Kaleidoscope: Mussorgsky: Pictures Etc@Khatia Buniatishvili |

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Kaleidoscope: Khatia Buniatishvili
Mussorgsky: Pictures at an Exhibition
01. Promenade
02. Ⅰ. Gnomus
03. Promenade
04. Ⅱ. Il Vecchio Castello
05. Promenade
06. Ⅲ. Il Tuileries (Despute Denfants Apresjeux)
07. Ⅳ. Bydlo
08. Promenade
09. Ⅴ. Ballet des Poussins dans Leurs Coques
10. Ⅵ. Samuel Goldenberg Undschmuyle (Deuxjuies - L'un Riche Et L'Autre Pauv
11. Promenade
12. Ⅶ. Limoges - Le Marche (Lagrande Nouvelle)
13. Ⅷ. Catacombae (Sepulcrum Romanum)
14. Cum Mortuis in Lingua Mortua
15. Ⅸ. La Gabane sur des Pattes de Poule (Baba-Yaga)
16. Ⅹ. Lagrande porte (De L'ancienne Capitale kiev)
17. Ravel: La Valse
Stravinsky: Three Movements from Petrushka
18. Ⅰ. Russian Dance
19. Ⅱ. Petrushka's Room
20. Ⅲ. The Shrovetide Fair
Khatia Buniatishvili (Pf)
ムソルグスキー: 組曲「展覧会の絵」
01. プロムナード
02. 1 小人(グノーム)
03. プロムナード
04. 2 古城
05. プロムナード
06. 3 テュイルリーの庭 - 遊びの後の子供たちの口げんか
07. 4 ビドロ(牛車)
08. プロムナード
09. 5 卵の殻をつけた雛の踊り
10. 6 サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ
11. プロムナード
12. 7 リモージュの市場
13. 8 カタコンベ - ローマ時代の墓
14. 死せる言葉による死者への呼びかけ
15. 9 鶏の足の上に建つ小屋 - バーバ・ヤーガ
16. 10 キエフの大門
17.ラヴェル: ラ・ヴァルス
ストラヴィンスキー: 「ペトルーシュカ」からの三楽章
18. 第1楽章:第1場より「ロシアの踊り」
19. 第2楽章:第2場より「ペトルーシュカの部屋」
20. 第3楽章:第3場より「謝肉祭」
カティア・ブニアティシヴィリ(ピアノ)
国際的に活躍の場を広げているカティア・ブニアティシヴィリの新譜はKaleidoscope(カレイドスコープ)=万華鏡
展覧会の絵、ラ・ヴァルス、ペトルーシュカの三楽章は、それぞれは非常に著名な作品だが、これらを敢えてカップリングしたというのは一風変わっていて、しかも相当にチャレンジングだ。そしてカティアの現在のヴィルトゥオージティを計測するには格好の取り合わせに思う。また、アルバム・タイトルである「カレイドスコープ」というのはセールスを意識したキャッチコピーでもあるのだろうが、とても秀逸だ。
これら三つの作品にはそれぞれオーケストレーション版が現存する
MusicArenaでは今までこれらの作品を何度も取り上げてきている。そしてその都度注釈を付けてはいるが、今一度以下に簡単に触れておく。展覧会の絵の原曲は独奏ピアノ譜だが、後年ラヴェルによってオーケストレーションされた管弦楽版が非常に有名。ラヴェルのラ・ヴァルスは元々が管弦楽曲として書かれているが、後年、作家自身の手によりピアノのための四手連弾譜、独奏ピアノ譜が書かれた。ストラヴィンスキーのペトルーシュカはバレエ曲であり当然に管弦楽曲が原曲であるが、作家自身の手により抜粋のピアノ独奏譜が書かれ、それがペトルーシュカからの三楽章と題している。
ことほど左様にこれらの作品に共通するのはピアノ独奏版とオーケストレーション版の両方が現存し、なおかつ今日においてはそのどちらも頻繁に演奏され、また録音もされているという事。オーケストレーション版が生得的に持っている広大なダイナミックレンジ、多くの器楽パートが発する夥しい音数と多彩な音色に拮抗すべく、ピアニストはたった一つの楽器で立ち向かわねばならない。即ち、オーケストラに劣らぬよう大きなパレットから多量の色彩、ダイナミックレンジを引き出す必要があるのだ。それが冒頭に述べた「現在のヴィルトゥオージティを計測する」ことの真意である。
展覧会の絵
思っていたよりかは相当に遅い滑り出しだった。第1プロムナードが余りに遅くてこの先どうなるのだろうと思った。音量も少なめで打鍵は丁寧、しかし、よくよく聴き込むと丁寧なだけでなく左右手のバランスを考えながら次の一手を考えている風にも思えた。
