@Julia Fischer & Daniel Müller-Schott |
http://tower.jp/item/4304168/
Duo Sessions: Julia Fischer & Daniel Müller-Schott
Kodály: Duo for Violin and Cello, Op.7
1.Allegro serioso, non troppo
2.Adagio
3.Maestoso e largamente, ma non troppo lento
Schulhoff: Duo for violin & cello
4.Moderato
5.Zingaresca. Allegro giocoso
6.Andantino
7.Moderato
Ravel: Sonata for Violin & Cello
8.Allegro
9.Tres vif
10.Lent
11.Vif, avec entrain
Halvorsen: Passacaglia for Violin & Cello/Viola(after Handel)
Julia Fischer (Vn) & Daniel Müller-Schott (Vc)
ユリア・フィッシャー&ダニエル・ミューラー=ショット: デュオ・セッションズ
コダーイ(1882-1967): ヴァイオリンとチェロのためのデュオ Op.7(1914)
シュルホフ(1894-1942): ヴァイオリンとチェロのためのデュオ(1925)
ラヴェル(1875-1937): ヴァイオリンとチェロのためのソナタ(1922)
ハルヴォルセン(1864-1935): ヴァイオリンとチェロのための「パッサカリア」
ユリア・フィッシャー(ヴァイオリン)
ダニエル・ミューラー=ショット(チェロ)
コダーイ、シュルホフ
コダーイの作品はハンガリー色の強い前衛的な和声で、調性がはっきりしているのは全体の半分程度だろうか。不可思議系の非和声部はバルトークなんかに通じるもの。1楽章アレグロは野太いミューラー=ショットのVcが主旋律を奏で、明媚なユリアのVnが高域伴奏を務めヴィヴィッドにリズムを刻んで行く。調性は割と明確な方だ。その後民族楽的な不安定で土の匂いのするクロマティックや回音などが混ざる緩やかな中間部を経て、再び冒頭主題が再現され、そして静かに閉じる。2楽章は緩徐楽章。ここの動機もミューラー=ショットのVcが太く奏でる。その後を承継しユリアが低域弦を操ってゆったりと瞑想的な主題を歌っていく。その後は高域弦によるポルタメントなどで不思議な浮遊感を紡ぐ。調性は判然とはしないが無調性とまでは言えない。中間部はアレグレットくらいに加速するが後半は再び緩徐な流れへと戻る。3楽章はVnのカデンツァ風独奏が長めの冒頭を象る。Vcが参入してきて混然一体となった不協和音が支配するかと思いきや、急に有調性の無窮動パートが始まる。Vnのピチカートとボウイングが激しく交代する目まぐるしい展開。中間部は美しい和声を見せるがすぐに非和声へと戻り激しく混沌としたコーダへと進む。
シュルホフの作品はほぼ無調性と言って良く、複雑でデモーニッシュな曲想。1楽章はゆったり目だがテンポが複雑でどちらかというとポリリズムの技法を用いたパーカッション的味わいのある曲。曲の構造は旋律/和声ともにコダーイほどの複雑性はなく、端的に言ってしまうと対位法のように主旋律と副旋律だけで組み立てられ、乱暴な言い方をすると伴奏部がないという構造だ。2楽章は一転してホモフォニーでVcが伴奏部、Vnが旋律部と役割分担が明確。但しVcは伴奏和音とティンパニ的な打楽器の役割も兼ねており、単純な和声がミニマル的なリフレインを長く繰り返すという構図。3楽章は無調性と有調性の間くらいで揺らぎ、情感的にも明晰さと暗鬱さを行ったり来たりする不安定な展開。瞑想的といえば瞑想的。4楽章は土着の民族楽的味わいで力強い。ほぼ無調性で展開される基本はミューラー=ショットのVcが低域部を担当するホモフォニー形式だが、主客が逆転することもあり、また双方が拮抗した掛け合いを演じる対位法的要素も強い。
ラヴェル、ハルヴォルセン
ラヴェルのソナタは彼の作品群中でも異色中の異色で、非和声が主体、かつ調性が曖昧な一曲。副題は「ドビュッシーの思い出に捧げる」とあるとおり、ラヴェルがドビュッシーへのオマージュとして書いた作品。作曲の背景等の解説はWebのあちこちに出ているので参照されたいが、要は最晩年にドビュッシーが構想した種々の楽器のための6つのソナタ「Six sonates pour divers instruments」が未完に終わったことを残念がって書いたのではないかと想像している。実現しなかった6つのソナタのうち完成したのは3つだった。そのなかのVnソナタ、Vcソナタと、このラヴェルのVn-Vcソナタの作りと響きは似通っている。あるいはバルトークと類似とでも言おうか、そんな不協和で不安定な不可思議系の曲だ。ミューラー=ショットもユリアも野太く大胆な攻めを聴かせている。
最後のハルヴォルセンのパッサカリアは恐らくこのアルバムの眼目。これは原曲をヘンデルのチェンバロ組曲ト短調HWV432のパッサカリアから取っていて、このアルバム中、唯一の和声・協和音、有調性の曲となっている。ハルヴォルセンのパッサカリアは譜面を調べる限りVnとVaのためのパッサカリアとなっているので、たぶんVaパートをVcに置き換えた演奏と思われる。ここでの二人の掛け合いはとてもエキセントリックでスリリング、そしてテンペラメンタルだ。VnとVcとでは主従はなくてほぼ対等に渡り合うという構成。元々のヘンデルの原曲が瞑想的で求道的な旋律であることから、二人が激しいピチカートを交えてのアドリブ的な正面からのぶつかり合いは更なる求道性を生み出し、まさに手に汗握る展開となっている。これは一聴の価値があるし、また実際に聴かないとこの愉悦は理解できないだろう。
録音評
Orfeo C902161A、通常CD。録音は2014年9月23-24日 ミュンヘン,バイエルン放送 第1スタジオとある。ライナーにBR KLASSIKのクレジットがある通り、バイエルン放送とOrfeoの共同制作。プロデューサーはChristiane Delank(Orfeo)、Falk Häfner(BR)、トーンマイスターはChristiane Voitzとある。音質は透徹された空間が広大に拡がり、割と大きめのリアルな音像が眼前に定位する。音色はほぼ脚色なしの無味無臭、透明度の高いもので楽器そのものの音が迫り来る。相当な高音質盤といえる。
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