2016年 05月 23日
Beethoven: P-Con#3 & Mass in C Maj.@MTT/SFS, Emanuel Ax |
昨冬のSFSメディアのリリースから、エマニュエル・アックスが弾くベートーヴェンPコン#3とハ長調ミサ曲。SFSというからには当然に指揮はMTT。なお、これまた当然だがSACDハイブリッドでのリリースとなる。
http://tower.jp/item/4029315/
Beethoven:
Piano Concerto No.3 in C minor, Op.37
Mass in C major, Op.86
Emanuel Ax(Pf)
Joelle Harvey(Sop), Kelley O'Connor(Mezzo-Sop),
William Burden(Ten), Shenyang(Bass-Bar)
San Francisco Symphony Chorus
San Francisco Symphony, Michael Tilson Thomas
ベートーヴェン:
ピアノ協奏曲第3番ハ短調 Op.37
ミサ曲ハ長調 Op.86
マイケル・ティルソン・トーマス(指揮)
サンフランシスコ交響楽団
エマニュエル・アックス(ピアノ)
ジョエル・ハーヴェイ(ソプラノ)
ケリー・オコナー(メゾ・ソプラノ)
ウィリアム・バーデン(テノール)
シェンヤン(バス・バリトン)
サンフランシスコ交響合唱団
ベートーヴェンPコン#3は久し振りに聴いた。ここでは度々吐露しているが、私はベトの場合にはピアノ絡みではない交響曲や大規模曲は苦手だ。ついでに言うとモーツァルトも概して苦手だ。よってMusicArenaにはこれらの作品の試聴記は殆どアップされていない。さはさりながら、この二人の作品は若い頃に散々聴いてきたし、ピアノ曲に至っては相応の曲数を弾いた。ということで、これらに全く知見もなく、そして聴かないかというとそうでもなく、たまには聴く。
エマニュエル・アックスの名は10年以上前からあちこちで耳にしていて概して巧いとの評判であるが、調べてみると録音には積極的ではないらしくてアルバム数はごく少ない。そして今回、ビッグネームの新譜にその名が連ねてあったために買ってみたというわけだ。結論から言うと、超絶技巧で鳴らすヴィルトゥオーゾではないが、打鍵が正確かつ軽量で高速、そしてタッチが極めて美しい稀有のシルキートーンが特徴となる繊細なピアニズムの持ち主だ。
似た傾向の人を挙げるのは難しいが、敢えて言うと高速性能に関してはヌーブルジュ(例えば、ハンマー・クラヴィーア)とほぼ同列、そして、芸術的・魔術的な美しいタッチと心地よい肌触りはロジェ(例えば、ドビュッシー)などにたとえられようか。但し、ロジェよりかは線は少し細い。
Pコン#3は余りに著名な曲ゆえ詳述はしないが、力強くて明瞭な旋律の建付け、そして野太い和声のオーケストレーションがベートーヴェンらしい佳曲だが、アックスのこの演奏は実にさらりと、いわば蒸留水、いやアクア・クララのような清純でありながら軽めの旨味と味わいが感じられるというか、そんな独特で孤高の#3なのであった。同じパート譜を同じ速度記号、楽想記号、そしてほぼ同じアーティキュレーションをトレースしながら弾くピアニストたちの個性には一人として同じものがなく、それぞれに極められたレキシカル、コンテキストを内包するのである。アックスは、なるほどと頷かされるだけのことはある折り目正しくも清冽な印象を放散しているピアニストなのであった。
ハ長調ミサは、それほど聴いたことがないので多くは語れないが、敢えて比較するなら、故コリン・デイヴィス/LSOの盤だ。このMTT/SFSOの盤は比較的雄弁で熱い語法だったデイヴィス/LSO盤から粗熱を取り、完全に冷え切る前の穏和で人肌の温もりが感じられるポイントを狙ったかの好リード。ここに参集しているソリストたちの技量は生半可ではなく、モデレートなMTTのタクトと深い彫り込みに見事に呼応している。出来栄えをデイヴィス盤と比べるのは他流試合的で好ましくないかもしれないが個人的にはこのMTT盤がしっくりと来た。
(録音評)
SFS Media SFS0064、SACDハイブリッド。録音は2013年9月26日-28日(協奏曲)&2014年1月15日-18日(ミサ曲)、デイヴィス・シンフォニー・ホール(サンフランシスコ、アメリカ)におけるライヴ録音とある。音質だが、これがSFSメディアとしては凡庸な出来栄えで、完全ライヴの割には空間感も奥行き方向のサウンドステージ再現も強くはない。不思議に思いライナーを確認したところ、いつものTritonus Musikproduktion GmbH、そして主宰 Andreas Neubronnerの担当した収録ではないことが判明。最近になってSFSと組んでいるというグラミー賞ノミネート常連のプロデューサー、Jack Vadが率いる録音エンジニアたちが手掛けたもののようだ。この盤は劣った録音というわけではないが、従来からのMTT/SFSOのあの超絶的な立体三次元音場は、あらためてノイブロンナーの仕業であったことが逆説的に証明されたというわけだ。
