2015年 12月 27日
Chopin: Solo pieces & Concertos@Olga Sheps |
ソニーの夏の新譜で、新鋭オルガ・シェプスのショパン・アルバム2枚組。

http://tower.jp/item/3909086/
Olga Scheps Plays Chopin
DISK 1
F.Chopin:
Trois Nouvelles Études, No.1
Trois Nouvelles Études, No.2
Trois Nouvelles Études, No.3
Étude, Op.10-3
Étude, Op.25-12
Mazurka, Op.63-2
Mazurka, Op.63-3
Ballade, Op.23
Nocturne, Op. posth.
Valse, Op.69-1
Valse, Op.69-2
Nocturne, Op.27-2
Fantasia in F minor, Op.49
Olga Scheps(Pf)
DISK 2
F.Chopin:
Piano Concerto No.1 in E-min, Op.11
1. Allegro Maestoso
2. Romanze
3. Rondo
Piano Concerto No.2 in F-min, Op.21
1. Maestoso
2. Larghetto
3. Allegro Vivace
Olga Scheps(Pf)
Stuttgarter Kammerorchester
Matthias Foremny(Cond)
ショパン・アルバム
DISK1
ショパン:
3つの新しいエチュード第1~3番
練習曲第3番『別れの曲』Op.10-3
練習曲第12番Op.25-12
マズルカ第40番Op.63-2
マズルカ第41番Op.63-3
バラード第1番Op.23
夜想曲Op.posth
ワルツ第9番Op.69-1
ワルツ第10番Op.69-2
夜想曲第8番Op.27-2
幻想曲ヘ短調Op.49
DISK 2
ショパン:
ピアノ協奏曲第1番ホ短調Op.11
(弦楽合奏伴奏版/リヒャルト・ホフマン編曲による弦楽五重奏版に基づく)
ピアノ協奏曲第2番ヘ短調Op.21
(弦楽合奏伴奏版/イラン・ロゴフ編曲によるピアノ五重奏版に基づく)
オルガ・シェプス(P)
マティアス・フォレムニー(指揮) シュトゥットガルト室内管弦楽団
オルガ・シェプスは欧州で人気急上昇中の気鋭ピアニスト、そして先日には初来日も果たしたと聞いており、一度は聴いてみたいと思っていたソリストだった。そんななか、タワレコのサイトで2枚組で3000円を切っていて安かったので輸入盤だろうと思い込み、詳細を確認せずにこれを買った。届いて封を切ったらなんとソニーの国内盤だった。値段と音質的な面から国内盤は基本的には忌避しているが、買ってしまったものは仕方がない。
この盤が、ソニーにおけるオルガの日本国内デビューCDとなるようで、実は輸入盤の独奏作品集の単盤が一枚目、コンチェルトの単盤が二枚目として合冊され国内販売されたという経緯らしく、ユーロ原盤としての2枚組は存在しないようだ。
前置きはともかくとして、この盤に針を下して驚いた。こんなショパンがあるのか、という鮮烈な演奏だった。言うまでもないことだが、ショパンはナルシズムの極致のような私的で感傷的な名作を多く書いたことで有名。それを受ける演奏者側としては、いかに情感豊かに、そして盛り上がりを意識しつつメランコリックな部分をいかにつまびらかにして表現するのか、そしていかに優れたピアニズム、つまり超絶技巧を披瀝するのか、という主要命題に取り組み、結果として様々な仕掛けのあるショパン演奏および録音が続けられてきた、というのが現状だろう。
オルガ・シェプスの演奏はこれら従来のショパン感をいとも簡単に覆すものである。すなわち、およそ情感表現からは遠く、そして、技巧的な側面は敢えて強く見せず、ひたすらに没個性で淡々と弾き通すというスタイルなのだ。最初に聴くと、どこかのピアノ教室の発表会シーンを聴いているように、まるで譜面通りでつまらない演奏かと思わされるのであるが、実はそこには深いギミックが仕込まれていて、何度か聴き返すとそのメカニズムが見えてくる。
