2016年 03月 18日
Ysaye: Six Sonatas for solo Vn Op.27@Frederieke Saeijs |
昨秋のLinnの新譜から、新進気鋭のオランダの女流Vn奏者=フレデリーケ・サイスのイザイ無伴奏。実質的には彼女のデビューアルバムとなる。

http://tower.jp/item/4037944/
Ysaye: Six Sonatas for solo Vn Op.27
Sonata No.1 in G minor (A Joseph Szigeti), Op.27/1
1: Grave: Lento assai
2: Fugato: Molto moderato
3: Allegretto poco scherzoso: Amabile
4: Finale con brio: Allegro fermo
Sonata No.2 in A minor (A Jacques Thibaud), Op.27/2
5: Obession: Prelude: Poco vivace
6: Malinconia: Poco lento
7: Danse des ombres: Sarabande: Lento
8: Les Furies: Allegro furioso
9: Sonata No.3 in D minor 'Ballade' (A Georges Enesco), Op.27/3
Sonata No.4 in E minor (A Fritz Kreisler), Op.27/4
10: Allemanda: Lento maestoso
11: Sarabande: Quasi lento
12: Finale: Presto ma non troppo
Sonata No. 5 in G major (A Mathieu Crickboom), Op. 27/5
13: L'Aurore: Lento assai
14: Danise rustique
15.Sonata No. 6 in E major (A Mathieu Crickboom), Op. 27/6
Frederieke Saeijs (Vn)
イザイ: 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ集 Op.27
ソナタ第1番ト短調
ソナタ第2番イ短調
ソナタ第3番ニ短調《バラード》
ソナタ第4番ホ短調
ソナタ第5番ト長調
ソナタ第6番変ホ長調
フレデリーケ・サイス(Vn:ピエトロ・グァルネリ"Ex Reine Elisabeth"1725年製)
フレデリーケ・サイスはオランダの女流Vn奏者。2005年、ロン=ティボー国際ヴァイオリン・コンクールで優勝している。今まで目ぼしい録音はリリースしておらず、今回のこのLinnのリリースが実質本格デビューとなる。
ライナーから少し引用し和訳する(一部、表現が難しい部分は意訳してある):
--
フレデリーケ・サイスのLINNデビューは、このオランダのVn奏者が彼女のパーソナルな足跡をイザイのオマージュとしてその特別に選ばれた楽器、及びこれを今まで所有してきた輝かしい巨匠たちに残す、という生涯に渡る大志の実現を見た、と言える。
高名なVn奏者であったイザイのインスピレーションによって書かれた無伴奏ソナタOp.27は、多くのVn奏者が技術の境界を超越し、その達人とも言える奏者たち自らのポジションを更に高めるよう要求してきた。
この運命的ともいえる録音において、サイスは色彩感と直感性に満ちたまさにイマーシヴな、即ち仮想現実に没入したかのような素晴らしいパフォーマンスを見せている。
詩歌とイマジネーションが横溢しているようなイザイのソナタだが、この演奏ではスリリングな音の炸裂、叙情的な表現、獰猛なテクニックを伴う情感的なチャレンジとが平衡を
保っているのである。
音とダイナミクスの幅広いパレットを活用し、サイスのパワフルな感情の籠った語り口は、これら献呈を受けた個々人※の特徴付けを捕捉している。
※ジョセフ・シゲティ、ジャック・ティボー、ジョルジュ・エネスコ、フリッツ・クライスラー、マシュー・クリックボーム、マヌエル・キローガ。
サイスの愛用する楽器は「Ex Reine Elisabeth」と名付けられたグァルネリ1725年製。このElisabethとは、ベルギーのエリザベート王妃のことであり、当時の王妃はイザイ自身を師にVn演奏を習っていた。その後、王妃が使っていたグァルネリにはEx Reine Elisabethと名が付された。
--
