2016年 06月 07日
Mahler: Sym#1 & Blumine@Hannu Lintu/Finnish RSO |
同じくOndineの新譜で、ハンヌ・リントゥ率いるフィンランドRSOのマラ1巨人、花の章付き。SACDハイブリッド。

http://tower.jp/item/4081465/
Mahler: Symphony No.1 & Blumine
Symphony No.1 in D major 'Titan'
1: Langsam, schleppend / Im Anfang sehr gemachlich
2: Kraftig bewegt, doch nicht zu schnell
3: Feierlich und gemessen, ohne zu schleppen
4: Sturmisch bewegt
5: Blumine (Original 2'nd movement of Symphony No.1)
Jouko Harjanne(Tp)(Trk 5)
Finnish Radio Symphony Orchestra, Hannu Lintu
グスタフ・マーラー: 交響曲 第1番 & 花の章
1:ゆるやかに
2:力強く運動して
3:緩慢でなく、荘重に威厳をもって
4:嵐のように運動して
5:花の章
ヨウコ・ハルヤンネ(トランペット)…5
フィンランド放送交響楽団
ハンヌ・リントゥ(指揮)
時間軸を最大限に利用した躍動的でダイナミックなマラ1である。アゴーギクを複雑に組み合わせた解釈においてはベタ付いた嫌味なインプレッションとなることが多いが、リントゥのこれは余り深い思惑によらない急加速・急減速を織り交ぜた衒いのない解釈となっている。例えば1楽章は重々しく相当にゆったり目のスタートを切るが、展開部からはアチェレランドを効果的に使用した疾駆感がもう一つの特徴となっている。
R.N/SWR 15:04 - 7:36 - 09:39 - 19:30 *SWR Stuttgart
P.B/CSO 16:00 - 6:48 - 10:39 - 19:20
B.H/CSO 16:46 - 8:34 - 11:11 - 21:08
MTT/SFS 16:08 - 7:44 - 11:31 - 20:55
FXR/SWR 16:17 - 7:31 - 10:49 - 19:08 *SWR Barden-Barden Freiburg
H.L/FRS 16:55 - 7:51 - 11:08 - 19:20
テンポ配分としては前半がかなり遅めで、後半にはそれを挽回するにはするが、全体としては相当時間を費やしていることは上の演奏時間データからも明らか。今までで最も重厚かつ遅速であったハイティンクCSOを超える演奏時間ということで、MusicArenaにおける第一楽章の最遅記録を更新した。
これに対して2楽章は入りから明るくヴィヴィッドな曲想を全幅で放散しており、それでいて引き締まったソリッドな楽章に仕上げている。時間配分的には余りに高速なブーレーズCSOは例外としても、そこそこ中庸の時間配分であり、MTT/SFSに近いものと言える。1楽章がハイティンクCSOを超える重厚さ、2楽章はそれよりもだいぶ急いだ律速ということで、両方ともに遅いハイティンクCSOの2楽章と比べると1分30秒以上速いことになる。この速度対比のお蔭で元々スピード感のある2楽章の譜面に更に爽快さを加えることに成功している。
3楽章は従来演奏ごとにまちまちな演奏時間と中身の構成であるため演奏時間による単純比較はできないが、このリントゥの演奏は中庸と言える標準的なものだ。そして最終楽章フィナーレだが、ブーレーズCSOと演奏時間は全く同じであり、聴感上も解釈もやはり似ている。楽章を通じてドラマティックで色彩感が強く、そしてウェル・コントロールドと言っておこう。
最後のトゥッティに向けて徐々にエナジーを蓄えて行き、マーラーの特徴である颯爽とした引け際に最大レベルに達したエナジーを瞬間的に開放して劇的な終焉を迎えるという格好は、寧ろグザヴィエ・ロトSWRフライブルクに最も似た演奏設計かもしれない。古典的巨匠がトゥッティに至る数分間を高いエナジーを高原状態に保って引っ張ることを尊んだのとは真逆のアプローチであり、これはこれで現代的でタイトな表現方法であって個人的にはこのやり方が断然好みだ。
トータルすれば今世紀風の合理的で清潔な解釈であって、過度な情感を介入させないドライながら起伏に富んだマラ1と言える。もう一つ、全体を通じた特徴だが、主旋律だけではなく内声部のクローズアップが斬新であり、時々、今までのマラ1とは全く異なった表情を見せられ思わずはっとさせられるのだ。これはなかなか良い演奏だ。
最後に花の章が入っている。個人的には今の2楽章の方が闊達で分かり易く好きだが、マーラーの心理状態から言うと花の章のメロウで限りなく美しく、しかし一種翳りのあるパート構成も理解できる成り立ちだ。優美で華やいだ雰囲気を一層引き立てるヨウコ・ハルヤンネのTpはさすがというべき域に達しており、これは必聴ものだ。
(録音評)
Ondine ODE1264、SACDハイブリッド。録音は少し古くてマラ1=2014年5月、花の章=2014年12月、ベニューはフィンランドのヘルシンキ・ミュージック・センターで、全てセッション録音となっている。データは詳細に書いてないが、低域の膨らみと時間軸方向に微細に揺れる衝撃波の特徴からは恐らくDSD録音と思われる。LPCMに見られるようなタイトでズバッと来るビーム状の衝撃波ではなくて、球面波があちこちで破裂するような衝撃の伝わり方はある意味リアルで現実世界のホール音響と酷似しているのだ。また、サウンドステージの奥行き方向の定位が素晴らしく、各パートが重層的に前後に並んで演奏している絵姿が精密に描き出されるという新世代のマーラー録音だ。素晴らしい。
1日1回、ここをポチっとクリック ! お願いします。
♪ よい音楽を聴きましょう ♫

