2016年 07月 05日
Chopin: Piano Works@Miki Yumihari |
弓張美季のハルモニア・ムンディ2枚目のアルバムはショパンの小曲集だった。

http://tower.jp/item/4142235
Miki Yumihari plays Chopin
Frédéric Chopin
1. Ballade Op.1 Op.23 g min.
2. Nocturne No.16 Op.55-2 E flat maj.
3. Fantasie-Inpromptu Op55 c sharp min.
4. Valse No.9 Op.69-1 A flat maj.
5. Prelude No.15 Op.28 D flat maj. "Raindrop"
6. Valse Op No.10 Op.69-2 b min.
7. Scherzo No.1 Op.20 b min.
8. Nocturne Op.posth c sharp min
9. Valse No.6 Op.64-1 D flat maj. "Minute"
10. Nocturne No.8 Op.27-2 D flat maj.
11. Valse No.11 Op.70-1 G flat maj.
12. Nocturne No.2 Op.9-2 E flat maj.
13. Scherzo No.2 Op.31 b flat min.
Miki Yumihari(Pf)
ショパン:ピアノ作品集
1. バラード第1番 作品23 ト短調
2. ノクターン第16番 作品55-2 変ホ長調
3. 幻想即興曲 作品66 嬰ハ短調
4. ワルツ第9番 作品69-1 変イ長調「告別」
5. 前奏曲第15番 作品28 変ニ長調「雨だれ」
6. ワルツ第10番 作品69-2 ロ短調
7. スケルツォ第1番 作品20 ロ短調
8. ノクターン遺作 嬰ハ短調
9. ワルツ第6番 作品64-1 変ニ長調「子犬のワルツ」
10. ノクターン第8番 作品27-2 変二長調
11. ワルツ第11番 作品70-1 変ト長調
12. ノクターン第2番 作品9-2 変ホ長調
13. スケルツォ第2番 作品31 変ロ短調
弓張美季(ピアノ)
欧州で活動する日本人ピアニスト・弓張美季のハルモニ・アムンディからのデビュー盤はシューマンのコンチェルトだった。これはデビュー盤というには余りに鮮烈で堂に入った演奏だったので度肝を抜かれた。
ロシア(旧ソ連ということではグルジアなど)、フランス、ドイツ、イギリス、そしてアメリカと、音楽先進国が送り出すスター・ソリストは非常に多いが、実は地味ながら日本人音楽家のレベルも相当に高いと思う。私見だが、日本人ピアニストのレベルはやはり相当に高くて、世界に通用する人は本当はもっといるけれどもあまりに奥ゆかしくて知られていないだけだと思うのだ。
たとえば、良質なクラシックを数多く送り出している欧州の主要レーベルといえばこのHarmonia Mundiがあげられるが、ここでは弓張美季が今回順当にその二枚目を出した。同じくフランスで高品質な音楽と演奏を発信し続けているMirareには広瀬悦子がいる。そしてドイツの名門OEHMS(エームズ)にはSachiko Furuhata-Kersting、つまり古畑祥子さんがいる(実際にお会いしたことがあるので「さん」を付けさせて頂いた)。
弓張の今度の新譜は潔くショパンの独奏で来た。というわけで、封を切り静かに針を降ろした。どれもが、20世紀にもてはやされた典型的なショパン演奏スタイルを彷彿とさせる大振りな設計・解釈、テンペラメンタルな弾き方なのだ。作品に潜む重層的なエモーションをこうやって深く抉り出し、感情を剥き出しにして迫り来る熱いショパンを聴くのは本当に久し振りという気がする。どの曲もよく吟味された演奏でとても良い出来栄えだ。
しかし、ワルツ系はアゴーギク、即ち時間軸方向の揺らぎが大きすぎてメロディーラインが崩れ気味ということもあり、個人的な嗜好性としてはちょっとやり過ぎの感がある。著名な曲で9トラック目に子犬のワルツが入っているが、これは海外ではminute=ミニット、つまり1分間の演奏時間という意味だが、弓張は情感を深々と加えていて、速めに駆け抜けるシーンとそうではなくてゆっくりと旋律を深耕する場面とがあって、トータルすると約2分弱を要している。ことほどさように三拍子系は揺らぎが相当に大きい傾向の抒情的な設計としている。この種のエモーショナルな演奏が好きな人は嵌るのではないだろうか。
反面、バラード1番、幻想即興曲、スケルツォ1番や2番といった元々特異で激しい感情表現を内包する作品に関しては期待を裏切らない巨大なスケールでの鷹揚な描き込みに成功しており、これはかなり酔えるものがある。20世紀を彩ったピアノのヴィルトゥオーゾ達は確かにこういった瞑想的でエキセントリックな演奏をしていたし、今なおそれらの録音の多くが「名演」として残されている。
