ZOTAC ZBOX PI330 |
面倒なので暫く放置していたが、高いと思っていた接続料金のこともあってインターネット回線周りの最新事情を一度調べてみた。

宅内のWi-Fi環境は当時の一般的な規格である2.4GHz帯を使うIEEE802.11g/b/n対応であるが、上流のダウンストリームが1Gbpsに増速されるのであれば5GHz帯を使う最新最速のIEEE802.11acも選択肢となる。こうなるとずっと放置していたCELL REGZA(東芝のテレビ)のネット接続も現実味を帯び、YouTubeやHulu等の動画コンテンツ再生も視野に入ってくる。
なぜWi-Fiとテレビが関係するのか。1階リビングに設置してあるCELL REGZA 46XE2には1Gbps有線LANに対応したRJ-45の口が付いているが、Wi-Fiは付いていない。一方、光ファイバーの宅内引込み設備の関係で光ルーターは2階に設置してある。因みにCore i7 3930Kの4.5GHzオーバークロック・マシンもここに置き、1Gbpsで直結している。46XE2に有線LANでネット接続するにはUTPケーブルを2階から1階リビングまで物理的に通線し、46XE2と光ルーターを直結しなければならない。そのためには壁の中を複雑に這い回るCD管路を使い、あちこちの部屋のコンセントボックス(結節点)を経由・迂回させてUTPケーブルを通す必要がある。さもなくば露出配線という奥の手はあるにはあるが、家の中の美観が損なわれるので避けたい。そんなこんなを考えること自体が面倒で手を出さずにいたわけだが、かたや将来的に高速Wi-Fiが開通したなら厄介な通線工事はしなくて済むと漠然と思っていた。
IEEE802.11acは送受信アンテナを複数本束ねることで帯域幅を増す仕組みになっている。とても大雑把にいうとアンテナ1本で仕様上は433Mbpsまで出せる。最近のiPhone6Sなどのスマホは802.11acのアンテナを1本内蔵するので433Mbps、ノートPCは2本内蔵するので866Mbpsまで出せることになる。

つまり、親機とWi-Fi接続された子機から46XE2に有線接続すれば、テレビ側でもギガビット速度が享受できるという算段だ。勿論、理想的な環境においては、という話だが。
と、ここまでは首尾よく事は運んだ。ところがネット接続した46EX2のインターネット関係ソフトが余りにシャビーで実用に耐えないことが判明。考えてみれば46XE2は製造完了して久しく、ファームウェアのアップデート・サービスもとうに終わっており、動画などのプラグインが必要なアプリはほぼ壊滅状態である。せっかく高速回線が繋がったのにこれでは宝の持ち腐れだ。
諦めかけていたが、少し悪あがきをしようと思って調べ直したら、テレビでネット動画を楽しむための仕組みが実用域に達していることが分かってきた。安直なのはchromecastというYouTube用のドングルで、これはスマホやタブレットの動画イメージをWi-Fiで飛ばしHDMI変換してテレビに映し出す仕組みだ。しかし、テレビ専用に確保できるスマホやタブレットは持ち合わせていないので、揃えるとなるとそれなりの投資だ。
次に食指を動かされたのはスティックPCという製品。100円ライターより少し大きなスティック状の小箱にHDMIプラグが付いたもので、中身はWindowsかAndroidが動くパソコンであり、これをテレビのHDMI端子に挿し込んでテレビ画面自体をモニターにするという代物だ。値段にして1万円を切るくらいの製品(例: Diginnos Stick STK3)がドスパラあたりで売られている。スペックを見る限りCPUパワー的には心もとない。Wi-Fiも802.11ac搭載機はまだ数が少なく、有線LANは搭載しないものが殆ど。もし搭載していても速度は精々で100Mbpsと遅く、ハイビジョン品位や4K動画再生を目指そうとするとかなり苦しそうだ。ファンレス小型高密度実装ではある程度スペックが犠牲になるということか。
一方、昨今急速に人気が出て来たのがMINI PCというジャンルの製品で、中身の構成はスティックPCとほぼ同じ。しかし相応にハイスペックに作ってあり、クアッドコア搭載、そして1Gbps有線LANも付いていたりする。スティックPCよりかは筐体は大きいが、スマホと同じか少し大きい位で全く邪魔にはならない。VESAマウンタが付属しておりテレビ受像機の裏面に貼り付けて使う前提という。キーボードとマウスを無線USB接続にすれば本体を丸っきり隠したまま操作可能だ。