http://tower.jp/item/4081465/
Mahler: Symphony No.1 & Blumine
Symphony No.1 in D major 'Titan'
1: Langsam, schleppend / Im Anfang sehr gemachlich
2: Kraftig bewegt, doch nicht zu schnell
3: Feierlich und gemessen, ohne zu schleppen
4: Sturmisch bewegt
5: Blumine (Original 2'nd movement of Symphony No.1)
Jouko Harjanne(Tp)(Trk 5)
Finnish Radio Symphony Orchestra, Hannu Lintu
グスタフ・マーラー: 交響曲 第1番 & 花の章
1:ゆるやかに
2:力強く運動して
3:緩慢でなく、荘重に威厳をもって
4:嵐のように運動して
5:花の章
ヨウコ・ハルヤンネ(トランペット)…5
フィンランド放送交響楽団
ハンヌ・リントゥ(指揮)
時間軸を最大限に利用した躍動的でダイナミックなマラ1である。アゴーギクを複雑に組み合わせた解釈においてはベタ付いた嫌味なインプレッションとなることが多いが、リントゥのこれは余り深い思惑によらない急加速・急減速を織り交ぜた衒いのない解釈となっている。例えば1楽章は重々しく相当にゆったり目のスタートを切るが、展開部からはアチェレランドを効果的に使用した疾駆感がもう一つの特徴となっている。
R.N/SWR 15:04 - 7:36 - 09:39 - 19:30 *SWR Stuttgart
P.B/CSO 16:00 - 6:48 - 10:39 - 19:20
B.H/CSO 16:46 - 8:34 - 11:11 - 21:08
MTT/SFS 16:08 - 7:44 - 11:31 - 20:55
FXR/SWR 16:17 - 7:31 - 10:49 - 19:08 *SWR Barden-Barden Freiburg
H.L/FRS 16:55 - 7:51 - 11:08 - 19:20
テンポ配分としては前半がかなり遅めで、後半にはそれを挽回するにはするが、全体としては相当時間を費やしていることは上の演奏時間データからも明らか。今までで最も重厚かつ遅速であったハイティンクCSOを超える演奏時間ということで、MusicArenaにおける第一楽章の最遅記録を更新した。
これに対して2楽章は入りから明るくヴィヴィッドな曲想を全幅で放散しており、それでいて引き締まったソリッドな楽章に仕上げている。時間配分的には余りに高速なブーレーズCSOは例外としても、そこそこ中庸の時間配分であり、MTT/SFSに近いものと言える。1楽章がハイティンクCSOを超える重厚さ、2楽章はそれよりもだいぶ急いだ律速ということで、両方ともに遅いハイティンクCSOの2楽章と比べると1分30秒以上速いことになる。この速度対比のお蔭で元々スピード感のある2楽章の譜面に更に爽快さを加えることに成功している。
3楽章は従来演奏ごとにまちまちな演奏時間と中身の構成であるため演奏時間による単純比較はできないが、このリントゥの演奏は中庸と言える標準的なものだ。そして最終楽章フィナーレだが、ブーレーズCSOと演奏時間は全く同じであり、聴感上も解釈もやはり似ている。楽章を通じてドラマティックで色彩感が強く、そしてウェル・コントロールドと言っておこう。
最後のトゥッティに向けて徐々にエナジーを蓄えて行き、マーラーの特徴である颯爽とした引け際に最大レベルに達したエナジーを瞬間的に開放して劇的な終焉を迎えるという格好は、寧ろグザヴィエ・ロトSWRフライブルクに最も似た演奏設計かもしれない。古典的巨匠がトゥッティに至る数分間を高いエナジーを高原状態に保って引っ張ることを尊んだのとは真逆のアプローチであり、これはこれで現代的でタイトな表現方法であって個人的にはこのやり方が断然好みだ。
トータルすれば今世紀風の合理的で清潔な解釈であって、過度な情感を介入させないドライながら起伏に富んだマラ1と言える。もう一つ、全体を通じた特徴だが、主旋律だけではなく内声部のクローズアップが斬新であり、時々、今までのマラ1とは全く異なった表情を見せられ思わずはっとさせられるのだ。これはなかなか良い演奏だ。
最後に花の章が入っている。個人的には今の2楽章の方が闊達で分かり易く好きだが、マーラーの心理状態から言うと花の章のメロウで限りなく美しく、しかし一種翳りのあるパート構成も理解できる成り立ちだ。優美で華やいだ雰囲気を一層引き立てるヨウコ・ハルヤンネのTpはさすがというべき域に達しており、これは必聴ものだ。
(録音評)
Ondine ODE1264、SACDハイブリッド。録音は少し古くてマラ1=2014年5月、花の章=2014年12月、ベニューはフィンランドのヘルシンキ・ミュージック・センターで、全てセッション録音となっている。データは詳細に書いてないが、低域の膨らみと時間軸方向に微細に揺れる衝撃波の特徴からは恐らくDSD録音と思われる。LPCMに見られるようなタイトでズバッと来るビーム状の衝撃波ではなくて、球面波があちこちで破裂するような衝撃の伝わり方はある意味リアルで現実世界のホール音響と酷似しているのだ。また、サウンドステージの奥行き方向の定位が素晴らしく、各パートが重層的に前後に並んで演奏している絵姿が精密に描き出されるという新世代のマーラー録音だ。素晴らしい。

♪ よい音楽を聴きましょう ♫
by primex64
| 2016-06-07 23:29
| Symphony
|
Trackback
|
Comments(0)