Satie: Piano works@Olga Scheps |

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Olga Scheps plays Satie
Erik Satie:
Six Gnossiennes
Ⅰ: Lent
Ⅱ: Avec etonnement
Ⅲ: Lent
Ⅳ: Lent
Ⅴ: Modere
Ⅵ: Avec conviction et avec une tristesse rigoureuse
Cinq grimaces pour ‘Le songe d'une nuit d'ete'
Ⅰ. Preambule
Ⅱ. Coquecigrue
Ⅲ. Chasse
Ⅳ. Fanfaronnade
Ⅴ. Pour sortir
Trois Gymnopedies
Ⅰ: Lent et douloureux
Ⅱ: Lent et triste
Ⅲ: Lent et grave
Je te veux
Trois Sarabande
Ⅰ.in F Minor
Ⅱ.in D Minor, "a Maurice Ravel"
Ⅲ.in B-Flat Minor
Tendrement - Valse chantee
Chilly Gonzales:
Gentle Threat
Olga Scheps (Pf)
オルガ・シェプス / サティ: ピアノ作品集
サティ:
6つのグノシエンヌ
「真夏の夜の夢」のための5つのしかめ面
3つのジムノペディ
ジュ・トゥ・ヴ
3つのサラバンド
やさしく
チリー・ゴンザレス(ジェイソン・チャールズ・ベック):
ジェントル・スレット
オルガ・シェプス(ピアノ)
輸入元や販売店の評価は、抒情的で情感豊かな演奏とのこと・・
オルガの演奏は過去に二枚しか聴いていないのであまり断定的なことは言えないが、奇を衒わない実直さ、ならびに小手先の妙な小技を使わないストレートな表現が身上と思っている。しかし、世の中的にはそうではなく、テンペラメンタルで叙情豊かな演奏をするソリストとの評価がなされているようだ。
以下、ソニー・ミュージックの販促文を引用:
「音符を真珠のように輝かせる」「ピアノの詩人」などと評され、昨2015年の初来日で大きな話題を呼んだオルガ・シェプスのRCA Red Sealへの新録音は、今年生誕150年(5月17日)をむかえるサティの最も有名なピアノ曲を収録した「サティ・アルバム」です。
「音楽界の異端児」とされ、ドビュッシー、ラヴェルら印象派の作曲家にも大きな影響を与えるのみならず、彼のあとの20世紀の音楽が辿ってゆく方向性に重要な一石を投じた超個性派エリック・サティ。バレエ音楽・歌曲以上に、サティが最も多くの作品を残したのがピアノ曲で、当アルバムには、誰もがそのメロディを知っている「ジムノペディ第1番」や「ジュ・トゥ・ヴ」など、サティの代表作が収められています。オルガの紡ぎ出すピアノ・サウンドの美しさと深い抒情性、開放感はサティの音楽の美質を香り高く表出しています。
ボーナス・トラックとして、カナダ出身のピアニストでありエンターテイナーの天才音楽家ことチリー・ゴンザレスによる「ジェントル・スレット」を収録しています。オルガはこのマルチ・ミュージシャン、チリー・ゴンザレスとステージでよく共演しており、その成果としてこのボーナス・トラックが収録されることになりました。
オルガ・シェプスモスクワに生まれで、ケルン音楽院で名教師パーヴェル・ギリロフに学んだ才媛で、2010年にアリス=紗良・オットとドイツの権威ある「エコー賞」を二分したほどの人気と実力を備えるピアニスト。ドイツ・クラシック音楽界の大御所評論家ヨアヒム・カイザーをして「オルガ・シェプスは真の発見だ。彼女が弾くようなショパンをこれまで私は聴いたことがない」と言わしめた個性的才能の持ち主。
ソニー・ミュージック
そして以下がタワレコの販促文:
2015年の初来日で日本での人気に火が付いたロシア出身のピアニスト、オルガ・シェプス。新作では、2016年に生誕150年を迎えたエリック・サティのピアノ作品を収録しました。サティの持つ深い抒情を誠実な音で紡いでいき、変幻自在に変えていく音色の色彩は聴き手に作品のイマジネーションを広げてくれる。名曲「3つジムノペディ」や「ジュ・トゥ・ヴ」などを優しく歌い上げています。そして最後のトラックにはあのカリスマ的人気を誇る天才音楽家、チリー・ゴンザレスが作曲した「ジェントル・スレット」収録!サティを思わせるメロディを持つこの作品を儚くも美しく奏でる。
intoxicate (C)上村友美絵 タワーレコード (vol.122(2016年6月10日発行号)掲載)
末尾の録音評にて述べるが、この録音はスピーカーを使用した2チャンネル・ステレオフォニック方式で聴いた時とヘッドフォンで聴いた時では大きく印象が異なる。以下のインプレッションはスピーカーで聴いた時のものを基本としながらヘッドフォン聴取時の感想も少し交えながら書く。