オランダとベルギーは元は同じ国であり、どちらも欧州では音楽の盛んな文化的な国だ。サイスはオランダ人であるがエリザベート王妃、イザイは隣国のベルギー人。エリザベート王妃が使用したグァルネリを使って最高難度のイザイの無伴奏を録音するのだから、とてもモニュメンタルな気分だったろうし、また気合も入ったことだろう。因みに、エリザベート王妃国際音楽コンクールという著名なコンペティションがあるが、この前身はウジェーヌ・イザイ国際コンクールであったことからもエリザベート王妃とイザイの親密な関係を窺い知ることができる。
この演奏だが、Linnのレコードレーベルとしての慧眼が証明されたかのような素晴らしい出来栄えで、このサイスという人の溢れんばかりの才能を如実に捉えていると言える。今まで前世紀には巨匠クラスの人の技巧的で情感たっぷりの名演は数多くあったが、ここにきてその列の末尾に加えて新たな名演として残すに値する録音と思う。とにかく、ライナーにあった以下が全てを語りつくしている演奏だ。即ち、スリリングな音の炸裂、叙情的な表現、獰猛なテクニックを伴う情感的なチャレンジとが平衡を保っているのである。This Ysaye’s sonatas balance thrilling pyrotechnics with lyrical expression, emotional challenges with ferocious technique. 注:pyrotechnicsを音の炸裂と意訳したが、実際には花火製造術、花火の打ち上げのこと。
音と旋律の種類において、今までこの作品の演奏からは聴きとれていなかったパッセージが数多く発見される。ピチカートの特異さも際立っており、ギターの爪弾きというよりかは歌唱の抑揚を聴いているかの錯覚に囚われる。まさに獰猛な技巧(ferocious technique)であり、昨今の若手でいえばイブラギモヴァなんかも真っ青な高速技法、タッチの多彩さ、同じ楽器とは思われぬ硬軟の使い分け、そして、隙を突いて心の深層まで入り込んでくるエモーショナルでテンペラメンタルな抑揚が抜きん出ているのである。
やはり、違いが端的にわかるのは2番イ短調で、この4楽章形式の中にはグレゴリオ聖歌のディエス・イレの主題が鏤められている。バッハ無伴奏パルティータ3番を借景にした1楽章、マリンコニアと題される2楽章は重くて真摯、求道的かつ重層的な構成の曲でディエス・イレが断片的に現れては消えるという再現部を持っている。
ここでのサイスの表現幅と技巧は、ちょっと刻みの大きなコルレーニョを主体としつつも対旋律をダブルストップの微細動で明滅させていて実にヴィヴィッドかつ極めて巧い。このあたりが今まで隠れていた全く新しい和声を数多く発見させられる部分であり、思わずはっとしてしまうのだ。
昨今ではイブラギモヴァの2番が光っていたが、サイスのこれを聴いてしまうとちょっと迷うのである。どっちが本当のイザイ流なのか? たぶんそんなものはないのであろうが、自分としてはどちらも優劣つけがたく、因みにサイスのこれの方に深みと味わい、そして抜きん出た諧謔味を強く感じてしまったのである。いやはや、またしてもイザイの名演が出て来てしまった。鑑賞する側としては嬉しい悩みが続くのである。
(録音評)
Linn Records CKD536、SACDハイブリッド。録音は2014年10月6~8日、ハールレム・フィルハーモニー(オランダ)とある。最初、このSACDはうまく再生できなかった。サイスが体を捩るたびにVnが左右に揺れ、音像の発音源も拡大されて左右に大きく揺動し、まるで船酔いのような状態になった。しかし、何度か再生するうちに再生系が学習し、音像は真ん中に定位し残響成分が奥へと展開するよう正常化されてきた。
Linnの音作りの典型なのかどうかは分からないが、とても聴かせる音質だ。色合いでいうと派手で華美な原色系ではなくて、くぐもって少し光沢を伴う琥珀色とできるだろうか。マイクアングルも巧妙。主マイクはオンで割と音像は大きめなのだが、ノイズマイク(アンビエント・マイク)の狙い方が絶妙で背景の奥行き方向へと無限大に広がっていくアンビエントがとても豊潤で印象的。結果、濃密で濃厚にしてリアル度合が半端なく、とても聴かされる仕上がりとなっているのだ。
映像のリアルさという観点では、例えばニコンの報道用35mmフルサイズ一眼は良くも悪くも写実的で忠実なのかもしれないが、ハッセルブラッドの中判カメラで捉えた商業写真の美しくもバランスがとれたフレーバーとは相容れない。そんな違いを頭に入れて聴くとこの録音の真骨頂が見えてくる。なお、この盤はSACDレイヤーを聴くことを強くお勧めする。CDレイヤーも硬質かつ高解像度で非常に優秀なのだが、空間感が少し後退し音場は一回り小さくなってしまう。
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♪ よい音楽を聴きましょう ♫

http://tower.jp/item/4037944/