それは、次のグノームで印象は一変する。非常に早足で軽やかに駆け抜ける。指定テンポよりかは2割がた速いのではなかろうか。短かめのプロムナードを経た古城だが、今度は一転して内省的な弾き方で、第1プロムナードと似たような遅いテンポだ。時間軸の揺らぎはとても大きく抒情性を湛えた謡いといってよい弾き方だ。テュイルリーは色彩感に満ちたヴィヴィッドな展開となり、ここはアップテンポでやはり指定よりかは2割がた速そうだ。
ビドロは非常に重く、これまた速度的にはとても遅い。この曲は通奏低音を担う左手の処理が難しいパートの一つだが、カティアの強烈な打鍵にも拘らず歪や混濁は殆どなく巻き弦のピュアな音が響き渡る。次の卵の殻をつけた雛の踊りは一転速く、サムエル・ゴールデンベルクは遅い。そしてリモージュは相当に速い。ここまででカティアの描いた大体の演奏設計が見えてくる。速いパッセージはより速く、遅いパッセージはより遅くといったデフォルメが施されているのだ。終局に向けたバーバ・ヤーガは重くて高速という相反する要素を含む難しい曲で、ここはビドロと並び通奏低音を叩く左手の処理が難しいパート。カティアの打鍵は完璧でやはり混濁は認められない。直進性の強い譜面に時間軸の揺らぎを僅かずつ混入させながら暗く力強く走り抜けていく。最後のキエフだが、これが一番普通というか、ほぼ無加工で譜面通りのトレースを見せている。ここまでの特異な解釈からして最後にはどんな仕掛けを用意しているのか、とわくわくしていたら肩透かしだった。コーダは特に穏健で落ち着き払った締め方だ。
曲が終わってみて改めて思うのが、この演奏設計では見た目の色彩感は豊かであるものの照度は全般に低く、闇を連想させるということ。重い質量感でありながらの速い展開あり、そして静謐な空間を内省的に進む遅い展開ありと、とても多彩ではあるが、かたやカレイドスコープという鏤められた原色を想像させるワードからは少し乖離した色彩感、即ち減色された風合いなのだ。これはカティアのソニー・デビュー盤であるリスト作品集に相通ずるものがある。
ラ・ヴァルス、ペトルーシュカからの三楽章
ラ・ヴァルスに関してはオケとの対比は勿論だが、二手連弾版と比較されることもあり、独奏版は不利といえば不利だ。しかし、カティアのこのラ・ヴァルスはゴージャスさと音数の多さで他の版と単純に拮抗しようとするものではないように思う。そうは言っても一定以上の技巧水準を達成していることから明媚で煌びやかな和声、超高速パッセージによる夥しい数の音粒が飛散し続ける超絶的な高速演奏となっている。通常の演奏においては舞曲である「ワルツ」を必要以上に意識したテヌートとスタッカート、即ちルバートの多用が見られるが、カティアのこの演奏設計はそうはなっていない。そのため全体的にべたつきのない清廉な印象を抱く。前述のとおり、アゴーギクに頼らず精緻にコントロールされたデュナーミクを主軸として歩を進めているのだ。これはちょっと意外だった。
ペトルーシュカの方もヴァルスと似た感じでさらさらと流れて行く印象だが、途中の2楽章のデモーニッシュなパートにおいては展覧会で見せたような内省的な深い弾き込みとなっている。これは例によって質量感があるパッセージなのに超高速性能を存分に発揮しているというある種の離れ技。最終章の特徴である咳き込むような苛烈なアチェレランドと微細で多数の分散和音の連打は目まぐるしく現在のカティアの充実した打鍵技術を垣間見ることができる。昨今で印象的だった同曲はヴァネッサ・ベネリ・モーゼルのバルバムにも入っていたが、技術的にはほぼ互角、シンパシーの強さではヴァネッサ、加速度感と冷涼さといった点ではカティアといえようか。
録音評
Sony Classical 88875170032、通常CD。録音は2015年8月23日~26日、ベルリン、フンクハウス・ナレーパシュトラッセ、ザール1とある。音質はひとことで言って素晴らしい。S/Nに優れた漆黒で静謐な背景にカティアの駆るスタインウェイがフェザータッチの触感で軽く浮かび上がる。録音スタッフはソニーの海外組か、もしくはアウトソースのようだが詳細は分からない。
こういった話を持ち出して理解できる人がどれほどいるかは不明だが、現在のソニー・ミュージックの源流は40年ほど前に日本国内で歌謡曲のレコード出版において一世を風靡したCBSソニーから始まる。CBSとは全米の三大ネットワークに属するテレビのキー局、コロンビア放送であり、配下にはコロンビア映画やコロンビア・レコードなど、今でいうところの多数のメディア会社を擁していた。ソニーと組む前のCBSの提携先は日本コロムビアだったわけで、往時の歴史をそのまま現在の社名に残している。但し両者には設立や運営に係る提携関係、また資本関係はなかったと記憶する。
日米共通でCBSの瞳のロゴを冠したLPレコードが巷を席巻していた良き時代、米国のポップスも日本の歌謡曲(天地真理、南沙織、太田裕美、山口百恵、キャンディーズ、松田聖子・・)も、そしてジャズもクラシックもその音質は一貫していた。それはベイヤーかノイマンのマイク、ニーヴのコンソール、そしてスカーリーのマルチトラック・マスターデッキたちが作り出す軽量かつ明媚な梨地仕上げの気品あるプレゼンスを備えた録音だった。なぜかこのカティアの新譜のピアノの音はその黄金時代を彷彿とさせる音色に仕上がっているのだ。これはあくまで偶然だと思うが、もし往時の音を再現したというなら凄いと言うほかない。その場合、いったい誰をターゲットに調音したのであろうか・・。
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