Windows 10 HomeのDSP版の最安値はおよそ10000円で、差し引いた純粋ハードウェア価格が15000円ほど。果たしてこれで採算が取れるのだろうか。
名称: ZBOX PI330
OS: Windows 10 Home(64bit)
CPU: Intel Atom x5-Z8500(1.44GHz/ターボブースト時2.24GHz、クアッドコア)
GPU: Intel HD Graphics
MEM: 2GB LPDDR3
STOR: 32GB eMMC
USB: USB 3.0 Type-C×1、USB 3.0×2
LAN: 1Gbps イーサネット×1
Wi-Fi: IEEE802.11ac、Bluetooth: 4.0
SDHC: 2 in 1(micro SDHC/SDXC)
I/O: HDMI×1、DisplayPort×1、ヘッドホン出力/マイク入力端子
寸法: 115(L)×76(W)×20.7(H) mm
付属品: VESAマウント、ACアダプター、CTIA-OMTP変換アダプタ、
ユーザーマニュアル、クイックスタートガイド、OSリカバリーDVD
型番: ZBOX-PI330-W2B

しかし、こんな革新的なPC製品がこんな値段で売られる世の中になろうとは到底考えられなかった。時代の潮流は明らかに変化して来ていることを肌で感じる。







インターネット速度測定サイトへ行って簡単に測ってみると150~180Mbps程度と思ったよりも速くはない。

無論、ネットに出て行かずにローカルでループバックさせれば理論値近くは出ているはずだ。
使ってみると、当たり前のことだが普通のWindows 10パソコンと全く同じ。フィーリングもパフォーマンスも使えるソフトも同じ。ただ画面が46インチと巨大になっただけだ。今後のPCは全てこんな感じになるのだろうか。ひょっとすると、こういった完全な機能を備え、かつ汎用OSがフルセットで乗ったPCユニットがテレビを始めとした家電製品にあまねく搭載される真のIoT時代はすぐそこまで来ているのかもしれない。PCはますます儲からない時代に入る気がする。喜ぶべきか、はたまた悲しむべきか・・。
▶ 本稿で取り上げた製品
NTT東日本 フレッツ光ネクスト ギガファミリー・ラインタイプ 1Gbps光回線品目
NTT東日本 PR-400KI 光ルーター フレッツ光回線用
東芝 CELL REGZA 46XE2 46インチ液晶テレビ
NEC Aterm WG2200-HP 無線LANアクセスポイント/イーサネット・コンバータ
Google Chromecast メディアストリーミング・デバイス Wi-Fi接続 HDMI出力
Diginnos Stick STK3 スティックPC Windows 8 搭載 ドスパラ扱い
uniq rapoo 9160 ワイヤレスUSBキーボード/マウス
ZOTAC ZBOX PI330-W2B ミニPC Windows 10 Home 64bit搭載
▶ 補遺: 2016/9/4
ZBOXの電源管理には、通常のPC/AT機に備わるスリープ/休止(ハイバネーション)機能がないようだ。ハードウェアにこれらの機能が元々備わっていない、あるいはBIOSでサポートされていないのは確かだ。従って、Windowsの終了メニューにはシャットダウンか再起動しか現れず、コントロールパネル等でもスリープ/休止は活性化できない。かたやディスプレイ・オフまでのタイムアウト時間は指定が可能だ。といっても、設定時間を過ぎるとディスプレイポートやHDMIへの信号出力が止まるだけでWindows自体が休止するわけではない。考えてみたらこれはスマホの電源管理と事情は似ていて、画面ロック機能はあってもサスペンドやハイバネーションはないのと同様だ。

♪ よい音楽を聴きましょう ♫