Ysaye: Six Sonatas for solo Vn Op.27
Sonata No.1 in G minor (A Joseph Szigeti), Op.27/1
1: Grave: Lento assai
2: Fugato: Molto moderato
3: Allegretto poco scherzoso: Amabile
4: Finale con brio: Allegro fermo
Sonata No.2 in A minor (A Jacques Thibaud), Op.27/2
5: Obession: Prelude: Poco vivace
6: Malinconia: Poco lento
7: Danse des ombres: Sarabande: Lento
8: Les Furies: Allegro furioso
9: Sonata No.3 in D minor 'Ballade' (A Georges Enesco), Op.27/3
Sonata No.4 in E minor (A Fritz Kreisler), Op.27/4
10: Allemanda: Lento maestoso
11: Sarabande: Quasi lento
12: Finale: Presto ma non troppo
Sonata No. 5 in G major (A Mathieu Crickboom), Op. 27/5
13: L'Aurore: Lento assai
14: Danise rustique
15.Sonata No. 6 in E major (A Mathieu Crickboom), Op. 27/6
Frederieke Saeijs (Vn)
イザイ: 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ集 Op.27
ソナタ第1番ト短調
ソナタ第2番イ短調
ソナタ第3番ニ短調《バラード》
ソナタ第4番ホ短調
ソナタ第5番ト長調
ソナタ第6番変ホ長調
フレデリーケ・サイス(Vn:ピエトロ・グァルネリ"Ex Reine Elisabeth"1725年製)
フレデリーケ・サイスはオランダの女流Vn奏者。2005年、ロン=ティボー国際ヴァイオリン・コンクールで優勝している。今まで目ぼしい録音はリリースしておらず、今回のこのLinnのリリースが実質本格デビューとなる。
ライナーから少し引用し和訳する(一部、表現が難しい部分は意訳してある):
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フレデリーケ・サイスのLINNデビューは、このオランダのVn奏者が彼女のパーソナルな足跡をイザイのオマージュとしてその特別に選ばれた楽器、及びこれを今まで所有してきた輝かしい巨匠たちに残す、という生涯に渡る大志の実現を見た、と言える。
高名なVn奏者であったイザイのインスピレーションによって書かれた無伴奏ソナタOp.27は、多くのVn奏者が技術の境界を超越し、その達人とも言える奏者たち自らのポジションを更に高めるよう要求してきた。
この運命的ともいえる録音において、サイスは色彩感と直感性に満ちたまさにイマーシヴな、即ち仮想現実に没入したかのような素晴らしいパフォーマンスを見せている。
詩歌とイマジネーションが横溢しているようなイザイのソナタだが、この演奏ではスリリングな音の炸裂、叙情的な表現、獰猛なテクニックを伴う情感的なチャレンジとが平衡を
保っているのである。
音とダイナミクスの幅広いパレットを活用し、サイスのパワフルな感情の籠った語り口は、これら献呈を受けた個々人※の特徴付けを捕捉している。
※ジョセフ・シゲティ、ジャック・ティボー、ジョルジュ・エネスコ、フリッツ・クライスラー、マシュー・クリックボーム、マヌエル・キローガ。
サイスの愛用する楽器は「Ex Reine Elisabeth」と名付けられたグァルネリ1725年製。このElisabethとは、ベルギーのエリザベート王妃のことであり、当時の王妃はイザイ自身を師にVn演奏を習っていた。その後、王妃が使っていたグァルネリにはEx Reine Elisabethと名が付された。
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オランダとベルギーは元は同じ国であり、どちらも欧州では音楽の盛んな文化的な国だ。サイスはオランダ人であるがエリザベート王妃、イザイは隣国のベルギー人。エリザベート王妃が使用したグァルネリを使って最高難度のイザイの無伴奏を録音するのだから、とてもモニュメンタルな気分だったろうし、また気合も入ったことだろう。因みに、エリザベート王妃国際音楽コンクールという著名なコンペティションがあるが、この前身はウジェーヌ・イザイ国際コンクールであったことからもエリザベート王妃とイザイの親密な関係を窺い知ることができる。