白眉の一つは遺作ノクターン。なんともやるせなく、そして湿潤にして濃やかな描写が素晴らしく、悲しみを幾重にも重ねていくけれどもどこか明るいフラッシュバックも挟んであったりと起伏が豊かであって、この人の表現幅のブロードさを垣間見るものがある。そして著名曲である幻想即興曲もまた素晴らしいパフォーマンスであり、全幅の翼を広げて飛翔するかと思えば後退翼に変形させて一気に下降する、といったアクロバティックな演奏となっていて、激しいけれども素晴らしい出来栄え。そして、いかにもショパンといった絢爛さとアンニュイさとを背中合わせに折り畳んだような演奏設計は聴く者の心をわしづかみにするのだ。
とにもかくにも構図が大きくて天衣無縫、表現は良くないが「男前」なショパンなのだ。ここまであっけらかんと自然にやられてしまうと文字による論評が極めて難しくなる。気になる人はこの演奏をまずは聴いてみて欲しい。輸入盤なのになぜか日本語ライナーノーツがセットされており弓張のショパンに対する思いも記されている。
(録音評)
Harmonia Mundi、HMC905275、通常CD。録音は2015年4月テルデックス・スタジオ、ベルリン。音質は極めて良好で、少し硬質だが太く豊かで、それでいて過度に膨満しないスタインウェイのDシリーズが等身大で捉えられている。テルデックスの録音はおしなべて優秀なのだが、この盤はその中にあってもかなり上位に位置する出来栄えであり、昨今の他のスタジオや高音質ホールにおける優秀ピアノ録音の中でも一歩抜きん出た大人の録音だ。過度にディテールを抉るような調音ではないのでエキセントリックな音が好きなオーディオファンにとっては物足りないかもしれないが、ピアノが「正しい」音で捉えられているという点においては教科書的だ。音の色温度という点に関しては暗めで低温側に振っており、ブリリアンスは感じられるものの底抜けの明るさはない。仄暗さの中に時折り明滅する小さなスポットライトが見えるという風情だろうか。
例によって、このHMC905275という番号は欧州そして本家Harmonia Mundiのオンラインショップでも見当たらない。キングインターが特別にパトロンとなって作ったのか、あるいはファンクラブ、はたまた本人の自費制作なのかは不明だが、そんなことはどうでもよい素晴らしい出来栄えの録音であるのは確かだ。ショパンのファンは彼女渾身のこの一枚を是非聴いてみて欲しい。
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫

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Miki Yumihari plays Chopin
Frédéric Chopin
1. Ballade Op.1 Op.23 g min.
2. Nocturne No.16 Op.55-2 E flat maj.
3. Fantasie-Inpromptu Op55 c sharp min.
4. Valse No.9 Op.69-1 A flat maj.
5. Prelude No.15 Op.28 D flat maj. "Raindrop"
6. Valse Op No.10 Op.69-2 b min.
7. Scherzo No.1 Op.20 b min.
8. Nocturne Op.posth c sharp min
9. Valse No.6 Op.64-1 D flat maj. "Minute"
10. Nocturne No.8 Op.27-2 D flat maj.
11. Valse No.11 Op.70-1 G flat maj.
12. Nocturne No.2 Op.9-2 E flat maj.
13. Scherzo No.2 Op.31 b flat min.
Miki Yumihari(Pf)
ショパン:ピアノ作品集
1. バラード第1番 作品23 ト短調
2. ノクターン第16番 作品55-2 変ホ長調
3. 幻想即興曲 作品66 嬰ハ短調
4. ワルツ第9番 作品69-1 変イ長調「告別」
5. 前奏曲第15番 作品28 変ニ長調「雨だれ」
6. ワルツ第10番 作品69-2 ロ短調
7. スケルツォ第1番 作品20 ロ短調
8. ノクターン遺作 嬰ハ短調
9. ワルツ第6番 作品64-1 変ニ長調「子犬のワルツ」
10. ノクターン第8番 作品27-2 変二長調
11. ワルツ第11番 作品70-1 変ト長調
12. ノクターン第2番 作品9-2 変ホ長調
13. スケルツォ第2番 作品31 変ロ短調
弓張美季(ピアノ)
欧州で活動する日本人ピアニスト・弓張美季のハルモニ・アムンディからのデビュー盤はシューマンのコンチェルトだった。これはデビュー盤というには余りに鮮烈で堂に入った演奏だったので度肝を抜かれた。
ロシア(旧ソ連ということではグルジアなど)、フランス、ドイツ、イギリス、そしてアメリカと、音楽先進国が送り出すスター・ソリストは非常に多いが、実は地味ながら日本人音楽家のレベルも相当に高いと思う。私見だが、日本人ピアニストのレベルはやはり相当に高くて、世界に通用する人は本当はもっといるけれどもあまりに奥ゆかしくて知られていないだけだと思うのだ。