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫
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Beethoven:
Piano Concerto No.3 in C minor, Op.37
Mass in C major, Op.86
Emanuel Ax(Pf)
Joelle Harvey(Sop), Kelley O'Connor(Mezzo-Sop),
William Burden(Ten), Shenyang(Bass-Bar)
San Francisco Symphony Chorus
San Francisco Symphony, Michael Tilson Thomas
ベートーヴェン:
ピアノ協奏曲第3番ハ短調 Op.37
ミサ曲ハ長調 Op.86
マイケル・ティルソン・トーマス(指揮)
サンフランシスコ交響楽団
エマニュエル・アックス(ピアノ)
ジョエル・ハーヴェイ(ソプラノ)
ケリー・オコナー(メゾ・ソプラノ)
ウィリアム・バーデン(テノール)
シェンヤン(バス・バリトン)
サンフランシスコ交響合唱団
ベートーヴェンPコン#3は久し振りに聴いた。ここでは度々吐露しているが、私はベトの場合にはピアノ絡みではない交響曲や大規模曲は苦手だ。ついでに言うとモーツァルトも概して苦手だ。よってMusicArenaにはこれらの作品の試聴記は殆どアップされていない。さはさりながら、この二人の作品は若い頃に散々聴いてきたし、ピアノ曲に至っては相応の曲数を弾いた。ということで、これらに全く知見もなく、そして聴かないかというとそうでもなく、たまには聴く。
エマニュエル・アックスの名は10年以上前からあちこちで耳にしていて概して巧いとの評判であるが、調べてみると録音には積極的ではないらしくてアルバム数はごく少ない。そして今回、ビッグネームの新譜にその名が連ねてあったために買ってみたというわけだ。結論から言うと、超絶技巧で鳴らすヴィルトゥオーゾではないが、打鍵が正確かつ軽量で高速、そしてタッチが極めて美しい稀有のシルキートーンが特徴となる繊細なピアニズムの持ち主だ。
似た傾向の人を挙げるのは難しいが、敢えて言うと高速性能に関してはヌーブルジュ(例えば、ハンマー・クラヴィーア)とほぼ同列、そして、芸術的・魔術的な美しいタッチと心地よい肌触りはロジェ(例えば、ドビュッシー)などにたとえられようか。但し、ロジェよりかは線は少し細い。
Pコン#3は余りに著名な曲ゆえ詳述はしないが、力強くて明瞭な旋律の建付け、そして野太い和声のオーケストレーションがベートーヴェンらしい佳曲だが、アックスのこの演奏は実にさらりと、いわば蒸留水、いやアクア・クララのような清純でありながら軽めの旨味と味わいが感じられるというか、そんな独特で孤高の#3なのであった。同じパート譜を同じ速度記号、楽想記号、そしてほぼ同じアーティキュレーションをトレースしながら弾くピアニストたちの個性には一人として同じものがなく、それぞれに極められたレキシカル、コンテキストを内包するのである。アックスは、なるほどと頷かされるだけのことはある折り目正しくも清冽な印象を放散しているピアニストなのであった。
ハ長調ミサは、それほど聴いたことがないので多くは語れないが、敢えて比較するなら、故コリン・デイヴィス/LSOの盤だ。このMTT/SFSOの盤は比較的雄弁で熱い語法だったデイヴィス/LSO盤から粗熱を取り、完全に冷え切る前の穏和で人肌の温もりが感じられるポイントを狙ったかの好リード。ここに参集しているソリストたちの技量は生半可ではなく、モデレートなMTTのタクトと深い彫り込みに見事に呼応している。出来栄えをデイヴィス盤と比べるのは他流試合的で好ましくないかもしれないが個人的にはこのMTT盤がしっくりと来た。
(録音評)
SFS Media SFS0064、SACDハイブリッド。録音は2013年9月26日-28日(協奏曲)&2014年1月15日-18日(ミサ曲)、デイヴィス・シンフォニー・ホール(サンフランシスコ、アメリカ)におけるライヴ録音とある。音質だが、これがSFSメディアとしては凡庸な出来栄えで、完全ライヴの割には空間感も奥行き方向のサウンドステージ再現も強くはない。不思議に思いライナーを確認したところ、いつものTritonus Musikproduktion GmbH、そして主宰 Andreas Neubronnerの担当した収録ではないことが判明。最近になってSFSと組んでいるというグラミー賞ノミネート常連のプロデューサー、Jack Vadが率いる録音エンジニアたちが手掛けたもののようだ。この盤は劣った録音というわけではないが、従来からのMTT/SFSOのあの超絶的な立体三次元音場は、あらためてノイブロンナーの仕業であったことが逆説的に証明されたというわけだ。
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by primex64
| 2016-05-23 22:55
| Concerto - Pf
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