1615 Gabrieli in Venice@Stephen Cleobury/Choir of King's College |

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1615 Gabrieli in Venice
Giovanni Gabrieli:
1. In ecclesiis (a 14), C78
2. Canzona Seconda (a 6), C196
3. Suscipe, clementissime Deus (a 12), C70
4. Hodie completi sunt dies Pentecostes (a 8), C57
5. Jubilate Deo omnis terra (a 10), C65
6. Canzona Terza (a 6), C197
7. Quem vidistis pastores? (a 14), C77
8. Sonata XXI, ‘con tre violini' (a 4), C214
9. Exultavit cor meum in Domino (a 6), C53
10. Surrexit Christus (a 11), C66
11. Canzona Prima (a 5), C195
12. Litaniae Beatae Mariae Virginis (a 8), C63
13. Magnificat (a 14), C79
His Majesty's Sackbutts & Cornetts
The Choir of King's College, Cambridge, Stephen Cleobury(Cond)
ジョヴァンニ・ガブリエーリ: 作品集(1615ガブリエリ・イン・ヴェニス)
1. サクラ・シンフォニア - 集いにて(14声)
2. カンツォンとソナタ集 - 6声のカンツォン II
3. 慈悲深い神を受け入れん
4. 今日、聖霊降臨の日は来たりぬ
5. 神をたたえよ(ユビラーテ・デーオ)
6. カンツォンとソナタ集
7. 羊飼いたちよ、汝らが見たものを語れ
8. ソナタ XXI 「3つのヴァイオリンのための」
サクラ・シンフォニア(抜粋)
--- 9. Exultavit cor meum a 6
-- 10. Surrexit Christus a 11
11. カンツォンとソナタ集 - 5声のカンツォン I
12. 8声のリタニー BVM 12.
13. サクラ・シンフォニア - 14声のマニフィカト
スティーヴン・クレオベリー(指揮)、ケンブリッジ・キングズ・カレッジ合唱団
ヒズ・マジェスティ・サックバット&コルネット(ジェレミー・ウェスト(指揮))
ジョヴァンニ・ガブリエーリはルネサンス期イタリアの高名な作曲家、教会オルガニスト
彼の経歴はWiki等にあるので詳細は書かないが少しだけ触れておく。彼の音楽は系譜でいうとヴェネチア楽派、時代的にはルネサンス期であるが、その後バロック音楽が萌芽するまでの転換期を生きた作家でもあった。生涯で書いた作品は宗教曲が主たるものであり、合唱およびアンサンブルの曲が多い。また彼は聖マルコ寺院の首席オルガニストでもあった。
以下、輸入元(キングインターナショナル)の解説文
ヴェネツィア楽派の頂点に立つジョヴァンニ・ガブリエーリ。彼の作品が出版されたのが1615年、2015年は400年記念の年にあたります。さらに、2015 年はキングス・カレッジ・チャペルが創立されて500 年記念。これを記念して、キングズ・カレッジ合唱団は、ガブリエーリの作品を収録。しかも、Dolby Atmosの最新技術を用いて、比類なき臨場感をめざした録音です。
ヴェネツィアの聖マルコ大聖堂でオルガニストを務めたガブリエーリは、宗教声楽、器楽の両方で多数の作品をのこしています。現在、聖マルコ大聖堂ではガブリエーリの管楽器のためのファンファーレが演奏されることはありませんが、ケンブリッジではさかんに演奏されています。この録音では、合唱の美しさはもちろん、管楽器のファンファーレも非常にやわらかく美しい音でとらえられています。ガブリエーリの荘厳な世界を、高水準のオーディオでお楽しみいただける内容となっています。
分割合唱、強弱記号、通奏低音