具体的に言うと、Op.10の3、つまり別れの曲が、あまりに平坦な入りであって捻りや感情がまるでない。途中の展開部は、大概は気分転換よろしく高速に振れてリリカル、そして感傷的に弾きおろされるところ、オルガの解釈と演奏設計は全然違っていて、譜面通り、かつ、かつての巨匠たちから連綿と行われていた情感表現を嘲笑うかのようなフラットで衒いのない演奏なのだ。
そしてOp.25の最終(=大洋と命名される大規模で激しい曲)にあってもその姿勢が貫かれている。世の中的にはこの曲は強打で荒れ狂ったような演奏が主流であり、それ以外の解釈は殆ど聴いたことがないが、オルガの選択は演奏スタイルはノンレガートで淡々とした、しかも規則的なスケールを一切崩すことなく、時間軸の揺らぎを徹底して排除したものだった。あまりにあっけらかんとしているので拍子抜けするのだが何度も聴き返すうちにこれがショパンが譜面に込めた本質だったのではなかろうか、という疑問が沸いてくるのだ。今風のスタンダードな解釈を否定する気はないが、オルガのノンレガートも実はありといえばありなのかもしれない。
これは三拍子系の一つの頂点であるマズルカ、ここではOp.63の2と3を弾いているが、この曲に関しても基本的なスタイルは変わらない。そしてバラード1番に至ると、これはもうオルガにしか弾けないであろうという独創的なノンレガートで淡きことこの上ない。ここまで徹底してアンチ・テンペラメント、アンチ・エモーション、アンチ・アーティキュレーションをやられると癖とみなせる個性が完全に排除されるためか何度聴いても聴き飽きることがない。因みに、オルガのピアノは技術的に劣っているのではないかと思われるといけないので申し添えておくが、技巧は非常に高いものがある。この優れた技巧をこれぞという風に使っていないというだけの話だ。
2枚目は変わり種のコンチェルト2題。フルオケではなくて弦楽五部のみで演奏されるもの。弦楽版は実は初めて耳にする。オルガのピアノは1枚目よりかはアーティキュレーションが発露されている。しかし、滑らかでありながら一音一音の明確性を大切にするノンレガートを基調としていることには違いがなく、清らかで夾雑物がほぼ感じられないピュアな独奏部である。これに加え、弦楽五部、すなわち金管、木管、パーカッションを排除した伴奏部の純度も非常に高く、原曲のフルオケ盤では木管・金管にアサインされているパートまでも弦楽器で弾くことの効能を如実に知ることとなった。オルガのピュアな音に弦楽器のピュアな音・・。歪感とノイズ感がこれほど少ないショパンPコンは初めて聴いた。これはこれで大いにあり、といえる器楽構成だ。
オルガ・シェプス・・、今後に着目が必要なピアニストが現れた。
(録音評)
ソニー SICC-30231、通常CD=Blu-spec CD。1枚目:2009年10月、ベルリン、イエス・キリスト教会(デジタル:セッション)、2枚目: 2013年9月 SWR放送スタジオ (デジタル:セッション)とある。1枚目の録音は低域が大胆にカットされていて低音弦が寂しい。つまりスカキンなピアノである。ユーロ原盤がどういった調音で発売されているかは知る由はないのであるが、実はソニーは国内向けにリマスタしている可能性がある。というのはイエス・キリスト教会は音質的には籠った音の礼拝堂であり、暗騒音も多め、かつ低域に独特の共鳴音(ワウ)が乗りやすい。そういったこともあり、国内でのヘッドフォン・ステレオ聴取に鑑みてローカット・フィルタで処理している可能性はある。ところが2枚目についてはそういった不自然な調音は認めらない。低域から高域まで実にフラットに気持ちよく伸びており、CbもVnもPfも高解像度系のアングルで綺麗に録れているし、自然なアンビエントによりサウンドステージも拡がっている。因みに誤解なきよう念のため申し添えておくが、Blu-spec CDだから音が良いなどということは決してない。
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Olga Scheps Plays Chopin
DISK 1
F.Chopin:
Trois Nouvelles Études, No.1
Trois Nouvelles Études, No.2
Trois Nouvelles Études, No.3
Étude, Op.10-3
Étude, Op.25-12
Mazurka, Op.63-2
Mazurka, Op.63-3
Ballade, Op.23
Nocturne, Op. posth.