たとえば、良質なクラシックを数多く送り出している欧州の主要レーベルといえばこのHarmonia Mundiがあげられるが、ここでは弓張美季が今回順当にその二枚目を出した。同じくフランスで高品質な音楽と演奏を発信し続けているMirareには広瀬悦子がいる。そしてドイツの名門OEHMS(エームズ)にはSachiko Furuhata-Kersting、つまり古畑祥子さんがいる(実際にお会いしたことがあるので「さん」を付けさせて頂いた)。
弓張の今度の新譜は潔くショパンの独奏で来た。というわけで、封を切り静かに針を降ろした。どれもが、20世紀にもてはやされた典型的なショパン演奏スタイルを彷彿とさせる大振りな設計・解釈、テンペラメンタルな弾き方なのだ。作品に潜む重層的なエモーションをこうやって深く抉り出し、感情を剥き出しにして迫り来る熱いショパンを聴くのは本当に久し振りという気がする。どの曲もよく吟味された演奏でとても良い出来栄えだ。
しかし、ワルツ系はアゴーギク、即ち時間軸方向の揺らぎが大きすぎてメロディーラインが崩れ気味ということもあり、個人的な嗜好性としてはちょっとやり過ぎの感がある。著名な曲で9トラック目に子犬のワルツが入っているが、これは海外ではminute=ミニット、つまり1分間の演奏時間という意味だが、弓張は情感を深々と加えていて、速めに駆け抜けるシーンとそうではなくてゆっくりと旋律を深耕する場面とがあって、トータルすると約2分弱を要している。ことほどさように三拍子系は揺らぎが相当に大きい傾向の抒情的な設計としている。この種のエモーショナルな演奏が好きな人は嵌るのではないだろうか。
反面、バラード1番、幻想即興曲、スケルツォ1番や2番といった元々特異で激しい感情表現を内包する作品に関しては期待を裏切らない巨大なスケールでの鷹揚な描き込みに成功しており、これはかなり酔えるものがある。20世紀を彩ったピアノのヴィルトゥオーゾ達は確かにこういった瞑想的でエキセントリックな演奏をしていたし、今なおそれらの録音の多くが「名演」として残されている。
白眉の一つは遺作ノクターン。なんともやるせなく、そして湿潤にして濃やかな描写が素晴らしく、悲しみを幾重にも重ねていくけれどもどこか明るいフラッシュバックも挟んであったりと起伏が豊かであって、この人の表現幅のブロードさを垣間見るものがある。そして著名曲である幻想即興曲もまた素晴らしいパフォーマンスであり、全幅の翼を広げて飛翔するかと思えば後退翼に変形させて一気に下降する、といったアクロバティックな演奏となっていて、激しいけれども素晴らしい出来栄え。そして、いかにもショパンといった絢爛さとアンニュイさとを背中合わせに折り畳んだような演奏設計は聴く者の心をわしづかみにするのだ。
とにもかくにも構図が大きくて天衣無縫、表現は良くないが「男前」なショパンなのだ。ここまであっけらかんと自然にやられてしまうと文字による論評が極めて難しくなる。気になる人はこの演奏をまずは聴いてみて欲しい。輸入盤なのになぜか日本語ライナーノーツがセットされており弓張のショパンに対する思いも記されている。
(録音評)
Harmonia Mundi、HMC905275、通常CD。録音は2015年4月テルデックス・スタジオ、ベルリン。音質は極めて良好で、少し硬質だが太く豊かで、それでいて過度に膨満しないスタインウェイのDシリーズが等身大で捉えられている。テルデックスの録音はおしなべて優秀なのだが、この盤はその中にあってもかなり上位に位置する出来栄えであり、昨今の他のスタジオや高音質ホールにおける優秀ピアノ録音の中でも一歩抜きん出た大人の録音だ。過度にディテールを抉るような調音ではないのでエキセントリックな音が好きなオーディオファンにとっては物足りないかもしれないが、ピアノが「正しい」音で捉えられているという点においては教科書的だ。音の色温度という点に関しては暗めで低温側に振っており、ブリリアンスは感じられるものの底抜けの明るさはない。仄暗さの中に時折り明滅する小さなスポットライトが見えるという風情だろうか。
例によって、このHMC905275という番号は欧州そして本家Harmonia Mundiのオンラインショップでも見当たらない。キングインターが特別にパトロンとなって作ったのか、あるいはファンクラブ、はたまた本人の自費制作なのかは不明だが、そんなことはどうでもよい素晴らしい出来栄えの録音であるのは確かだ。ショパンのファンは彼女渾身のこの一枚を是非聴いてみて欲しい。
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by primex64
| 2016-07-05 23:10
| Solo - Pf
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