MusicArena Awards 2015 |
------------------------------------
MusicArena Awards 選考基準
・2015年度前後にリリースされたCD/SACD(国内盤・輸入盤)
・演奏面/音質面ともに優れたもの
・前衛的な取り組みであると認められるもの
・以上を考慮して以下の各賞を選考する
MusicArena Grand Prix - 最優秀作品を1点選出
MusicArena Semi-Grand Prix - 優秀作品を1~2点選出
MusicArena Performance of the year - 演奏に特に秀でた作品を数点選出
MusicArena Sound of the year - 録音品質に特に秀でた作品を数点選出
MusicArena Special Encouraging Prize - 将来を嘱望する奏者の作品を数点選出
------------------------------------
※以下、ジャケット写真をクリックすると詳細解説が開きます
MusicArena Grand Prix 2015

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番 他
ヴィクトリア・ムローヴァ(Vn)
パーヴォ・ヤルヴィ
hrフランクフルト放送交響楽団
レーベル:Onyx

ムローヴァは年齢を重ねるごとに表現幅と深みを増してきたことがよくわかる。全体を通してムローヴァのVnが冴え渡り、聴衆の耳をグリップする能力の高さは際立っている。今更だが、彼女が女王と言われる所以がよく理解できる渾身の一枚。素晴らしいのひとこと。
MusicArena Semi-Grand Prix 2015

[R]evolution ~ 近現代ピアノ作品集
シュトックハウゼン:ピアノ小品集
ストラヴィンスキー:ペトルーシュカからの3楽章 他
ヴァネッサ・ベネリ・モーゼル(Pf)
レーベル:Decca

モーゼルのこの演奏はまさに驚天動地である。注目すべきはその超絶技巧のみにあらず、斬新かつ大胆、天衣無縫を地で行く特異な解釈にあって、肉声で朗々と歌唱するがごとく魂が宿ったような躍動する太いピアノが特徴。ここまで強烈な語法で弾かれるペトルーシュカは未体験だ。
MusicArena Semi-Grand Prix 2015

フォーレ:レクイエム
エルヴェ・ニケ
ブリュッセル・フィルハーモニック団員
フランダース放送合唱団
レーベル:Evil Penguin

ピエ・イエズはソロを立てずSop全員によるユニゾンで歌われる。次のアニュス・デイは、ニケの演奏設計、及びこのフレミッシュ・ラジオ・コーラスの特徴が最も出たパート。特に中間部のルクス・エテルナのモチーフ以降、時間的な緩急によらず強調気味のクレッシェンドとデクレッシェンドを多用し実にヴァイタルなイメージを現出させている。バック・アンサンブルは精緻にして少しソリッド、透徹された弦のソノリティが抜群、非常に清冽な印象だ。
MusicArena Performance of the year 2015

フランク: ヴァイオリン・ソナタ イ長調 他
ルノー・カピュソン(Vn)
カティア・ブニアティシヴィリ(Pf)
レーベル:Erato

ここ数年のフランクVn&Pfソナタの新録音の中では間違いなく最右翼に入る出来栄えで本当に素晴らしい演奏。ここ数年に限らずとも、巨匠時代からの名演と呼ばれる演奏と比較しても勝るとも劣らない現代センスによる優秀演奏である。技巧面は勿論のこと、エモーショナルなインサイト、随所に見られる丹念な磨き込みと息を飲むアーティキュレーション、そして、なんといってもダイナミズムに溢れる演奏設計上の構築美が秀逸で、非の打ち所がない。
MusicArena Performance of the year 2015

J.S.バッハ:パルティータ1,2,6番
エドナ・スターン(Pf)
レーベル:Orchid Classics

エドナ・スターンのバッハへのアプローチは明快でシンプルなシンタックスを基礎にしている。そして正攻法でありながら新鮮な驚きと感動を聴く者に与え、そして強い印象で残り続ける鋭敏なバッハ解釈・演奏だ。こういうフレーバーの高いアルバムに出会うと、音楽って本当に素晴らしいと無条件に思ってしまう。
MusicArena Sound of the year 2015

スクリャービン:
交響曲第1番 ホ長調Op.26芸術讃歌 他
ミハイル・プレトニョフ
ロシア・ナショナル管弦楽団
レーベル:PENTATONE

精緻にして神秘、透過度が高いのにダイナミックで美しい、非の打ちどころのない出来栄え。プレトニョフのこの種の難解な不可思議系、非和声系への造詣の深さを改めて知った。録音だが、プレイボタンを押した瞬間、直後の暗騒音の中に指揮者や奏者の息遣い、身振りと楽器を構えるときの些細なノイズがはっきりと刻み込まれており異様な緊張感が伝わる。こういった異次元の超絶的録音はハイスピードなDSD方式でこそなし得るものであり時代と技術の進歩をまざまざと見せつけられた感がある。
MusicArena Sound of the year 2015

アリア Figlio! Tiranno! O Dio! 他
エリザベス・ワッツ(Sop)
ローレンス・カミングス
イングリッシュ・コンサート
レーベル:Harmonia Mundi USA

エリザベスの驚異的な歌唱テクニックと表現幅の広さ、深さには改めて脱帽だ。音質だが、期待を裏切らないHarmonia Mundi USAならではのもので、空間感と空気感、奥行き感が完璧に捉えられた実像系録音。さすがに歌唱ものを録らせるとワールドクラスの面目躍如といったところ。やはりHM USAは図抜けている。
MusicArena Special Encouraging Prize 2015

イザイ: 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ集Op.27
フレデリーケ・サイス(Vn)
レーベル:Linn Records

サイスの表現幅と技巧は、ちょっと刻みの大きなコルレーニョを主体としつつも対旋律をダブルストップの微細動で明滅させていて実にヴィヴィッドかつ極めて巧い。今まで隠れていた全く新しい和声を数多く発見させられて、思わずはっとしてしまう。いやはや、またしてもイザイの名演が出て来てしまった。鑑賞する側としては嬉しい悩みが続くのである。
MusicArena Special Encouraging Prize 2015

オルガ・シェプス/ヴォカリーズ
ショパン:夜想曲 ハ短調 Op.48-1
ラフマニノフ:ヴォカリーズ Op.34-14他
オルガ・シェプス(Pf)
レーベル:RCA Read Seal(SONY)

ソニーは数年前にカティア・ブニアティシヴィリを発掘し、エキセントリックで尖鋭なピアノを弾く彼女は瞬く間にスターダムに昇った。今回、国内CDデビューを果たしたオルガはカティアとは対極にあるアンチ・エキセントリシティの正統派ピアニストであり、もしかしたらカティアほどの成功は見ないかもしれない。しかし、抑制的・内省的で、徹底したノンレガートを駆るこのピアニズムは、個性の分化が激しいこの分野にあっては寧ろ新鮮である。
◇◇◇◇◇◇◇◇
最終選考まで残った秀作たち:













♪ よい音楽を聴きましょう ♫

おかげさまで音質演奏ともに素晴らしいの一言です。
今あらためて見ると、ジャケットに人が写っていないからか・・・・。