Valse, Op.69-1
Valse, Op.69-2
Nocturne, Op.27-2
Fantasia in F minor, Op.49
Olga Scheps(Pf)
DISK 2
F.Chopin:
Piano Concerto No.1 in E-min, Op.11
1. Allegro Maestoso
2. Romanze
3. Rondo
Piano Concerto No.2 in F-min, Op.21
1. Maestoso
2. Larghetto
3. Allegro Vivace
Olga Scheps(Pf)
Stuttgarter Kammerorchester
Matthias Foremny(Cond)
ショパン・アルバム
DISK1
ショパン:
3つの新しいエチュード第1~3番
練習曲第3番『別れの曲』Op.10-3
練習曲第12番Op.25-12
マズルカ第40番Op.63-2
マズルカ第41番Op.63-3
バラード第1番Op.23
夜想曲Op.posth
ワルツ第9番Op.69-1
ワルツ第10番Op.69-2
夜想曲第8番Op.27-2
幻想曲ヘ短調Op.49
DISK 2
ショパン:
ピアノ協奏曲第1番ホ短調Op.11
(弦楽合奏伴奏版/リヒャルト・ホフマン編曲による弦楽五重奏版に基づく)
ピアノ協奏曲第2番ヘ短調Op.21
(弦楽合奏伴奏版/イラン・ロゴフ編曲によるピアノ五重奏版に基づく)
オルガ・シェプス(P)
マティアス・フォレムニー(指揮) シュトゥットガルト室内管弦楽団
オルガ・シェプスは欧州で人気急上昇中の気鋭ピアニスト、そして先日には初来日も果たしたと聞いており、一度は聴いてみたいと思っていたソリストだった。そんななか、タワレコのサイトで2枚組で3000円を切っていて安かったので輸入盤だろうと思い込み、詳細を確認せずにこれを買った。届いて封を切ったらなんとソニーの国内盤だった。値段と音質的な面から国内盤は基本的には忌避しているが、買ってしまったものは仕方がない。
この盤が、ソニーにおけるオルガの日本国内デビューCDとなるようで、実は輸入盤の独奏作品集の単盤が一枚目、コンチェルトの単盤が二枚目として合冊され国内販売されたという経緯らしく、ユーロ原盤としての2枚組は存在しないようだ。
前置きはともかくとして、この盤に針を下して驚いた。こんなショパンがあるのか、という鮮烈な演奏だった。言うまでもないことだが、ショパンはナルシズムの極致のような私的で感傷的な名作を多く書いたことで有名。それを受ける演奏者側としては、いかに情感豊かに、そして盛り上がりを意識しつつメランコリックな部分をいかにつまびらかにして表現するのか、そしていかに優れたピアニズム、つまり超絶技巧を披瀝するのか、という主要命題に取り組み、結果として様々な仕掛けのあるショパン演奏および録音が続けられてきた、というのが現状だろう。
オルガ・シェプスの演奏はこれら従来のショパン感をいとも簡単に覆すものである。すなわち、およそ情感表現からは遠く、そして、技巧的な側面は敢えて強く見せず、ひたすらに没個性で淡々と弾き通すというスタイルなのだ。最初に聴くと、どこかのピアノ教室の発表会シーンを聴いているように、まるで譜面通りでつまらない演奏かと思わされるのであるが、実はそこには深いギミックが仕込まれていて、何度か聴き返すとそのメカニズムが見えてくる。
具体的に言うと、Op.10の3、つまり別れの曲が、あまりに平坦な入りであって捻りや感情がまるでない。途中の展開部は、大概は気分転換よろしく高速に振れてリリカル、そして感傷的に弾きおろされるところ、オルガの解釈と演奏設計は全然違っていて、譜面通り、かつ、かつての巨匠たちから連綿と行われていた情感表現を嘲笑うかのようなフラットで衒いのない演奏なのだ。