過去のCDの二枚について私は以下のような感想を書いている。いずれも情感表出からは少し距離を置いたオルガの静的な曲想について述べており、コマーシャリズムが述べる意見とは少し乖離がある。
▶ ショパンの作品集
▶ ラフマニノフの作品集
清潔で透き通り、穏健かつエナジー感が削がれた孤高のサティ
世の中的にオルガの演奏がどう評価されているかはともかく、私がこの盤を聴いて思ったのは、オルガの基本スタンスには前作のショパン/ラフからぶれがなくて一定しているということ。それがフランス印象楽派の端緒となった鬼才の作品であろうが、オルガ自らの弾き方を貫き通しているというところが潔く、とりもなおさずエナジーは低く保ちつつ、そして情感を剥き出しにせず、淡々と弾き進むのだ。
グノシェンヌの3番あるいはジムノペディの1番あたりの非常にポピュラーな作品を聴くととても分かりやすいのであるが、第一印象は割と平坦で情感表出が少なく、そして静謐であるということ。では、彼女は表現したいものが何もないのかというと答えは否。控えめながら巧みなペダリングによって主旋律の持つ音価のサスティン、伴奏部の残響をコントロールすることで時間軸の揺らぎを表現しているのだ。だが、譜面上のテンポはきっちりと守るというポリシーに基づき、まるでメトロノームに沿わせたように律儀に小節を刻んで行く。
ジムノペディ3番に至り、彼女の演奏設計の端的な特徴がようやく見えてくる。歩調はインテンポあるいは指定よりかはちょっとだけ遅めに設定し、パラグラフのアインザッツは僅かに強いアタックで入り、その後はリリースまでを滑らかに息継ぎしないでデュナーミクを用いて強弱を付けながらディミニッシュ気味に弾き切る、ということを繰り返す。
アゴーギクを封印し、デュナーミクだけでサティのエモーションを表現する
こういった設計の神髄はその次に置かれたジュ・トゥ・ヴで開眼する。ヘッドフォンで聴くと残響成分が正常な位相で耳に届かないため直接音だけが強調される関係で実につまらない展開なのだが、スピーカーで聴くと豊かなアンビエントが精密にコントロールされ、時間軸を固定していることを忘れさせてくれるような和声の大きな揺らぎに包まれる。
サラバンドが3つ並ぶが、これらは共通して明らかにスローテンポで、ジュ・トゥ・ヴよりも更に徹底した時間軸管理によって直進性の強い演奏となっている。サティのサラバンドは、他の多くの著名録音においては時間軸の揺らぎを最大限に利用することで退廃的で放蕩なサティの懸濁したメンタリティの内面を抉るように表現する。しかしオルガのこの演奏はそういったくぐもった印象とは無縁で、まさに透き通った見通しの良いサラバンドなのだ。
サティ独特の不協和音と協和音を交互に畳みかけてくる曲想においては不協和音が勝る解釈が主流を占めるなか、この演奏では非和声部が殆ど混濁せず、なぜかそれら全部が純和音に聴こえるほど嫌な音が全くしない爽やかで静謐なサラバンドなのだ。スピーカーで再生すると、オルガのサスティンが呪術的に巧いことが分かるがヘッドフォンだとそれには気が付かない。単に音価を離散的に並べただけに聴こえてしまう。これらは是非とも普通のスピーカーを左右に並べて聴いてほしいと思う。
長くなった。残りと、ボーナストラックとして入るチリー・ゴンザレスの作品に関しては割愛する。とにかく異端と言えば凄く異端なサティだった。賛否はあると思う。古典的かつ伝統的なサティ愛好者からは邪道、あるいはまったく面白くない、綺麗すぎてサティとは思えないなどの誹りを受けそうだが、私は非常に興味深く聴いた。こういった竹を割ったような奇を衒わない何の仕掛けもない純音系のサティだってありなんだと思うし、それをやって聴かせてくれたオルガに快哉だ。
録音評
RCA Read Seal(SONY)88985305402、通常CD。録音は2016年、ドイツ、マリエンミュンスター、コンツェルトザールとある。本文中にも少し書いたが、この盤のアンビエント成分は尖鋭でかなり特殊だ。これらは明らかにステレオフォニック方式での聴取を前提として調製されている。一方、ヘッドフォン聴取=正確に言うとバイフォニック (Biphonic)方式=では残響成分が録音時の正しい位置関係で再生されない。この録音をヘッドフォンで聴いた場合、サスティンのタイミングが僅かに速く耳に届くためアンビエントが直接音と重なってレベルダウンする。そうなると一次波としての直接的なPfの弦の発声音だけを聴いてしまうこととなり、二次波がなくて平坦でつまらない演奏となる。
オルガの演奏は時間軸をストイックに堅持したもので、感覚的な時間軸の揺らぎ成分はペダルワークで補正して残響、即ち解放弦の音の減衰の多寡に依拠しているため、バイフォニックでの聴取はこの苦労を台無しにするという格好になる。このことに気が付いて両環境で何度も繰り返し確認・検聴したが、こういった結論に達しざるを得なかった。つまり、この盤はヘッドフォンス・ステレオ=iPodやiPhone、ウォークマン等=では正しい音場は得られないので、通常の2チャンネル・ステレオフォニック方式で聴くべきだ。
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