この演奏だが、Linnのレコードレーベルとしての慧眼が証明されたかのような素晴らしい出来栄えで、このサイスという人の溢れんばかりの才能を如実に捉えていると言える。今まで前世紀には巨匠クラスの人の技巧的で情感たっぷりの名演は数多くあったが、ここにきてその列の末尾に加えて新たな名演として残すに値する録音と思う。とにかく、ライナーにあった以下が全てを語りつくしている演奏だ。即ち、スリリングな音の炸裂、叙情的な表現、獰猛なテクニックを伴う情感的なチャレンジとが平衡を保っているのである。This Ysaye’s sonatas balance thrilling pyrotechnics with lyrical expression, emotional challenges with ferocious technique. 注:pyrotechnicsを音の炸裂と意訳したが、実際には花火製造術、花火の打ち上げのこと。
音と旋律の種類において、今までこの作品の演奏からは聴きとれていなかったパッセージが数多く発見される。ピチカートの特異さも際立っており、ギターの爪弾きというよりかは歌唱の抑揚を聴いているかの錯覚に囚われる。まさに獰猛な技巧(ferocious technique)であり、昨今の若手でいえばイブラギモヴァなんかも真っ青な高速技法、タッチの多彩さ、同じ楽器とは思われぬ硬軟の使い分け、そして、隙を突いて心の深層まで入り込んでくるエモーショナルでテンペラメンタルな抑揚が抜きん出ているのである。
やはり、違いが端的にわかるのは2番イ短調で、この4楽章形式の中にはグレゴリオ聖歌のディエス・イレの主題が鏤められている。バッハ無伴奏パルティータ3番を借景にした1楽章、マリンコニアと題される2楽章は重くて真摯、求道的かつ重層的な構成の曲でディエス・イレが断片的に現れては消えるという再現部を持っている。
ここでのサイスの表現幅と技巧は、ちょっと刻みの大きなコルレーニョを主体としつつも対旋律をダブルストップの微細動で明滅させていて実にヴィヴィッドかつ極めて巧い。このあたりが今まで隠れていた全く新しい和声を数多く発見させられる部分であり、思わずはっとしてしまうのだ。
昨今ではイブラギモヴァの2番が光っていたが、サイスのこれを聴いてしまうとちょっと迷うのである。どっちが本当のイザイ流なのか? たぶんそんなものはないのであろうが、自分としてはどちらも優劣つけがたく、因みにサイスのこれの方に深みと味わい、そして抜きん出た諧謔味を強く感じてしまったのである。いやはや、またしてもイザイの名演が出て来てしまった。鑑賞する側としては嬉しい悩みが続くのである。
(録音評)
Linn Records CKD536、SACDハイブリッド。録音は2014年10月6~8日、ハールレム・フィルハーモニー(オランダ)とある。最初、このSACDはうまく再生できなかった。サイスが体を捩るたびにVnが左右に揺れ、音像の発音源も拡大されて左右に大きく揺動し、まるで船酔いのような状態になった。しかし、何度か再生するうちに再生系が学習し、音像は真ん中に定位し残響成分が奥へと展開するよう正常化されてきた。
Linnの音作りの典型なのかどうかは分からないが、とても聴かせる音質だ。色合いでいうと派手で華美な原色系ではなくて、くぐもって少し光沢を伴う琥珀色とできるだろうか。マイクアングルも巧妙。主マイクはオンで割と音像は大きめなのだが、ノイズマイク(アンビエント・マイク)の狙い方が絶妙で背景の奥行き方向へと無限大に広がっていくアンビエントがとても豊潤で印象的。結果、濃密で濃厚にしてリアル度合が半端なく、とても聴かされる仕上がりとなっているのだ。
映像のリアルさという観点では、例えばニコンの報道用35mmフルサイズ一眼は良くも悪くも写実的で忠実なのかもしれないが、ハッセルブラッドの中判カメラで捉えた商業写真の美しくもバランスがとれたフレーバーとは相容れない。そんな違いを頭に入れて聴くとこの録音の真骨頂が見えてくる。なお、この盤はSACDレイヤーを聴くことを強くお勧めする。CDレイヤーも硬質かつ高解像度で非常に優秀なのだが、空間感が少し後退し音場は一回り小さくなってしまう。
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by primex64
| 2016-03-18 09:43
| Solo - Vn
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