聖マルコ大聖堂においては当時も今も歌唱隊と器楽隊は左右に分かれて対峙し、それぞれのサイドにオルガンを配置するという独特のレイアウトを採用している。ガブリエーリもまた先人(=アドリアン・ヴィラールトら)からの慣習に沿ってこの大聖堂の広大で神秘的な音場空間と演奏レイアウトを生かす技法を用いて数々の宗教曲を書いた。つまり、まず始めに左側が旋律・和声を演奏すると、右側がそれを追随して続きを演奏し、再び左側が次の旋律に移り、そして右側が……、というような掛け合いの繰り返しを構成する。この技法は「分割合唱」と呼ばれており、専門的にはアンティフォナ様式の一つとみなされている。ガブリエーリは分割合唱様式を完成させた人物とされている。
また、その後のバロック期以降は常識となった作曲上の二つの技巧に関する始祖ともいわれている。即ち一つ目は強弱記号の採用であり、現代でも用いられるf(フォルテ)とp(ピアノ)を記譜法上で初めて用いたとされている。二つ目は通奏低音の採用であり、現代では最も一般的な楽曲形態であるホモフォニーの原型といえる。
作品のほぼ全編がコラール、途中に純粋器楽が挟まる構成
大体が似た作風で、ここに入っている曲の殆どすべてはコラール(讃美歌)と言ってよいだろう。途中、長くはないインストゥルメンタル(器楽のみの曲)が挟まりつつ、短め、そして長めで規模の大きな合唱曲が配置されている。あるものは長調主体で一部暗転、あるものは短調主体で一部明転、というふうな展開だが、どの曲も落ち着いた情緒の曲であり、旋律も飛躍はなく、せいぜいで4度上昇あるいは下降といったモデレートな作り。そして静謐かつ壮麗で聖なる旋律を延々と連ねて行く。ソロ歌唱が朗々と歌い、合唱がそれに唱和するのは勿論素晴らしいが、時々にソプラノ(もちろんボーイ・ソプラノ)が歌い上げるノンヴィブラートの高純度の高域がしみじみと聖堂に沁み渡って得も言われぬ厳かな風情を醸す。
器楽に関しては恐らくは古楽器を忠実に揃えたか、あるいは復元した楽器を使用した味のあるアンサンブルである。特に主役として終始登場する金管にあっては現代楽器のようなバルブ、ピストンといった音階機構がないものが殆どのようで、随所に吹かれノイズと音程の僅かなずれ、一瞬だけ発散する歪が聴いて取れる。しかし、それはこの作品群の演奏にあっては寧ろプラスに作用していてメランコリックでノスタルジックなセピア色を大いに演出しているのだ。現代にあっては遥か昔のルネサンス期を偲ぶべくもなく、当時の人々の日々の暮らしぶり、その中にあったであろうガブリエーリという作家の心象がどうであったかは空想の世界でしかない。が、なんとも幽玄で奥ゆかしく真摯な音楽たちであろうか。
録音評
The Choir of King's College(自主レーベル)、KGS0012、SACDハイブリッド+Pure Audio Blu-Ray。録音は2015年1月と6月、キングズ・カレッジ聖堂(ケンブリッジ)とある。パッケージには2枚のディスクが入っている。SACDハイブリッドの方は5.0サラウンドと2ch、Pure Audio Blu-Rayの方はDolby Atmos 7.1、Dolby true HD 5.1とのこと。Blu-Rayは今のところ未聴、SACDハイブリッドのSACDレイヤーとCDレイヤーを聴いた。
ライナーによるとハイブリッドの元々の録音フォーマットは192kHz 24bit、一部は96kHz 24bitのリニアPCMとなっている。残念ながらこのSACDハイブリッドには明らかな瑕疵がある。というのは、CDレイヤーとSACDレイヤーでトラックダウン様式が著しく異なっており、トラックによってはまるで別の演奏かと思うほどの差異があるのだ。まず、1~5トラック目あたりだと左右が入れ違っている。たぶん、分割合唱の様式からいうとCDレイヤーの定位が演奏時のサウンドステージを忠実に再現したものであり、SACDレイヤーはそれとは大きく異なる。但し、純粋器楽は割と真ん中に定位してSACDとCDの差異が少ない。そして、ボーカル系の定位位置と距離感が異なっており、SACDレイヤーは遠くに飛んでしまっている。想像だが、単純に左右の入れ替えを行ったわけではなくて5.0サラウンド音源のうちリアをクロスして強めにしてトラックダウンしたのがSACDレイヤー、フロント主体にトラックダウンしたのがCDレイヤーということだろう。SACDレイヤーは不思議な浮遊感はあるものの定位が不自然で不明確、CDレイヤーは自然な定位を示す。しかし、音質そのものはSACDレイヤーの方が圧倒的に優れているのは言を待たず、これがCDレイヤーと全くの同一音源、同一定位であれば申し分なかったのだが。

♪ よい音楽を聴きましょう ♫