そしてOp.25の最終(=大洋と命名される大規模で激しい曲)にあってもその姿勢が貫かれている。世の中的にはこの曲は強打で荒れ狂ったような演奏が主流であり、それ以外の解釈は殆ど聴いたことがないが、オルガの選択は演奏スタイルはノンレガートで淡々とした、しかも規則的なスケールを一切崩すことなく、時間軸の揺らぎを徹底して排除したものだった。あまりにあっけらかんとしているので拍子抜けするのだが何度も聴き返すうちにこれがショパンが譜面に込めた本質だったのではなかろうか、という疑問が沸いてくるのだ。今風のスタンダードな解釈を否定する気はないが、オルガのノンレガートも実はありといえばありなのかもしれない。
これは三拍子系の一つの頂点であるマズルカ、ここではOp.63の2と3を弾いているが、この曲に関しても基本的なスタイルは変わらない。そしてバラード1番に至ると、これはもうオルガにしか弾けないであろうという独創的なノンレガートで淡きことこの上ない。ここまで徹底してアンチ・テンペラメント、アンチ・エモーション、アンチ・アーティキュレーションをやられると癖とみなせる個性が完全に排除されるためか何度聴いても聴き飽きることがない。因みに、オルガのピアノは技術的に劣っているのではないかと思われるといけないので申し添えておくが、技巧は非常に高いものがある。この優れた技巧をこれぞという風に使っていないというだけの話だ。
2枚目は変わり種のコンチェルト2題。フルオケではなくて弦楽五部のみで演奏されるもの。弦楽版は実は初めて耳にする。オルガのピアノは1枚目よりかはアーティキュレーションが発露されている。しかし、滑らかでありながら一音一音の明確性を大切にするノンレガートを基調としていることには違いがなく、清らかで夾雑物がほぼ感じられないピュアな独奏部である。これに加え、弦楽五部、すなわち金管、木管、パーカッションを排除した伴奏部の純度も非常に高く、原曲のフルオケ盤では木管・金管にアサインされているパートまでも弦楽器で弾くことの効能を如実に知ることとなった。オルガのピュアな音に弦楽器のピュアな音・・。歪感とノイズ感がこれほど少ないショパンPコンは初めて聴いた。これはこれで大いにあり、といえる器楽構成だ。
オルガ・シェプス・・、今後に着目が必要なピアニストが現れた。
(録音評)
ソニー SICC-30231、通常CD=Blu-spec CD。1枚目:2009年10月、ベルリン、イエス・キリスト教会(デジタル:セッション)、2枚目: 2013年9月 SWR放送スタジオ (デジタル:セッション)とある。1枚目の録音は低域が大胆にカットされていて低音弦が寂しい。つまりスカキンなピアノである。ユーロ原盤がどういった調音で発売されているかは知る由はないのであるが、実はソニーは国内向けにリマスタしている可能性がある。というのはイエス・キリスト教会は音質的には籠った音の礼拝堂であり、暗騒音も多め、かつ低域に独特の共鳴音(ワウ)が乗りやすい。そういったこともあり、国内でのヘッドフォン・ステレオ聴取に鑑みてローカット・フィルタで処理している可能性はある。ところが2枚目についてはそういった不自然な調音は認めらない。低域から高域まで実にフラットに気持ちよく伸びており、CbもVnもPfも高解像度系のアングルで綺麗に録れているし、自然なアンビエントによりサウンドステージも拡がっている。因みに誤解なきよう念のため申し添えておくが、Blu-spec CDだから音が良いなどということは決してない。
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by primex64
| 2015-12-27 18:59
| Solo - Pf
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