Brahms, Bartók: Vn-Cons@Janine Jansen, Antonio Pappano/OAN Santa Cecilia, LSO |
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Brahms & Bartók: Violin Concertos
Brahms: Violin Concerto in D major, Op.77
1. Allegro non troppo
2. Adagio
3. Allegro giocoso, ma non troppo vivace - Poco piu presto
Bartók: Violin Concerto No.1, BB 48A, Sz 36
4. Andante sostenuto
5. Allegro giocoso
Janine Jansen(Vn)
Orchestra dell'Accademia Nazionale di Santa Cecilia(Brahms)
London Symphony Orchestra(Bartók)
Antonio Pappano(Cond)
ジャニーヌ・ヤンセン/ブラームス&バルトーク: ヴァイオリン協奏曲
ヨハネス・ブラームス(1833-1897)
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
べラ・バルトーク(1881-1945)
ヴァイオリン協奏曲 第1番 Sz.36
ジャニーヌ・ヤンセン(ヴァイオリン)
ローマ・サンタ・チェチーリア音楽院管弦楽団(ブラームス)
ロンドン交響楽団(バルトーク)
指揮:アントニオ・パッパーノ
ジャニーヌ・ヤンセンのCDを買うのは久し振りだった。4大Vnコンはとっくにコンプさせていたかと思っていたが、なんとブラームスが残っていたらしい。今から過去のリリースを聴き返してみると、それぞれに違う表情と特質を出していて相応によく出来た演奏だ。メンコン(+ブルッフ)は堂々たるオーソドックスな王道的演奏、チャイコンはクールで研ぎ澄まされた繊細な演奏、そしてベトコン(+ブリテン)は滑らかにして端正、かつダイナミックな出来栄えだった。よくよく考えてみるとデビューが2004年で、それから3~4年のうちに4大Vnコンのうち3つまで録音したのに、ブラコンはそこから更に8年もかかった計算となる。それほどハードルが高い作品とも思われないのだが。
ブラコンとバルトーク1番は珍しいカップリングかと思ったが、ライナーにはジャニーヌ自身の記述があり、それはブラームスがハンガリアン旋律を好んだ事に共通点を見出してのことという。但し、ブラームスが好んで引用したのは民俗的なジプシックあるいはトランシルヴァニア民謡の類の分かりやすい旋法だったのに対し、バルトークが完成させた音楽は、調性がほぼ失われかけて原典が分かり難くなっている現代作風だったので、ブラームスのハンガリー好きとバルトークを並べて語ることには少々無理はあると思う。
ブラコンだが、その1楽章は今までジャニーヌが見せたことのない側面が聴いて取れる。それは深刻かつ重厚な厳しい解釈であり、このインスピレーションを聴く限りにおいてはジャニーヌもパッパーノもブラームスがドイツロマン派に属する大作家であることをリスペクトして取り組んでいると感じられる。明るく軽快なカンタービレを解釈の根幹とするパッパーノと陽性サウンドを特徴とするサンタ・チェチーリアだが、この1楽章に関してはジャニーヌがブラームス作品に厳格に対峙する姿勢を好サポートしていると言えようか。次いで2楽章はエナジー感がぐっと削がれ、内面の描きこみが極めて丹念なジャニーヌの特質がよく表れている。有名な終楽章はポップに華やいだ、これまた今まであまり見せてこなかったジャニーヌの新しい魅力が籠められている。ここでのパッパーノは陽気で抑揚が効いていて、展開部に見るアチェレランドが胸の空くような加速度感を演出しており、ジャニーヌのハイスピードなVn独奏との絡みがとても楽しい。
バルトーク1番だが、厳しさという点においてはブラコン1楽章と同様で、難しい旋律と和声に対峙するジャニーヌの集中力が凄まじい。この協奏曲は2楽章形式で変わった構成。1楽章は割と緩徐でVn独奏が映える。ここでのLSOのサウンドはサンタ・チェチーリアよりも寒色系で明らかに音価が減少。ジャニーヌの微細で糸を引くような長い弦が特徴的で澄明な音が空間に響き渡る。2楽章は一気に音価が増え和声も複雑で深い展開となる。この楽章は単楽章が複数束ねられたような、一聴して相関性のないテーマが並んでいるようだが、よくよく聴くとジャニーヌが弾くデモーニッシュな旋律が共通した原典から採られているようだ、というのが分かってくる。全体は3部形式のような格好とも見え、綺麗な和声と不協和な和声が局所的に交互に出現。最終局面では協和音と不協和音の旋律・和声がダブルストップで弾かれ、ちょっと複雑な拍を伴って咳き込むようにコーダに至る。多くのバルトーク作品に言えることだが、演奏するには胆力が必要だし、聴く側にも相応な解釈が求められる。ここでのジャニーヌの解釈はなかなかに大人。
(録音評)
Decca 4788412、通常CD。2015年2月21-24日 ローマ、サンタ・チェチーリア(ブラームス)、2014年8月26日 ウォルサムストウ、アセンブリー・ホール(バルトーク)とある。バルトークの方が音色が細身で寒色系のためか、S/Nが良好に感じられる。ブラームスの方は華やいだ音色、長めの残響で、これも決して悪くはない。但し、どちらも細部を抉るような超高解像度録音ではなく、適度な広がりと聴きやすい調音を施したDeccaの製品品質らしい手堅い出来栄え。スピーカー・システム、ヘッドフォン・ステレオのどちらで聴いてもほぼ破綻せず安心して鑑賞できる。
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